2020
01/30
経済・マーケット

はじめに

昨年10月ごろから国内の証券業界は激変し始めています。

SBIホールディングスは、2019年10月30日に開催された決算発表会にて、北尾吉孝CEOが「3ヶ年計画で、SBIグループ内の証券関連事業会社で手数料の完全無料化を目指す」ことを発表しました。

また、楽天証券、マネックス証券と国内の大手ネット証券各社は続々と投資信託の買付手数料などを少しずつ無料化し始めています。

国内のネット証券会社が手数料を無料にし始めている理由は、アメリカの証券会社が手数料完全無料化をすでにスタートしていることが背景にあります。

そこで、楽天証券もSBI証券に続き手数料の無料化を目指すと表明しました。

今回は、大きく変化する証券会社のビジネスにフォーカスして「なぜ手数料が無料になっているのか」、「楽天の手数料無料化は本当に可能か」をご説明していきます。

なぜ手数料が無料になっているのか

国内ではSBI証券が3年以内に手数料を完全無料化することを表明し話題になりました。

そもそも手数料は証券(株や債券、投資信託など)を売買する際に必ず私たちが支払わなければいけないコストでした。

証券会社はその(売買)手数料がメインの収益になっており、ここ約10年の間にネット証券が台頭し、手数料がかなり低くなりました。

そして現在では手数料が無料になっており、私たち利用者にとっては非常にありがたいサービスになっています。

しかし、一方で証券会社はメインの収益である手数料が無料になっているので、収益源がありません。

ではなぜ、「手数料無料化」を実施するのでしょうか?

発端となったのは米Fintech企業の「ロビンフッド」です。同社は、株やETFなどにかかる売買手数料が無料の投資アプリを提供し始めました。

この若者に受け入れられやすいアプリや、また「手数料無料化」によってロビンフッドの時価総額は2019年7月22日時点で76億ドル(約8,200億円)にも上りました。

ロビンフッド社のインパクトはアメリカの他証券会社にとっても非常に大きく、2019年10月上旬に米ネット証券チャールズ・シュワブ社が売買手数料の無料化を実施しました。

特にチャールズ・シュワブの手数料無料化は日本国内の証券業界は大きく影響を受け、その結果SBI証券の「手数料無料化構想」が打ち出されたのです。

楽天の手数料無料化は本当に可能か

楽天証券の手数料無料化は本当に実現するのでしょうか?

というのは、上述しましたが証券会社は売買手数料を主要な収益源としているので、手数料を無料化するのであれば、その損失分を他の収益で賄わなければビジネスにはなりません。

そこで、楽天証券の収益構造を見てみましょう。

(図1:楽天証券より作成)

この中で、「売買手数料」にあたるものは「委託手数料」です。
図1からわかることは、2020年1月11日のパシフィコ横浜で開催された「新春講演会2020」で楽天証券の楠社長が言っているように「収益全体の約4分の1以上が売買手数料」であるため、いきなり手数料無料化は厳しいように思えるということです。

しかし、必ずしも不可能ということでもありません。

その理由は、楽天グループ全体で証券セグメントが占める売上高の割合が非常に低いからです。

(図2:楽天証券より作成)

図2を見ると2018年から2019年にかけて、楽天グループ全体の売上高に占める証券会社の割合は約5%から4.24%まで低下しています。

また、そもそも4.24%なので証券はグループ全体として収益性は低いセグメントになっています。

つまり、楽天証券の売買手数料は、楽天グループ全体における約1.13%(=4.24%×26.64%)なのです。

このように考えると、楽天証券の手数料無料化は不可能なことではないことが分かります。

先日、手数料完全無料化を表明したSBI証券は2018年から2019年の間にホールディングス全体に占める証券の売上高が54.9%から29.6%(7ページ目)まで低下しており徹底的に収益源の多角化を実現しています。

ネット証券大手のマネックス証券では手数料の無料化は実現しても結局、信用取引などの「金利」という形で手数料をとることなどが考えられ、既存のビジネスモデルのままだと、楽天証券も形を変えた「手数料」を設定し、名目上「手数料無料化」を実現するかもしれません。

しかし、ロビンフッドではアプリ内で月額6~15ドルの会費が発生するプレミアプランを設けており、会費が同社の主な収益源となっています。

つまり、最近流行しているサブスクリプション(月額課金制)を導入し、ラフなビジネスモデルを実現しているのです。

まとめ

SBI証券に続き、楽天証券も手数料無料化を目指し始めました。

SBI証券はSBIホールディングスCEOである北尾氏の意向が強く「証券で赤字になっても、

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

<ご注意事項>

  • 当社の所属金融商品取引業者等は株式会社SBI証券、東海東京証券株式会社、エアーズシー証券株式会社です。
  • 当社は所属金融商品取引業者等の代理権は有しません。
  • 当社はいかなる名目によるかを問わず、その行う金融商品仲介業に関して、お客様から金銭および有価証券のお預かりを行いません。
  • 各商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。

[金融商品仲介業者]

商号等:株式会社ウェルス・パートナー

登録番号:関東財務局長(金仲)第810号

[所属金融商品取引業者]

商号等:株式会社SBI証券

金融商品取引業者 登録番号:関東財務局長(金商)第44号、商品先物取引業者

加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本STO協会、日本商品先物取引協会

商号等:東海東京証券株式会社

金融商品取引業者 登録番号:東海財務局長(金商)第140号

加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人日本STO協会

商号等:エアーズシー証券株式会社

金融商品取引業者 登録番号:関東財務局長(金商)第33号

加入協会:日本証券業協会

ご相談はこちらから
お名前*
お名前カナ*
メールアドレス*
電話番号*
第一希望日*
ご希望のお時間*
第二希望日*
ご希望のお時間*
面談場所*
ご相談を希望するアドバイザー
当日は代表の世古口が同席する場合がございます。
大まかな保有資産額を教えてください。*
ご年収を教えてください
当社を知ったきっかけ*
ご相談内容
利用規約*
上記でご入力いただいた内容は、当社からの連絡や情報提供などに利用するためのもので、それ以外の目的では使用いたしません。
また、その情報は、当社以外の第三者が利用することはございません。(法令などにより開示を求められた場合を除きます)
詳しくは、個人情報規約をご覧ください。
https://wealth-partner-re.com/policy/