1.はじめに
オプション取引はヘッジ手段やレバレッジ効果、さらには現物取引ではできない損益パターンを創ることが可能な点で、非常に有用な投資手法です。本コンテンツではわかりやすくするために個別株式オプションを例に取り上げ、株式オプション取引の基礎をご説明します。
2.株式オプション取引とは?
オプション取引とは、①特定の将来時点または期間において、②特定の対象資産を、③現時点で契約した行使価格で、④購入または売却する権利を、⑤オプション料(プレミアム)と引き換えに売買することです。
原資産を購入する権利をコール・オプション、原資産を売却する権利をプット・オプションといいます。「権利」を売買する取引である点が、オプション取引を理解するうえでは重要です。
特定の将来時点とはオプションの権利行使の期限で、満期日とも言います。オプションの買方が買った権利を行使すると、対象資産を権利行使価格で購入できます。このときオプションの売方は、必ず買方の権利行使に応じなければなりません。
オプション料については、コール・オプションであれば権利行使価格が高くなるほど安くなり、逆にプット・オプションであれば権利行使価格が高くなるほど高くなることを押さえておいてください。
3.コール・オプションの例
あなたは市場で現在9,000円の値を付けているA社株の値上がりを見込んでいます。しかし、あなたは残念ながらA社株を買えるほどの資金を持っていません。
そこであなたは、現物を買う代わりにA社株のコール・オプションを買うことにしました。証券会社によれば、1ヵ月後満期のものでA社株のコール・オプションの行使価格は1株あたり10,000円と12,000円の2通りがあり、それぞれのオプション料は500円と300円です。
あなたは1ヵ月後のA社株に対し強気で、かつ手持ち資金も少ないことから、権利行使価格が12,000円と高くオプション料も安い300円のオプションを1,000株分購入しました。1ヵ月後、あなたの読み通りA社株は15,000円まで値上がりしました。
そこであなたは、購入したコール・オプションを12,000円で行使してA社株を入手し、直ちに市場で売却しました。このトレードの結果、あなたは以下のように270万円の利益を得ました。
①当初の支出(オプション料)=300円×1,000株分=30万円
②A社株の権利行使による利益=(15,000円-12,000円)×1,000株分=300万円
③差し引きの利益=300万円-30万円=270万円
この場合、コール・オプションの売方はオプション料30万円と引き換えに15,000円のA社株をあなたに12,000円で1,000株分引き渡す義務が発生したことになります。
一方、あなたの読みが外れ1ヵ月後のA社株価が12,000円に達しなかった場合、あなたはオプション料30万円の損失を出したことになります。逆に、売方は30万円の利益を得たことになります。
4.プット・オプションの例
現在、B社株は市場で10,000円です。あなたは近々B社株の値下がりを見込んでいますが、信用取引の枠に余裕が無いため空売りを断念し、プット・オプションを買うことにしました。
証券会社によれば、1ヵ月後満期のものでB社株のコール・オプションの行使価格は1株あたり9,000円と7,000円の2通りがあり、それぞれのオプション料は300円と100円です。あなたは、B社株に対する弱気な見通しに基づき、7,000円のプット・オプションを1,000株分購入しました。
1ヵ月後、あなたの読み通りB社株は5,000円まで値下がりしました。そこであなたは、購入したコール・オプションを7,000円で行使してB社株を売り付けました。このトレードの結果、あなたは以下のように170万円の利益を得ました。
①当初の支出(オプション料)=300円×1,000株分=30万円
②B社株の権利行使による利益=(7,000円-5,000円)×1,000株分=200万円
③差し引きの利益=200万円-30万円=170万円
この場合、プット・オプションの売方はオプション料30万円と引き換えに、5,000円のB社株をあなたから7,000円で1,000株分買い取る義務が発生したことになります。
一方、あなたの読みが外れ1ヵ月後のB社株価が7,000円まで下落しなかった場合、あなたはオプション料30万円の損失を出したことになります。逆に、売方は30万円の利益を得たことになります。
5.まとめ
株式オプション取引は様々な銘柄のコール・オプションとプットオプションの売買を組み合わせることで現物取引ではできない損益パターンを創ることが可能なため、ヘッジファンドなどの機関投資家が好んで行う取引です。
これをうまく活用することで、非常に低リスクな収益機会を得ることも可能なのです。まずは日経225やTOPIXを対象とする上場株価指数オプション取引から入って、オプション取引の世界をご自身で体感してみてください。