養子縁組で節税できる!?養子縁組による税務上の効果と留意点について詳しく解説!

はじめに

養子縁組が成立することで、養親と養子の間に法的な権利義務関係が生じるとともに、税務面においても様々な影響があります。本稿では養子縁組を行うことによる効果と留意点を解説します。

養子縁組の現状

まず、養子縁組の現状を見ていきましょう。法務省がまとめた戸籍統計によると、平成29年度の養子縁組届出件数は75,111件となっています。同年度の婚姻届出件数が614,603件、離婚届出件数が213,882件であることと比較すると、意外に多くの養子縁組が行われていると感じるのではないでしょうか。

養子縁組は、結婚や離婚ほど身近なトピックではありませんが、家族をめぐる重要な法律行為の一つです。

なお、養子縁組は大きく普通養子縁組と特別養子縁組に区分されます。このうち、特別養子縁組については、実親の育児放棄や虐待などが認められる場合に、子を守るための仕組みであり社会福祉的な側面をもつものです。本稿では普通養子縁組についてまとめていきますので、区別してご理解頂ければと思います。

養子縁組による節税効果

養子縁組が成立すると、養子はその日から養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。すなわち、法律上の親子関係が成立するため、養子は法定相続人として、相続権を取得するとともに、扶養に関する権利義務をもつことになります。

養子縁組が行われるのは、一般には、再婚時に再婚相手の連れ子と養子縁組する、結婚時に相手方の両親と養子縁組する、孫と養子縁組する、といったパターンがありますが、その目的は様々です。

再婚時の場合は、連れ子に家族の一員としての法的な地位を与えるという意味合いが大きくなるでしょうし、孫を養子にするような場合は、節税対策といった側面も少なからずあるかもしれません。

それでは、養子縁組による節税効果として、どのようなことが考えられるのでしょうか。大きくは以下の4点をあげることができます。

相続税の基礎控除額の拡大

相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」であり、法定相続人の数が増えると基礎控除額が大きくなります。養子縁組により、法定相続人を1人増やすことで基礎控除額が600万円増加(課税遺産総額が600万円減少)して、節税につながるわけです。

なお、祖税回避目的で養子を増やすことを防止するために、相続税計算時に、法定相続人の数に含めることができる養子の数は制限されています。被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなりますので注意が必要です。

生命保険金等の非課税枠の拡大

 
被相続人の死亡に伴い支払われる生命保険金や死亡退職金については「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。養子縁組により法定相続人が1人増えることにより非課税枠が500万円増加することになります。なお、法定相続人の数に含めることができる養子の数に制限があることは上記の基礎控除の場合と同じです。

相続税総額の計算過程における税額軽減効果

相続税総額の計算過程においては、課税遺産総額を法定相続分で按分したうえで、各相続人の相続税額を計算して合計します。養子縁組により法定相続人が増えることで、各法定相続人に配分される課税遺産が少なくなることから、適用税率が下がり、結果的に相続税の総額が少なくなる場合があります。

相続税の課税機会の省略(孫養子の場合)

 孫を養子にした場合は、相続が発生した場合に、子を経由せずに直接、孫が財産を取得することになり、相続税の課税機会が減少するためトータルで見たときの相続税負担を軽減できる可能性があります。ただし、相続等で財産を取得した人が被相続人の「1親等の血族および配偶者」以外の場合は、その人の相続税の2割が加算されるルールがあります。孫養子の場合も2割加算の対象になりますので注意が必要です。

養子縁組の際の留意点

一方で、節税を意識して養子縁組を行う際に注意を要する点もあります。主な留意点は以下のとおりです。

法定相続人の数への算入否認

相続税法第63条では、「養子の数を相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる場合には、税務署長は養子の数を加味せずに相続税の計算ができる」としています。

例えば、被相続人が亡くなる直前の養子縁組や、被相続人が意思表示できない状態であるにもかかわらず養子縁組を成立させた場合などは否認される可能性があります。

なお、節税目的だけのために行う養子縁組の有効性については、平成29年1月31日の最高裁判決が参考になります。それによると相続税の節税の動機と縁組をする意思は併存し得るものであり、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちにその養子縁組について、当事者間に縁組をする意思がないとすることはできないとして、節税目的の養子縁組であってもそれだけでは無効にならないことを明らかにしています。

法定相続人の減少による税額増加

例えば、被相続人に両親と子がいない場合、法定相続人は配偶者と兄弟姉妹になります。この場合に養子縁組をすると、法定相続人が配偶者と養子に変わります。複数の兄弟姉妹がいた場合などは、結果的に法定相続人の数が減少して、相続税額が増加することも考えられます。

相続争いの発生

上記の例では、法定相続人の順位の関係から、本来相続を受けられたであろう兄弟姉妹が、養子縁組によって法定相続人ではなくなります。相続財産への期待がある場合は争いとなることも考えられます。

また、法定相続人が変わることはなくても、養子縁組により、法定相続人が増えると他の相続人の遺産の取り分が減ることで争いを招く恐れもあります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。本来的に養子縁組は節税のためだけに行うものではないことを念頭において対応することが重要になります。親族の感情を大切にして、公平性・納得性を意識して協議を重ねることで、合意を得ながら進めていくことが求められます。

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