2020
01/10

はじめに

バリュー投資とグロース投資は、株式のアクティブ運用のボトムアップ・アプローチにおける代表的な手法です。この記事ではバリュー投資とグロース投資の違いと特徴について解説します。

アクティブ運用とは

アクティブ運用とは、目安となるベンチマーク(日経平均株価などの指数)を上回ることを目指す運用スタイル。たとえば、日本株で運用する投資信託の場合、代表的な株価指数である日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などをベンチマークとして、それを上回る成績を目指します。

運用の専門家であるファンドマネージャーと運用チームが個別銘柄の調査や市場動向を分析し、その結果をもとに銘柄を選定して運用するのです。

アクティブ運用は、市場に多くの投資機会が存在することを前提としていて、市場平均並みの運用成績を目指すパッシブ(インテックス)運用とは投資手法が異なります。

アクティブ運用には、主に経済や市場動向などのマクロ動向から投資方針を決定するトップダウン・アプローチと、魅力的な個別銘柄を選択するボトムアップ・アプローチがあります。

そして、ボトムアップ・アプローチの代表的な投資手法が、バリュー投資とグロース投資なのです。

バリュー投資とは

バリュー投資とは、企業本来の価値や利益水準に対し、現在の株価が割安と判断される銘柄に投資し、正当な株価に上昇することを狙う投資手法。通常、株式の個別銘柄の代表的な投資尺度である「PER(株価収益率)」や「PBR(株価純資産倍率)」を用い、これらの数値の低い銘柄を買い付けます。

PERとは株価収益率のことで、計算式は以下の通りです。

PER=株価÷1株あたりの利益(EPS)

PERで割安だといえる数値が決まっているわけではありませんが、東証1部全銘柄の予想PERは15.90倍なので、だいたい15倍以下なら割安と判断できます。

次に、PBRについて解説します。PBRとは株価純資産倍率のことで、計算式は以下の通りです。

PBR=株価÷1株あたり純資産(BPS)

1株あたり純資産は、いわば企業の解散価値といえるので、PBR=1倍は株価と解散価値が同じと判断されます。ですから、PBR1倍割れが株価の底値のひとつの目安とされてきましたが、最近は1倍割れを長い間下回っている銘柄も多く、必ずしも底値を判断する基準とすることはできなくなっています。

バリュー投資では、PERとPBRを指標として用いることが多いものの、株式の評価指標にはPCFR(株価キャッシュフロー倍率)、配当利回りなど様々な指標があります。ですから、実際の運用では特定の指標だけに頼るのではなく、複数の指標を用いて投資判断するケースが多いのです。

バリュー投資は景気回復の初期や市場の下落局面に効果を発揮するものの、投資成果がでるまでに時間がかかるというデメリットがあります。短期的な値動きではなく、長期的な視点で株や投資信託を持ち続けることが大切です。

グロース投資とは

グロース投資とは、企業の成長性が平均よりも高いと判断される成長株に投資する手法。たとえば、増収増益を繰り返している企業なら株価も上昇していくので、それによりリターン獲得を目指すのです。

バリュー投資で重視されたPERやPBRの数値は多少高くても、今後の成長性を評価します。

グロース投資は、安定した景気拡大が長期にわたって続く局面で効果を発揮します。経済環境が良好だと、企業の持続的な利益成長が見込めるからです。

ただし、グロース投資では成長性の見極めが重要になります。ある程度の成長性は株価に織り込まれているので、想定よりも成長性が鈍化すると、株価が大きく下落することもあるからです。

米国では金利が低下するなかで、GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)などのグロース株が人気を集めています。金利が下がると企業の将来利益を現在価値に割り戻す「割引率」が下がり、現在価値が上昇するので割高なグロース株を買う理屈が立ちやすいからです。

米中貿易摩擦などで景気減速懸念が強いものの、米国景気は2019年7月に11年目の景気拡大に突入しました。景気拡大局面ではグロース株がバリュー株に優位ですが、今後も景気拡大が続くのかどうかが注目されます。

バリュー投資とグロース投資どちらが優位?

バリュー投資とはグロース投資のどちらが優位なのかは一概には決められません。景気動向を反映した市場の局面で変わってくるからです。

景気回復の初期など、市場が大きく上昇する局面では割安な銘柄が好まれるので、バリュー投資が優位になります。また、市場の下落局面でも割安銘柄に投資しているので、グロース投資に比べて相対的に抵抗力があります。

また、グロース投資は安定した景気拡大が長期にわたって続く局面で効果を発揮するので、2008年のリーマンショック以降の長期にわたる現在の緩やかな景気成長局面で、バリュー投資より優位になっています。

まとめ

今回はバリュー投資とグロース投資の違いについて解説しました。景気回復の初期や下落局面ではバリュー投資が優位に、景気拡大局面ではグロース投資が優位になる傾向があります。

日本株は自動車や金融、素材などのバリュー株の比重が大きいとされており、グロース株が多い米国株などに比べてパフォーマンスが劣る傾向にあります。2020年は米中貿易摩擦や中東情勢の緊迫化によって、バリュー株が優位になるのかどうかが注目されます。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者14万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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