加熱する米中貿易戦争、今後の人民元の推移はどうなるか?両国の経済政策の動きから考える

1.はじめに

2017年7月に海外の機関投資家が香港経由で中国の債券が売買できる「ボンドコネクト」が始動、さらに2018年8月に債券売買の即時決済が可能になり、以前に比べて中国国外の投資家は中国の債券に格段に投資しやすくなりました。

これに加えて人民元のSDR(国際通貨基金の特別引き出し権の構成通貨)化による国際通貨としての地位向上、さらに中国国債の高い利回りや他国国債との低相関性には投資妙味があることから、日本でも人民元建て債券に投資するファンドが設定されるようになっています。

そこで本コンテンツでは、これから中国の人民元建て債券への投資を考えている人向けに、米中貿易戦争や経済政策など中国が置かれている現状、およびこれを踏まえた人民元の今後の動きに関する考え方についてご紹介します。

2.加熱する米中貿易戦争

米中貿易戦争とは、アメリカが中国に対して抱える巨額の貿易赤字に対する問題意識を発端に中国からの一部の輸入品に追加関税措置を発動、これに報復する形で中国もアメリカからの一部の輸入品に追加関税措置を発動、というように、アメリカと中国の間で行われている報復関税措置の応酬のことです。この解決に向けた協議は今のところ行われておらず、終結・正常化の目途は立っていません。

この「戦況」を見てみましょう。2018年10月12日に中国税関総署が発表した9月の貿易統計によると、9月は対米輸出が過去最高となる一方で米国からの輸入は減少となり、対米貿易収支は過去最高となっています。ただ、この数値は関税引き上げ前の駆け込み需要が反映していると見られ、今後は貿易額そのものの減少が見込まれます。

3.現状の経済政策は?

中国が直面している最大の課題は、景気失速懸念が鮮明化していることです。これを受け、中国当局は7月ごろからマネーサプライおよび国内支出の減少に歯止めをかけるために、理財商品の制限を一部緩和したり預金準備率を引き下げ短期金利引き下げの方向へ誘導するなど、全般的に金融緩和策を取っています。

さらに財政政策の一環として鉄道などへのインフラ投資を拡大させる立場を鮮明にしています。しかし、この施策は依然として景気への実効性や採算性が不透明であり、やや期待感だけが先行している感は否めません。

もう一つの中国の課題は、リーマンショック以降に積み上がった国内の過剰債務の削減です。しかし、現状は先述した金融緩和策を優先していることから、金融引き締め効果が出る債務削減については一部の「ゾンビ企業」に対する支援打ち切り・破綻誘導やデットエクイティスワップ(債務の株式化)などの債務再編を促進する程度に留まっています。

4.今後の人民元の推移は?

米中貿易戦争や中国の経済政策を踏まえ、今後の人民元の推移を予測してみましょう。
景気減速懸念とこれに対する金融緩和策、債務削減の停滞およびインフラ投資のような財政拡大政策による財務状況の悪化、アメリカの金利上昇および米ドル高など、引き続き人民元安の傾向が続くと予想する材料には事欠かないというのが現状です。しかし、中国・アメリカともにこれ以上の人民元安を容認することは無いと考えられます。

まず、中国人民銀行は金融緩和による人民元安に起因する海外への資本逃避により、国内の金融緩和効果が打ち消されることに強い警戒感を示しています。8月3日に中国人民銀行が商業銀行の対顧客ドル売り先渡取引つまり中国企業のドル買いについて、リスク準備金比率を引き上げるよう指示したことに端的に現れています。

また、米中貿易戦争もありアメリカが人民元安を許容つもりがないことは明らかです。仮にアメリカの利上げ局面が収束したとしても、アジア諸国の通貨に対して米ドルは引き続き上昇を続けると考えられます。その中で、仮に人民元が他のアジア諸国と比較して弱含む値動きを見せた場合、アメリカは中国を「為替操作国」に認定するなどの強硬な措置に出ることも考えられます。

5.まとめ

以上より、今後の人民元は他通貨に対して安くなると考えるのが自然ですが、中国・アメリカともにそれを許容しない状況の中で両国政府の動きがどれだけ人民元安の流れを防ぐかが焦点となります。人民元建てのリスク資産に投資する場合、人民元の値動きは経済情勢や需給だけで予測するのが難しいことをご認識ください。

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