2018年版 日本、米国、欧州の長期金利の動向を各国中央銀行のアナウンスから予想

6月から7月にかけて、日本・米国・欧州の中央銀行により今後の各国長期金利の推移見通しに資する数多くの発表がなされました。
本コンテンツでは、特に重要と思われる各国中央銀行のアナウンスに焦点を当て、2018年末までに予想される長期金利の動向について考察します。

1.日本

7月2日発表の日銀短観および7月9日発表の四半期地域経済報告(さくらレポート)を総括すると、賃金上昇と労働力不足の懸念が顕在化している一方で景気拡大の鈍化が顕在化しています。また、消費者物価指数(コアCPI)は依然として日銀の目標値である2パーセントに程遠い水準にあることから、日銀は当面の間現在の金融緩和を続けざるを得ないと考えられます。金利低下圧力は継続し、長期金利は現状通り0.05パーセントを挟んだ水準で推移すると考えられます。

2.米国

6月12日から13日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の大方の予想通り今年2回目となる0.25%の利上げが発表されました。これと同時に、FOMC参加者による2018年末の政策金利見通しの中央値が2.375%に上昇したことは、2018年内に残り2回、年内合計4回の利上げが予想されていることを意味します。
しかし、この予想の正当性には、現時点のイールドカーブの形状を考慮すると疑問があります。

今回の利上げにより、長期金利と短期金利の関係を示すイールドカーブは、2007年以来の水準までフラット化しつつあります。特に短期金利の指標である2年債と長期金利の指標である10年債の利回り格差は相当に縮小しています。仮にこのまま残り2回の利上げを続ければFOMCの議事要旨で懸念が示されていた通り、長期金利と短期金利が逆転する可能性もあります。

FOMCメンバーの経済予測(SEP)で今後の成長見通しの改善とさらなる失業率の低下が示されている中、長短金利の逆転はこれに水を差す以上のインパクトがあり、米国景気の後退につながりかねません。

以上より、景気拡大に水を差さない観点から米国の利上げが今年残り1回に留まることを前提とすると、長期金利は現状通り3パーセント前後のボックスで推移すると考えられます。

3.欧州

6月14日、欧州中央銀行(ECB)は資産購入プログラムと称される量的緩和策を2018年内で終了すると発表しました。これはECBのドラギ総裁が述べたように、GDP成長率は下方修正するものの、引き続き欧州地域の安定的な経済成長とインフレの改善を見通していることが背景にあります。

併せて、ECBは量的緩和策終了後の2019年以降も、引き続き金融緩和効果を維持するために保有している債券の償還金を再投資に振り向けること、および2019年の夏ごろまでは政策金利を据え置くことまで示唆しています。
量的緩和策の終了という転換点を迎えたものの、上記のようなECBの配慮からユーロ通貨圏の長期金利は引き続き安定して推移するものと考えられます。

6月14日以降にみられたドイツ長期金利の低下は、イタリアの新政権発足やドイツの移民問題という個別問題に起因する一時的なものと捉えてよいでしょう。
あわせて、気になる国として英国の動向をみてみましょう。

英国の金利は、他のEU諸国とは異なるネガティブな理由で安定するものと考えられます。イングランド銀行(BOE)が5月に引き続いて6月の金融政策委員会においても政策金利を据え置く決定を下したことは、市場参加者に不安感を想起させています。

ブレグジットによる今後の不透明感の高まりは確実に個人消費の減退とインフレ率低下をもたらしており、今後の金融引き締めはますます難しくなることが予想されます。もはや年内の金利引き上げは無いとの見方も強くなっています。
以上より、欧州諸国の長期金利は概ね安定して推移すると考えられます。

まとめ

以上より、各国の長期金利は総じて2018年末までは現状より大きな変化は見込めないと予測します。ただし、量的緩和の状態からの早期脱却は各国中央銀行が引き続き目指すテーマであり、さらに長期金利は各国もすでに最下限にあることから、引き続き各国中央銀行の定期的なアナウンスにはアンテナを張って頂きたいと思います。

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