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資産管理会社とは
資産管理会社とは、多額の所得税を払う経営者や地主等の資産家の方々が、その資産を所有・管理することを目的として設立する法人のことをいいます。一般的な企業とは異なり、資産家向けの会社として存在するため、主にその資産は不動産や株式で、その収入は賃料収入や配当収入になります。
資産管理会社を持つビジネス上のメリット
個人の最大所得税は約55%となる反面、資産管理会社の実効税率は約23%です。このような税率の差からも資産管理会社を持つことが、オーナーご自身の所得税の節税に繋がると言えるでしょう。さらに、奥様やお子様へ役員報酬や株の配当として所得分散を行うことで、手許に残る現金を増やすことも可能となります。将来的な相続時の納税資金の留保にも役に立つでしょう。
また、会社を経営するオーナーの方であれば、資産管理会社に株式を持たせることで、安定的な経営権を確保し株価対策を行うことも可能となります。資産管理会社が事業会社の株式を保有することで、仮に相続が発生した場合でも、相続財産はあくまで資産管理会社の株式であり、事業会社の株式が簡単に社外流出することはないといえるでしょう。
さらに、不動産を多くお持ちの方の中にはご存知の方も多いと思いますが、法人を持つことで個人事業では経費にできなかった給料等の他に、生命保険や社宅といったものが経費になることも資産管理会社を持つ大きなメリットです。特に、不動産に関わる経費である減価償却やローンの支払利息も経費として計上できる点は大きな利点といえます。
税務面のメリット・デメリット
①会社からの配当をうけるケース
会社から配当を受ける場合、配当を受領する立場と、配当をする会社が上場会社か否か、そして受領者の株式保有比率によって課税の仕方が変わります。例えば
非上場会社又は3%以上保有している上場会社からオーナー個人が配当を受領した場合、最大で最高税率約55%が課せられますが、資産管理会社(借入なし))で受領した場合は、課せられる税率は約35%です。
配当課税は毎期生じる可能性が高いので、個人で保有する場合、上記のように将来受け取る配当金の約半分が毎年税金として徴収されることを考えると、一時的な税金負担はありますが、保有株式を資産管理会社へ移管する方が得られるメリットが多いと考えます。
②株式を譲渡したケース
株式を譲渡した場合、個人と法人で課税のされ方が変わります。株式を譲渡した際、個人の税率は約20%であるのに対し、資産管理会社の法人税率は会社の規模や所得によって各種税率は変わりますが約20~35%となります。
このことからも株式の時価と簿価の差額である含み益が多い場合は、個人で保有する方が税金は少なくなるので、将来上場を目指しているオーナーの方で売り出しを考えている方は、その売り出し部分は個人で保有していた方がメリットが大きいといえます。
③相続が発生したケース
遺産が現預金や投資用の株式(上場株式)のみの場合は分割もしやすいため、争いには繋がりにくいのですが、「非上場株式」や「不動産などの実物資産」が大部分を占める場合は、遺産分割の難易度が高くなり“争族”に繋がりやすいと言われています。特に、株式の場合は上場株式か非上場株式かで相続税の評価方法が異なります。資産管理会社は非上場株式であり換金できる市場がないため、税法に即して評価されることになります。
例えば、資産規模にもよりますが、子供が複数おられる場合には、資産管理会社を子供の数だけ設立し、各資産管理会社に不動産や上場株式を別々に所有させ、その資産管理会社の株式を相続させることによって不公平感がなくなり、相続時の争いが起こりにくくなるといえます。
資産管理会社のデメリット
資産管理会社を活用する上での注意点は、法人特有の“コスト”がかかることです。
主に、資産管理会社を持つと決めた時から①設立コスト、②維持コスト、③資産移転コストがかります。
具体的に、設立する際には法人登記の登録免許税や定款等の手続きを含めて、目安として約30万円程度コストとしてかかります。また、毎年納めるべき税金やその処理を行う税理士への報酬等は法人を維持するコストとしてかかります。最後に、盲点なのが資産移転コストです。原則として、資産管理会社を保有するお金はオーナー個人が自由に使うことができないため、通常役員報酬や配当という形でオーナー個人にお金を移しますが、その受け取ったお金には所得税(最高約55%)が発生します。
まとめ
今回は資産管理会社の基本と付随するメリット・デメリットについて簡単に紹介しましたが、ご理解いただけたでしょうか。検討することが多く自分で考えるのが億劫という方は税理士など専門家に相談するのもいいでしょう。今回の記事が皆様の資産形成に少しでも役立つことをお祈りしております。