2020
07/16
経済・マーケット

はじめに

2020年になり、新型コロナウイルスの感染拡大は世界各国の市場を揺るがしました。世界各地で人々の流れが制限され、商品やサービスなどの経済活動が停止したからです。

世界経済の損失額は100兆円を超えるとの予想も出ており、世界各国が景気後退に陥るリスクが高まっています。堅調な個人消費を背景に、2020年2月に過去最高値を更新した米国株式市場も、3月にかけてリーマンショックに匹敵するほどの下落となりました。

歴史的な下落となった米国株式市場

米国の代表的な株価指数であるNYダウは、2月12日の高値29,568.57ドルから3月23日の安値18,213.65ドルまで38.5%も下落となったのです。多くの機関投資家が参考にするS&P500指数も、2月19日の高値3,393.52から3月23日の安値2,191.86まで35.5%下落しました。

S&P500指数の過去12回の景気後退局面における下落率の中央値は32%。今回のコロナショックによる下落率とおおむね一致しています。

歴史的恐慌でも米国の株価は上昇

4月になっても、欧米で新型コロナウイルスの感染拡大が広がり、死者も増え続けました。しかし、NYダウは月間で11.08%上昇し、33年ぶりの月間上昇率となりました。

4月の1カ月間の値上がり幅は2,428ドルに達し、1987年以来の急騰率となったのです。米国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大で世界恐慌以来ともいわれる不況に陥っています。カジュアル服の「Jクルー」、レンタカーの「ハーツ」、そして「JC ペニー」といった有名企業が、債務返済に行き詰まり連邦破産の申請をしているのです。

5月8日の金曜日にアメリカの雇用統計が発表され、失業率は14.7%に達しました。これは、2009年10月のリーマンショック後の10.0%や、1982年12月の10.8%を超え、第二次世界対戦後最高の水準となったのです。

1930年代の大恐慌時は、現在と統計の定義が異なるので単純に比較はできませんが、失業率はピークで25%程度だったとされています。今回の失業率はそれには及びませんが、かなりの高水準だといえるでしょう。

また、米議会予算局は、4~6月期の米国経済成長率が、マイナス40%(年率)まで落ち込むと予想しています。

それなのに、なぜ株価は大きくリバウンドしているのでしょうか。

ナスダック総合指数の戻りが顕著

米国株式市場が戻した要因は、主に次の4つがあります。

米国政府による3兆ドル(約320兆円)規模の経済対策
FRB(米連邦準備制度理事会)の金融緩和策
経済再開の動き
ワクチン開発

とくに経済再開の動きに注目が集まっています。4月は、米南部のジョージアやテキサスなど一部の州で小売業を含めて営業再開に動き出しました。百貨店大手のメイシーズも、4月30日に6週間以内に全店を順次再開させると明らかにし、製造業でも航空機ボーイングが工場を再稼働させています。

5月になると、全米50州で新型コロナウイルスの感染抑制のために導入した行動制限を一部緩和し、経済活動を部分的に再開しました。

米国株は5月になっても堅調で、主要3指数(NYダウ・S&P500指数・ナスダック総合指数)は、コロナショックによる下落の61.8%戻しを達成しています。

とくに戻りが顕著なのが、ナスダック総合指数です。2020年2月につけた史上最高値9,838.37ポイントに迫る勢いです。

ナスダック総合指数の戻りをけん引しているのが、GAFAM(ガーファム)と呼ばれる巨大IT企業で、アルファベット(グーグル)・アップル・フェイスブック・アマゾン・ドット・コム・マイクロソフトの5社です。

フェイスブックやアマゾン・ドット・コムは史上最高値を更新し、アップルやマイクロソフトも史上最高値圏にあります。5社の5月19日時点の時価総額は約5.5兆ドル(約590兆円)で、日本の東証一部(約2,200銘柄)の約570兆円を上回っています。

これらの企業もコロナショックにより下落しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークやインターネット通販の普及により、収益機会が増すとの見方が支援材料になっているのです。

米国株式市場は今後も上昇が続くのか

NYダウは2月の高値から3月の安値まで1万ドルも急落しており、その時点でコロナショックによる恐慌リスクを織り込んでいたとも考えられます。また、航空やクルーズなど大きく売り込まれた銘柄などを買い戻す動きが強まっています。

米国では財政当局とFRB(米連邦準備制度理事会)が一体となり、過去にない規模の経済対策と市場への資金供給を行っています。国を挙げて経済を下支えする動きが株価を下支えしているのです。

しかし、米国での新型コロナウイルスの感染者数は増え続けています。経済再開を急いだ結果、コロナ感染の第2波、第3波が押し寄せ、ふたたび厳しい経済活動停止を強いられるリスクは残っています。

米中関係の悪化懸念などもあり、利益確定の動きで軟調な展開になることも想定されるので、下落リスクにも注意が必要です。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

<ご注意事項>

  • 当社の所属金融商品取引業者等は株式会社SBI証券、東海東京証券株式会社、エアーズシー証券株式会社です。
  • 当社は所属金融商品取引業者等の代理権は有しません。
  • 当社はいかなる名目によるかを問わず、その行う金融商品仲介業に関して、お客様から金銭および有価証券のお預かりを行いません。
  • 各商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。

[金融商品仲介業者]

商号等:株式会社ウェルス・パートナー

登録番号:関東財務局長(金仲)第810号

[所属金融商品取引業者]

商号等:株式会社SBI証券

金融商品取引業者 登録番号:関東財務局長(金商)第44号、商品先物取引業者

加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本STO協会、日本商品先物取引協会

商号等:東海東京証券株式会社

金融商品取引業者 登録番号:東海財務局長(金商)第140号

加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人日本STO協会

商号等:エアーズシー証券株式会社

金融商品取引業者 登録番号:関東財務局長(金商)第33号

加入協会:日本証券業協会

ご相談はこちらから
お名前*
お名前カナ*
メールアドレス*
電話番号*
第一希望日*
ご希望のお時間*
第二希望日*
ご希望のお時間*
面談場所*
ご相談を希望するアドバイザー
当日は代表の世古口が同席する場合がございます。
大まかな保有資産額を教えてください。*
ご年収を教えてください
当社を知ったきっかけ*
ご相談内容
利用規約*
上記でご入力いただいた内容は、当社からの連絡や情報提供などに利用するためのもので、それ以外の目的では使用いたしません。
また、その情報は、当社以外の第三者が利用することはございません。(法令などにより開示を求められた場合を除きます)
詳しくは、個人情報規約をご覧ください。
https://wealth-partner-re.com/policy/