2025
10/10
会社オーナー 会社売却 会社売却 資産運用

「会社を高く売る」ことは、経営者にとって最大のテーマの一つです。長年築き上げた事業を手放す以上、できる限り高い評価で売却し、次の人生や資産戦略につなげたいと考えるのは自然なことです。

しかし、会社売却価格は単に業績や利益の数字だけで決まるわけではありません。買い手が重視するのは、財務の透明性、将来の成長性、組織や人材の安定性、そして法務や税務のリスク管理など、複合的な要素です。

特に富裕層の会社オーナーの場合、売却によって得られる巨額のキャッシュをどのように運用し、次世代に承継していくのかは、最大の関心事であり、最も重要な課題の一つです。そのため、高値売却はゴールではなく、その後の資産形成のスタートでもあるのです。

今回は、「会社を高く売るためのチェックリスト」を体系的に整理し、富裕層の会社オーナーが高値売却を実現するために押さえておくべきポイントを詳しく解説します。

会社を高く売るための基本視点

会社を高く売却するには、単に業績を伸ばすだけでは不十分です。買い手企業は、現在の収益力だけでなく、将来の成長性やリスクの少なさを重視します。また、富裕層オーナーにとっては売却そのものがゴールではなく、その後の資産戦略まで含めて準備を進めることが欠かせません。ここでは、高値売却を実現するうえで意識すべき基本的な視点を整理します。

買い手は「将来価値」で会社を評価する

会社売却の価格は、単なる売上や利益の水準のみならず、「今後どれだけ安定的に利益を生み出せるか」が大きなポイントになります。仮に現在の業績が好調でも、特定の社長の手腕や一部の取引先に依存している会社は、将来のリスクが高いとみなされ、評価額は伸びにくいでしょう。逆に、複数の収益源を持ち、経営者が退いた後も組織が自律的に動く仕組みが整っている場合、買い手は高く評価する傾向にあります。

リスクを排除することが高値につながる

買い手が特に懸念するのは「見えないリスク」です。例えば、デューデリジェンス(買い手による企業調査)の際に、潜在的な税務問題や法務上の不備などが発覚し、さらに人材流出の懸念などがあれば、買い手はその分を価格に織り込み、交渉で値下げを求めることがあります。売却前にこうしたリスクを徹底的に洗い出し、可能な限り解消しておくことは、高値売却のために欠かせない準備です。

富裕層の会社オーナーに必要な「資産戦略としての視点」

富裕層の会社オーナーにとって、売却は単なる経営判断にとどまりません。売却益という巨額の資金を得た後、それをどのように運用し、次世代に承継するかを考えることが本質的なテーマとなります。したがって「高く売る」こと自体は重要である一方、それを資産全体のポートフォリオの中でどう活かすかという視点を同時に持つことが、真の成功につながるのです。

富裕層向けチェックリスト:会社を高く売る7つの条件

会社を高く売却するためには、複数の要素をバランスよく整える必要があります。買い手は、財務の健全性や将来の成長性だけでなく、人材や組織の安定、法務・税務リスクへの備えまでを総合的に評価します。さらに富裕層の会社オーナーにとっては、売却によって得られる巨額の資金を資産戦略にどう組み込むかという視点も不可欠です。ここでは、富裕層が押さえておきたい「会社を高く売るための7つの条件」を、実践的なチェックリスト形式でご紹介します。

(1) 財務と経営の透明性を確保する

財務の信頼性は、高値売却の前提条件です。決算書や会計処理が不明瞭なままでは、買い手は将来の収益を信頼できません。粉飾や過度な節税が疑われるだけで、買い手はリスクを織り込んで価格を引き下げます。過去の取引を整理し、不要な資産・負債を処分することで、企業価値が見えやすくなります。日常的に正しい会計処理を行い、監査や専門家のレビューを受けるなどして、透明性を高めることが重要です。また、富裕層の会社オーナーにとっては、売却前の財務整理がその後の税務戦略とも直結します。

チェックリスト
✅ 財務諸表は適正に整備されているか
✅ 粉飾や過度な節税スキームは存在しないか
✅ 経営実態と数字に乖離がないか

(2) 収益構造の持続可能性を示す

一時的に利益が出ているだけでは、買い手は高値をつけません。複数の顧客基盤や成長性ある事業モデルを持ち、今後も安定して利益を生み出す仕組みを示すことで、高い評価につながります。

チェックリスト
✅ 特定の取引先への依存度は高すぎないか
✅ 安定的に利益を生み出す仕組みがあるか
✅ 将来の成長戦略を説明できるか

(3) 経営者依存を減らし組織力を強化する

オーナー自身がいなくなると事業が回らない状態では、買い手は敬遠します。キーパーソンを育成し、権限委譲を進めることで、経営の持続性を担保することが高値売却に直結します。

チェックリスト
✅ キーパーソンが複数育っているか
✅ 権限委譲の仕組みが整っているか
✅ 経営者不在でも事業が回る状態か

(4) コンプライアンスとガバナンスを整備する

法務や労務のリスクは、買い手にとって大きな不安要素です。未払い残業代、取引契約の不備、環境規制への不適合などがあると、価格交渉で不利になります。事前に専門家と協力し、リスクを解消しておくことが求められます。

チェックリスト
✅ 労務・法務リスクが解消されているか
✅ 内部統制の体制が機能しているか
✅ ESGや社会的責任に配慮した経営を実践しているか

(5) 税務戦略と個人資産への影響を把握する

売却益にかかる税金の設計は、富裕層オーナーにとって特に重要です。適切なスキームを事前に準備しなければ、せっかくの高値売却も手元に残る資産が目減りしてしまいます。また、潜在的な税務リスクを放置すると、買い手が「将来の追徴課税リスク」として値引きを求める要因にもなります。

チェックリスト
✅ 売却益に対する税務シミュレーションを行っているか
✅ 事前に最適な税務スキームを検討しているか
✅ 個人資産への影響も含めて整理できているか

(6) 買い手にとってのシナジーを示せる

高値売却のカギは、「買い手にとっての価値」を具体的に提示できるかにあります。自社の顧客基盤やノウハウが、買い手の事業拡大や効率化につながることを説明できれば、価格評価は大きく上がります。

チェックリスト
✅ 買い手の事業拡大や効率化に寄与できる根拠を持っているか
✅ 顧客基盤や人材が魅力的な資産として整理されているか
✅ 市場の競争優位性を示せるか

(7) 適切なアドバイザーを選任している

売却価格を最大化するためには、条件交渉の経験豊富なM&Aアドバイザーが不可欠です。ただし、富裕層の会社オーナーの場合は「資産運用」と「会社売却」の両方を理解するパートナーが望まれます。売却後の資産戦略まで一貫してサポートできるアドバイザーを選ぶことで、より安心感のある高値売却が実現します。

富裕層案件に精通したアドバイザーであれば、高値での交渉や有利な条件設定が可能になります。特に税理士・弁護士・ファイナンシャルアドバイザーと連携したチームを組むことが望ましいでしょう。

チェックリスト
✅ 富裕層案件に強いM&Aアドバイザーがいるか
✅ 税理士・弁護士・ファイナンシャルアドバイザーと連携できているか
✅ 高値売却を目指す交渉力が担保されているか

私たちウェルス・パートナーは、富裕層の方の資産運用に限らず、資産管理会社設立のお手伝いも承っております。会社売却をお考えの方や会社売却後の資産戦略についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

会社売却を高値で実現した事例

実際に高値で会社を売却した事例を見てみましょう。前章でご紹介したチェックリストのポイントが、どのように実践で効いたのか、おわかりいただけるのではないでしょうか。

【事例1】製造業A社(売上10億円、従業員50名)

A社は、長年、大手自動車メーカー1社との取引に売上の大半を依存していました。安定した収益源がある一方で、顧客の事業方針変更や価格交渉によって経営が大きく左右されるという潜在的なリスクを抱えていたのです。

会社オーナーは、会社売却を視野に入れ、このリスクを解消するため、戦略的な改善に着手しました。まず、長年の技術力を活かし、医療機器や航空機部品といった成長分野の新規顧客を開拓。3年間で特定顧客への依存度を約50%から25%まで引き下げ、事業リスクの分散に成功しました。

さらに、オーナー経営者への依存からの脱却を目指し、各部門の責任者に大幅な権限を委譲し、オーナー不在でも事業が回る自律的な体制を構築。専門家による監査で財務の透明性も確保しました。

これらの取り組みは、買い手から高く評価されました。特に、顧客ポートフォリオの多角化による「将来性の高さ」と、属人性を排除した組織体制による「事業継続性の高さ」が、買い手の最大の評価ポイントとなりました。結果として、当初の想定を20%上回る条件での会社売却が成立しました。これは、M&Aを「企業価値を最大化する経営戦略」として捉えた成功事例といえるでしょう。

【事例2】IT企業B社(売上5億円、従業員30名)

B社のオーナーは、会社売却に向けた事前準備を徹底的に行いました。まず、税理士や弁護士と連携し、事業売却に伴う税務リスクや将来的なキャッシュフローを詳細にシミュレーション。これにより、売却後の手取り額を最大化するための最適なストラクチャーを構築しました。

交渉段階では、経験豊富なM&Aアドバイザーを起用。このアドバイザーは、売却価格だけでなく、従業員の雇用維持や役員の処遇、オーナーの引退後のコンサルティング契約など、金銭以外の譲渡条件についても買い手と粘り強く交渉しました。

その結果、単に売却価格が高額になっただけでなく、オーナーの希望する条件や、従業員の将来まで保証された好条件での会社売却が実現しました。この事例は、「事前の綿密な準備」と、専門家を活用した「戦略的な交渉」が、金銭的リターンと非金銭的な条件の両面で、高額での会社売却を成功に導く鍵であることを示しています。

※事例の内容は、企業名が特定されないように匿名とし、一部内容に変更を加えております。

高値売却後に考えるべき富裕層の資産戦略

会社を高値で売却した後、オーナーが次に考えるべきは、「得た資金をいかに守り、増やし、将来に活かすか」です。売却はゴールではなく、新たな資産運用とライフプランのスタートラインとなります。富裕層の会社オーナーは以下の視点を意識することが重要です。

資産の分散運用:株式、不動産、投資信託など複数に分散し、リスクを最小化。
税務戦略の最適化:売却にかかる所得税・譲渡税をシミュレーションし、手取りを最大化。
承継・相続の準備:次世代への円滑な資産承継を見据え、資産管理会社や贈与、信託を活用して争族リスクを回避。
ライフプランの実現:アーリーリタイアや新規事業投資、社会貢献など、売却資金の目的を明確にして人生戦略に組み込む。
定期的な資産見直し:資産運用の専門家と連携し、市場環境やライフステージの変化に応じてポートフォリオを再調整し、長期的な資産形成とリスク管理を両立。

高値売却はゴールではありません。ここから資産を守り増やすステージが始まるということを意識することが、富裕層にとっての真の成功といえるのです。これらの項目を実践することで、長期的な資産形成と次世代への承継につなげることができるでしょう。

まとめ

会社を高く売るためには、財務・組織・法務・税務などの多方面での準備が不可欠です。今回、ご紹介したチェックリストを活用し、事前に対策を講じることで、買い手に安心感を与え、会社の価値を最大化し、高値売却を実現できます。

さらに、売却後は資産戦略を意識し、税務・承継・ライフプランを総合的に設計することが重要です。得た資金を長期的な資産形成や次世代への円滑な承継につなげることで、富裕層の会社オーナーにとっての真の成功が達成されます。会社売却と資産戦略を一体で考えることが、将来の安心と資産価値の最大化につながるのです。

会社を高く売るための7条件チェックリスト
✅ 財務と経営の透明性を確保する
✅ 収益構造の持続可能性を示す
✅ 経営者依存を減らし組織力を強化する
✅ コンプライアンスとガバナンスを整備する
✅ 税務戦略と個人資産への影響を把握する
✅ 買い手にとってのシナジーを示せる
✅ 適切なアドバイザーを選任している

株式会社ウェルス・パートナーでは、会社売却を検討されている経営者の方に向けて、
「売却前の準備」から「売却後の資産戦略」までを一貫してサポートしています。

・会社をどのように整理すれば高く売れるのか
・売却後の税金や資産管理をどうすべきか

こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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本記事の著者

木村哲太
木村哲太 プライベートバンキング本部
ポートフォリオマネージャー
プロフィール
早稲田大学国際教養学部卒業後、大和証券株式会社へ入社。富裕層、会社経営者を中心と した資産運用コンサルティングに従事。不動産を含めた資産全体の最適化や相続対策など 全面的な資産保全の長期的な支援をしたいという思いで、ウェルスパートナーに入社。 現在は投資専門誌で連載を持つなど、様々なメディアで 投資家向けの発信も行っている。
当社での役割
富裕層、会社経営者の資産配分最適化。
具体的な金融資産の投資実行サポート。
相続対策を主とした税務の最適化
資産管理会社設立、運営のアドバイス、サポート。
未上場会社オーナー、また会社売却後の資産保全、相続対策の立案、実行を得意とする。
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