【経済アナリスト 森永康平が語る!】高校家庭科で「投資信託」の授業が始まる?!日本の『金融教育』はどうなっていくのか?

はじめに

11月12日に日本経済新聞が高校家庭科で「投資信託」22年4月から授業と題した記事を掲載した。
筆者のtwitterのタイムラインには個人投資家や金融機関の関係者のコメントが多く流れてくるため、この記事に対する興味関心の強さを実感した。
賛否両論がみられたが、個人的な印象としてはネガティブな意見の方が多かったように感じてしまう。

ただし、どのコメントも記事に対するものであり、一次情報となる指導要領自体を見てコメントしている人はほとんどいなかったため、今回は指導要領を見ながら日本の『金融教育』がどうなっていくのかを論じたい。

新学習指導要領における金融教育とは?

文部科学省が平成30年7月に発表した『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説家庭編』を見てみると、以下のような記載がある。

家計管理については、収支バランスの重要性とともに、リスク管理も踏まえた家計管理の基本について理解できるようにする。

その際、生涯を見通した経済計画を立てるには、教育資金、住宅取得、老後の備えの他にも、事故や病気、失業などリスクへの対応が必要であることを取り上げ、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする。

筆者の印象としては、全く問題がなく、むしろ素晴らしい内容だと思う。

「日本人の平均寿命が延びる一方で、退職金や年金が昔ほど期待できない中で、どのようにして現役期間中に必要となる住宅購入資金や子どもの教育費を確保しつつ、老後に備えるか。労働収入だけでは賄えない可能性があるため、一つの解決策として資産運用という選択肢があり、そこでは株式や債券、保険や投資信託といった金融商品があるが、当然商品ごとにメリットとデメリットがある」と言っている訳で、どこに問題があるのかが理解できない。

至極真っ当であり、社会に出る前にこのような話を聞くことが出来るのは子どもにとっていいことだと思う。

実はこれまでも授業の一部だった

ちなみに、家庭科の授業における金融教育は既に行われている。平成22年1月に文部科学省が発表した『高等学校学習指導要領解説 家庭編』のなかでは以下のような記載がある。

生活の基盤としての家計管理の重要性や家計と経済のかかわりなどについて理解させ、経済計画とリスク管理の必要性について考えさせる。

現代の家計は、クレジットカードや電子マネーの普及などキャッシュレス化によって大きく変化しており、情報が氾濫する中で慎重な意思決定が求められていることを具体的な事例を通して理解させる。また、生涯を見通した経済の計画を立てる場合には、事故や病気、失業などの不測の事態や退職後の年金生活なども想定し、生涯賃金や働き方なども含め、リスクにどのように対応したらよいのかを考えさせる。

その際に、クレジット、住宅ローン、保険、株式など具体的な事例などを通して 理解させる。

あくまで今回の新学習指導要領では新たに「債券」と「投資信託」が追加された程度だろう。日本経済新聞がこのなかから「投資信託」を記事のタイトルに持ってきたため、金融教育として子どもに投資から教えるのはおかしいだろ、という意見が多かったのだと思う。

今回のニュースへの反応から分かること

今回のニュースへの反応からは日本の金融教育における課題がいくつも見え隠れする。1つは金融教育が家庭科の授業のなかで行われるということだ。本来であれば前述の様なライフプランニングと資産運用という話だけではなく、企業会計や経済学、統計学、タックスプランニングなども含めて教えることこそ筆者が当初から提唱し続けている金融教育であり、それは明らかに家庭科の範疇を超えてしまっている。

そういう意味では社会や公民のなかでやった方がいいのかもしれないが、現状のカリキュラム全体をみてみると、そもそも義務教育のなかに完璧な『金融教育』を導入するのは無理だろう。
これ以上のコマ数を増やす余力は現場にもない。

また他の課題としては、教える側の問題である。家庭科の先生たちに急に「来年からライフプランニングと資産運用について教えてください」と言っても、混乱するだけだろう。かといって、どこまで教える側の先生たちに手厚いサポートを用意できるか。そんなことをするなら外部からFPを講師にすればいいという声もあったが、そこまで総合的な話を出来る人は多くないだろう。

そして、何よりも大きな課題は、依然として「子どもにお金の話をするな」、「投資なんて危険だ」という意見が多かったことだ。残念なことに、もうすぐ2020年になろうとしている現在ですら、そのような価値観が残っているのが現状なのだ。

まとめ

これまで日本ではお金のことはタブー視されてきて、家庭のなかでもあまり具体的な話はされてこなかった傾向がある。

筆者が遡って調べられた限りでも、約300年前の文献ですら「育ちのいい人間はお金を気にしない」といった表現が見受けられたわけだから、今回の具体的な試みは歓迎すべきであって、頭ごなしに否定的な意見を集めて活動を止めることだけは避けたい。

賛否両論とはいえ、多くの意見が上がったということは昔に比べれば金融教育への興味関心が高まっている証拠でもあり、今後も積極的な意見交換が行われ、よりよい金融教育が日本でも浸透していけば嬉しい限りである。

実際に授業が行われ始めれば、また様々な問題点が浮上し、その度に賛否両論がでることだろう。しかし、何よりも大事なのは一歩を踏み出したということだ。まずは、この第一歩に対して敬意を払い、温かく見守っていこうではないか。

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