目次
はじめに
信用取引と聞くと難しく感じる方や怖いイメージをお持ちの方も多いかと思います。しかし、株の売買においては多く用いられており、相場が下がる場合でも利益を上げることができます。
投資を始めたばかりの方は、信用取引を実際に行うことは少ないと思いますが、これから資産運用を考えている方が知っておくべき信用取引の概要とその利益が出る仕組み、そしてその注意点を分かり易く解説します。
信用取引の概要
(1)信用取引とは
証券会社から資金や株券を借りて、株の売買を行うことを信用取引と言います。
これに対して、通常の取引を現物取引といいます。信用取引では、お金を借りて株を買う人は証券会社に金利を支払い、また、株券を借りた人はその株券を借りるための費用(信用取引貸株料)を支払うことになります。
(2)信用取引のルール
この取引にはルールがあります。取引可能な銘柄、返済期限等について証券取引所が決めたルールにしたがって取引を行うことを制度信用取引と言い、これらのルールついてそれぞれの証券会社の定めるルールに従って取引を行うことを一般信用取引と言います。
2つのルールの大きな違いは、制度信用取引ではお金や株券を6ヶ月以内に返さなければなりませんが、一般信用取引はでは返済期間が無期限というルールで取引を行う証券会社などもあります。しかし、そのぶん金利などが高くなっていることが多いです。
(3)信用取引の魅力
信用取引の魅力は、売りから取引を始められるため、相場が崩れた場合でも利益を得ることができるということです。現物の取引では相場が上昇した際にのみ利益を得ることができますが、相場が崩れても利益を得ることができるというのは、大変魅力があります。
また、信用取引では委託保証金を入れることにより資金の約3倍の株式売買が可能となります。これも信用取引の魅力のひとつです。
信用取引の売買
(1)信用取引の売買の仕方
現物取引では自分の持っているお金で株券を買います。しかし、信用取引では、証券会社からお金を借りて、そのお金で株を買い、その株式が値上がりした際に売却してその差を利益とします。
また、証券会社から借りた株を売り(空売り)、株価が値下がりした際に売った株を買い戻すことによりその金額の差を利益とします。
(2)空売りの仕組み
この空売りの仕組みが分かりにくいと思います。
例えば、 A 社の株1万株が100万円分だとします。証券会社からこの株1万株を借り、売却したとしましょう。そうすると、手元に100万円が入ってきます。そしてこの株価が値を崩し、株1万株が80万円になった時に、同じA社の株を80万円出して1万株買います。
そして、買った株を証券会社から借りていた1万株として証券会社に返すと、手元には20万円残るわけです。こうして株式の相場が崩れた場合でも儲けを出すことができるのです。
ただ、証券会社から株券を借りると、お金がかかりますので、長期間借りた場合、利益が損なわれる可能性があるので注意が必要です。そのようなことから、空売りをする場合は、貸株料のことのみを考えると、短期間で決済をする方が儲けが多くなります。
(3)空売りの活用
個人投資家が空売りを活用する一例として、株主優待を目当てに持っている現物株の値下がりの穴埋めが考えられます。
一般に株主優待がある株式は権利確定日を過ぎると株価が下落する傾向が見受けられます。
そんな場合は、権利が確定される前にその銘柄を空売りしておき、株価が下落した後に買い戻すのです。そのような取引で利益が得られ、現物株で発生した損失を穴埋めできる可能性があります。
信用取引の注意事項
信用取引では、相場が崩れた場合でも儲けを出すことができますが、信用取引での独特のルールがあり、取引をする場合に大きな損失をもたらす可能性がありますので注意が必要です。
(1)委託保証金
証券会社から購入資金や株券を借りる場合、一定の担保を差し入れなければなりません。この担保を委託保証金といいます。この委託保証金は約定価格の30%以上かつ30万円以上と規定されています 。
この委託保証金は現金が原則ですが、有価証券(代用有価証券)を代わりに入れることもできます。しかし100%で評価されるわけではなく、国内に上場されている株券ですと80%以下、国債だと95%以下、地方債だと85%以下で評価することとなっています。
(2)追加保証金
以下、信用取引を始める際の委託保証金額を約定価格の30%としてお話しします。
現金や代用有価証券を委託保証金として差し入れ、信用取引によって購入した株や代用有価証券の値下がりなどにより、委託保証金の残額が約定金額の20%(最低維持率)を下回ることとなった場合には、元の約定金額の30%に達するまで、金額を現金や代用有価証券で追加保証金として三日目(発生日を含みます)の正午までにさし入れる必要があります。これを追証といいます。
例えば、約定金額を1千万円とすると、当初の委託保証金は約定金額の 30%で300万円が必要です。この300万円で、1千万円の取引をしているのです。最低維持率は株の約定金額の20%ですので、委託保証金の残高が200万円を下回ると追証が必要になります。
もし、購入した株が下落して200万円の評価損が生じた場合、委託保証金の残高は100万円となり、元の委託保証金額300万円に対して200万円分が不足するので、200万円分を追証として三日目(発生日を含みます)の正午までに差し入れる必要があります。
このように、証券会社からお金を借りて株式を買った場合は、株が値下がりした場合、また、空売りした場合は、買った株が値上がりした場合に追証が発生する場合があるので、注意が必要です。
まとめ
信用取引は相場が崩れた場合でも儲けを出すことができる魅力的な取引で、その概要や取引の注意事項を見てきました。取引には独特なルールがあり、大きな損失を出す可能性、さらには当初の委託保証金額を上回る損失を出す可能性もあります。
信用取引を駆使して利益を上げるためには、このような取引を含んだポートフォリオを組むことができる投資のプロにご相談ください。きっと効率的な資産運用が可能となると思います。