紅茶文化発祥の地イギリスでは、貴族などのブルジョワ階級がその文化を発展させてきました。その舞台となったのが、豪華な宮殿や宮殿ホテルでした。紅茶やカフェをより美味しく味わうには、豪華な舞台演出が欠かせなかったのです。そんな紅茶&カフェ文化を築く一役を担った、歴史ある華麗なティーサロンを世界中から厳選してご紹介してまいります。
目次
1.ニューヨーク・カフェ/ハンガリー
最初にご紹介するのは、名実共に豪華ティーサロンの最高峰と言われるブダペストの「ニューヨークカフェ」です。ウィーンと並んで100年以上の長いカフェ文化の歴史を持つブダペストに、1894年に誕生したカフェで、開店早々「世界一豪華」と評判となり、多くの文化人や著名人が集う社交場として栄えてきました。
6年間の改装工事を経て2006年に高級ホテルのカフェとして再スタートしましたが、壮麗な天井画や金色に輝く店内は今なお「世界一」の称号に相応しい貫禄を保っています。ハンガリー名物のスイーツもこのカフェならではのセレクションで、19世紀のレシピで作ったレモネードや、ハンガリースイーツ盛り合わせもお薦めです。24時まで営業しているので、ディナーもゆっくり楽しめます。
2.リッツ・ホテル・ロンドン/イギリス
アフタヌーンティ発祥のイギリスでは、高級ホテルや会員専用クラブで伝統的なティータイムを楽しめますが、やはり最初に語るべきは英国王室御用達の最高峰「リッツホテル・ロンドン」のアフタヌーンティでしょう。1906年のホテル開業以来、パームコートにおいて優雅なティータイムの場を提供してきたリッツの伝統は、今も華やかに続いています。
シャンデリアの下で煌びやかに輝く宮殿のようなインテリアに囲まれ、厳選された18種類の紅茶から好きな紅茶を選び、上質なサンドイッチやスコーンをいただくひと時は、上流社会の中に身を置いてゆったりとした時の流れを肌で感じることのできる夢の空間です。
3.ヴィラ・コーラ~サン・レジス・フィレンチェ/イタリア
イタリアルネッサンスの中心地フィレンツェから、2km郊外のボーボリ庭園の南にある5つ星ホテル「ヴィラ・コーラ」は、19世紀の貴族の館を改造したホテルで、ナポレオン3世の奥方ユージェニー皇妃が住んだこともある歴史建造物です。
贅沢な調度品に囲まれ、格式ある伝統的な装飾の中にも東洋的なムーア様式が垣間見られ、1950年代のレトロなアメリカンスタイルを反映したダイニングでは、食事やお茶を楽しめます。150㎡超の広大なテラスでは、公園と丘を見下ろすパノラマ絶景を眺めることができます。
4.パレス・ホテル・ガーデン・コート/アメリカ
サンフランシスコで今注目されている再開発地区のダウンタウンにある、1875年開業の歴史あるホテルで、顧客には歴代米大統領やヨーロッパの王侯貴族、大富豪などが名を連ねます。市の文化遺産にもなっているガーデンコートは必見で、「世界で最も美しいダイニング」の一つに数えられ、食事だけでなく喫茶にも利用されています。
ガーデンコートは1909年に完成した古典モダンな空間で、高いステンドグラスのドームは圧巻です、ホテル内のバーにあるマックスフィールド・パリシュ作の「笛吹き男」の壁画も見逃せないアイテムです。
5.マジェスティック・カフェ/ポルトガル
ポルトガル第2の都市ポルトの繁華街サンタ・カタリーナ通りに、1921年創業したアールヌーボースタイルの古風なカフェで、世界で最も美しいカフェの一つに選ばれています。建築家ホアン・ケイロスによるデザインは、豪華な鏡張りの内装でより広い視覚効果をもたらし、アンティークなインテリアが老舗の風格を引き出しています。
創業当時から政治家や文化人のたまり場となり、ポルトの文化を築いた舞台でもありました。お茶だけでなく食事も楽しめ、ピアノの生演奏を聴きながら優雅なティータイムを過ごせる贅沢な憩いの場となっています。
6.アーツ・クラブ・カフェ/アメリカ
シカゴのゴールド・コースト地区に1914年高級家具店「RH社」が建てたビルを、展示ギャラリーとして改装した建物内にあるカフェ・バー&レストランです。1階はケーキ屋、2階は家具展示、屋上はルーフトップバーになっており、今シカゴで注目のトレンディスポットとして土日には行列のできる人気カフェです。
インテリアショップがオーナーということもあって、高い天井から吊るされた大きなシャンデリアの下には、自社ブランドの高級家具が置かれ、都会的センス溢れる洗練された内装となっています。カフェやバーを自由に行き来できる開放感もシカゴスタイルなのかもしれません。
7.エンプレス・ホテル/カナダ
カナダのビクトリアの内港に面し、観光・交通に便利な要所に佇む中世ヨーロッパのお城のようなホテルで、その立地条件の良さ、気品漂う風格で誰もが一度は泊まりたいと憧れるホテルです。
内設するティールームは伝統的なアフタヌーンティが有名で、ホテルのために特別にブレンドされた紅茶や、敷地内で採取されたハチミツを使った菓子類を提供し、クラシックな雰囲気の中でゆっくり時が流れていきます。ドレスコードがあるので、服装チェックに気を付けて下さい。
8.テムズ・フォワイエ~ザ・サヴォイ・ホテル/イギリス
ロンドンの大英博物館など観光名所からもほど近いテムズ川のほとりに、1889年に開業したロンドンを代表する高級ホテルです。エドワード様式とアールデコが混在したモダンクラシックなホテルの顧客には、ウィンストン・チャーチル、フランク・シナトラなどの著名人が名を連ねます。
サヴォイのティールーム「テムズ・フォワイエ」はホテルの心臓部に当り、ここで供されるアフタヌーンティーは名高く、予約必須の人気店となっています。美しいガラスのドームから降り注ぐ自然光が、中央のウィンターガーデンテラスに降り注ぎ、印象派の絵画のような芸術的な空間を創り出しています。
9.カフェ・フロリアン/イタリア
世界遺産の町ヴェエチアのサンマルコ広場に、1770年に開業した世界最古のカフェです。1800年代には当時の一流の職人たちが内装を手掛け、美しい絵画やアートが残る美術館のようなカフェとして、世界各国の著名人が足を運びました。その中には、ゲーテ、ワーグナー、ディケンス、スタンダール、モネ、ニーチェなどなど錚々たる文化人が名を連ねます。
中でも当時のプレイボーイであった作家のカサノヴァは常連客で、ここで女性との出会いを求めていたようで、彼の名を冠したメニューもあります。また、カフェラテ発祥の店としても知られ、伝統を受け継ぎつつ斬新なメニューに取り組む革新的な姿勢もまた、長く続く秘訣なのかもしれません。
10.ザ・プロムナード~ザ・ドーチェスター・ホテル/イギリス
ロンドンの「3大ベストホテル」の一つに数えられ、1931年の創業から90年近い歴史を持つ名門ホテルです。特にホテルのアフタヌーンティは人気があり、ロンドンで最も予約が取りにくいと言われています。
紅茶界のプレミアムな賞である「アフタヌーンティ賞トップ10」の常連でもあり、その秘密は、シーズン毎に工夫されるアフタヌーンティのユニークな創意工夫にあり、10月にはハロウィン、12月にはクリスマスキャロルと銘打った独特のアフタヌーンティシーンを演出しています。世界のセレブ御用達としても有名で、サロンで有名人を見かけることもしばしばです。
11.まとめ
優雅なティータイムの世界は、その舞台となる豪華なホテルの格調高い内装、厳しく教育されたスタッフによるプロのサービス、世界各国から厳選された材料、一流パティシエが作る美味しいパティスリー、それらが一体となって舞台を盛り上げます。
そしてその華麗な舞台の主役は客である自分であり、ワンシーンの大事な役者と考えれば、自然と気も引き締まり立ち振る舞いも気高いオーラに包まれます。それこそが、高雅なティータイムの愉しみではないでしょうか。