2020
03/02
最終更新日:2020/04/14

はじめに

資産がたくさんある方であれば、一度はプライベートバンクの利用を検討されたことがあるのではないでしょうか。

私は日系、アメリカ系、スイス系の金融機関のプライベートバンク部門で11年間、プライベートバンカーという営業担当者としてお客様の資産を預かり、資産運用してきました。

実際に働いていた私だからこそ知っている現在のプライベートバンク事情と自分に合ったプライベートバンクの選び方をご紹介します。

日本人が利用できるプライベートバンクは大きく分けて以下の5つに分類されます。

1.日本の大手銀行のプライベートバンク部門
2.日本の証券会社のプライベートバンク部門
3.日本の信託銀行のプライベートバンク部門
4.スイスのプライベートバンクの日本拠点
5.海外拠点のプライベートバンク(オフショアPB)

一つずつ特徴をご紹介していきましょう。

1.日本の大手銀行のプライベートバンク部門

日本の大手銀行(メガバンク)の社内にはプライベートバンキング部門(以下、PB)が存在します。

証券会社、信託銀行のPBにも共通している点ですが、特徴は相続・事業承継対策に対応できるソリューション部門が充実していることです。

富裕層の相続対策、税金対策に対応できる税理士、会計士など専門家がたくさんいて、会社オーナーや経営者の自社株対策に強みを持っています。

銀行PBの強みは融資のパワーです。日本の富裕層、会社オーナーの相続対策には不動産担保ローンが肝になります。

相続対策に自社での融資を絡めた提案ができるのは銀行PBの大きな強みと言えるでしょう。一方で銀行ゆえに資産運用の対象商品はそこまで多くないので、資産運用の幅は狭いと言えるでしょう。

顧客層は銀行で融資取引がある上場会社や優良未上場会社のオーナーが法人部門から紹介されてオーナー個人でも取引しているケースが多いです。

大手銀行PBの代表格は三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行でしょう。あと、国内大手4番手のりそな銀行にも利用価値が高いPB部門が存在します。

りそなPBの強みは富裕層向けの不動産担保ローンです。一般的な不動産担保ローンは担保にとる物件の収益性によるところがありますが、りそな銀行のPBは顧客の資産背景(保有資産の多さ)を融資条件に反映され、富裕層であるほど有利な条件でローンを組むことが可能です。

2.日本の大手証券会社のプライベートバンク部門

日本の大手証券会社にも必ずPB部門が存在します。私も日興コーディアル証券(現在のSMBC日興証券)のプライベートバンキング部に在籍していましたが、特徴は銀行のPBと同じく相続・事業承継対策を行うソリューション人材が豊富なことです。

日興のPBも、私のようなバンカー(営業員)が30名くらいに対して、同数の相続や事業承継、税金対策が得意な税理士や公認会計士などの専門家が在籍していました。バンカーは常に彼らと連携し、上場会社の創業者や優良な未上場会社オーナーの資産運用や最適な相続対策を行います。

資産運用に関しては証券会社なので、銀行PBよりは投資対象が豊富です。個人部門(リテール)で扱っていないような、半年の間に49名までしか勧誘できない少人数私募のPB専用商品のヘッジファンドなどもありました。

また日興はスイスの元祖PBのロスチャイルドと提携しており、ロスチャイルドのファンドで運用できるという商品はかなりニーズが高かったです。

顧客の特徴は証券会社のPBということで上場会社のオーナーが圧倒的に多いです。上場会社オーナーが保有する上場株の流動化や自社株式を担保にしたローンに強みを持っており、相性が良いのだと思います。上場会社の主幹事証券(法人部門)からPBにオーナーが紹介されて顧客になるケースが多いです。

代表的な大手証券のPBは野村證券、大和証券、SMBC日興証券でしょう。機能は似たりよったりで、各社にそこまで差はありません。

大手証券PBのいいところは担当者の目線が長期的なことです。個人部門(リテール)は1日、1週間単位で数字を求められますが、PBは半年、1年単位でビジネスを考える余裕を与えられます。ゆえに長期的で、有用な提案を顧客にできるというのが大手証券PBの良い面でしょう。

3.日本の信託銀行のプライベートバンク部門

次は、日本の信託銀行のPB部門です。特徴は銀行、証券会社PBと同様に相続、事業承継部門が充実していることですが、信託銀行のPBの強みはやはり信託機能です。銀行や証券会社にはない大きな強みです。

信託とは信託銀行が顧客からの信頼のもとに資産を預かり運用、管理することです。まさに信じて託すのです。この信託機能により上場会社オーナーは自社株式の売却を信託したり、遺言を託したり、子供への資産承継を託したりするわけです。

信託銀行のPBは銀行や証券会社の法人取引から派生してオーナーが取引するというよりは、元々のオーナー個人の取引から発展しているケースが多いです。信託免許は取得するのが非常に難しく、これ以上増える可能性が少なく、信託機能を利用したい富裕層にとっては有用なPBと言えるでしょう。

PBがある信託銀行の代表格は三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行でしょう。メガバンクは社員をいろんな部署に転勤させ、ゼネラリストを育てる傾向が強いですが、信託銀行はPB部門以外も富裕層向けに資産運用を提案しているので、営業担当者は富裕層向け資産運用のプロフェッショナルで、提案のクオリティが高いことが多いです。

前編では日本の大手銀行、証券会社、信託銀行のPB部門の特徴をご紹介しました。中編では日本に拠点があるスイスのPB、海外拠点のPBについてお話ししたいと思います。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者14万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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