目次
はじめに
少子高齢化の進行や長寿社会の到来により、年金や医療費など、将来の社会保障に不安を覚える方が増えています。年金支給額が減少したり、医療費の自己負担額が増加すると、公的制度に頼るだけでは十分とは言えず、自らの資産を形成しておく必要があるからでしょう。
さりとて、将来に備えて資産運用をしたいと考えてはいるものの、実際にはどうしたら良いのかわからず、先送りしている方も多いのではないでしょうか?
目次
・現金・預金の方が安心できたのは過去の話し
・資産を適切に運用するためのポイントは「長期」「分散」「積立」
(1)長期投資の必要性
(2)分散投資の効果
(3)積立投資の意義
・不透明な市場環境下でも長期なら成果が期待できる
・まとめ
現金・預金の方が安心できたのは過去の話し
日本人の多くは、一般的に資産をリスク性商品に投資するのが苦手な傾向が強く、貯蓄文化が根強く残っているのが実情です。こうした背景としては、戦後、インフレの抑制や復興策の一環として、そもそも国が貯蓄を推奨したことに加え、金融機関自体が販売手数料を目当てに、顧客に極めて短期での売買を強いる傾向が強く、必ずしも顧客本位の営業を展開してこなかったことなどが指摘できます。
また、日本では終身雇用が普通であり、同じ職場で定年まで勤め、退職金をもらうのがこれまでの一般的な働き方です。その上で、一定の年齢になると公的年金を受給でき、言わば、老後は退職金と年金で社会が支えてくれるうえ、公的医療保険も充実しています。つまり、そもそも老後のために資産運用などする必要がなく、資産が現金と預金に集中する現象は、決して異常なことではなかったとも言えます。
しかし、冒頭で記載したように、今後は年金や医療などの社会制度が、必ずしも老後の生活を保障してくれるとは断言できなくなりつつあります。さらには、終身雇用も絶対のものではなくなり、大卒の人が企業で定年まで勤めた場合の退職金も、厚生労働省の統計では毎年2.5パーセントのペースで減少しています。このことは、年金や医療だけではなく、退職金を当てにした老後の生活設計すら、今後は難しくなることを示唆しているとも考えられます。
これらの事象は、老後は自分で責任を持たなければならず、その為には、自分で資産を増やす資産運用が必要なことを意味しているとも言えます。現金・預金の方が安心できたのは過去の話しで、これからは、働きながら積極的に資産を運用することが大切な時代になったと言っても過言ではないでしょう。
資産を適切に運用するためのポイントは「長期」「分散」「積立」
資産を適切に運用するために欠かせないポイントは、「長期」「分散」「積立」という3つの視点です。この3つのポイントを押さえておけば、資産の適切な運用方法の基本を身に付けることができるでしょう。
長期的に対象を分散して投資することに加え、積み立てにより投資時期も分散することで、高値掴み等のリスクを軽減し、ほぼ安定したリターンが得られる可能性が高まることを理解しましょう。
(1)長期投資の必要性
資産運用は、投資を行う期間によって成果が大きく異なります。資産運用を行う期間が長ければ長い程、資産は増える可能性が高くなります。概ね10年以上は目安にしたいところですが、そのためにはできるだけ若い時から始める方が、資産をより増やす効果が期待できると言えます。
投資によって短期間で利益を得るためには、どうしてもある程度リスクの高い商品に投資せざるを得ません。反面、リスクの高い商品に投資すると、市場環境によっては資産を大きく減らしてしまう危険性も否定できません。このため、短期間では利益を得るどころか、逆に資産を減らしてしまうこともないとは言えず、中々成果を上げづらいのです。
また、長期にわたって運用すればする程、知識や経験も蓄積され、資産が増えやすい環境を整えることが可能になります。目的が将来に備える資産運用である限り、インカムゲインや複利効果を主とした、資産を減らすことなく着実に増やすことが期待できる、長期投資を選択することが賢明と言えるのです。
※将来運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、諸費用(手数料、税金等)は考慮しておりません。
(2)分散投資の効果
リスクを適切に分散して投資することも重要です。すべての資産を一つの資産に投資してしまうと、市場の動向を一方的に被ることになり、リスクヘッジができません。投資先を分散し、安全性を担保することも、資産運用の基本の一つです。
具体的には、日本や先進国だけではなく、新興国も含めた様々な国や地域など、いわゆる世界経済全体に投資することができれば理想的と言えます。特定の国の経済が伸びるかどうかを予測することは中々困難ですが、世界全体でみれば、成長し続ける可能性は極めて高いと言えます。この先、世界全体では人口は未だ増え続け、テクノロジーの進歩により生産性も向上、GDPも伸び、経済はさらに成長し続けると予測されます。
さらに、株だけではなく、国債などの債券や不動産なども加え、複数の資産に分けて投資することを検討しましょう。複数の資産を組み合わせることで、リスクを抑えた安定的な運用が期待できます。現にリーマンショックの時ですら、株は暴落しましたが、アメリカ国債や金の価格は上昇しています。
※過去の実績であり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
(3)積立投資の意義
積立という手法も忘れてはなりません。積立とは、文字通り一定の金額を一定のペースで積み立てていく投資方法のことです。積立により、高値圏では少なく、安値圏では多くの資金を投資することになり、結果として平均投資単価を抑えることができます。
資産運用の経験が豊富で、金融危機などの事態でも動じることのない方でしたら、一括で投資をしても良いでしょう。でも、普通の方は、大幅な下落局面ではパニックに陥ってしまい、つい不要な売買をしてしまうことが多いのではないでしょうか。
異常に値が下がったら不安になって売りたくなりますし、逆に値上がりしたら、もっと上がるんじゃないかと売りそびれたり、さらに買い増したくなりがちです。しかし、冷静に考えるなら、安い時は買って、高い時は売るべきです。
積立投資であれば、そうした異常な心理状態による不要な売買を回避し、市場の動向に関係なく、一定額を常に積み立てることが可能です。その意味では、特に投資初心者に向いている投資手法と言っても良いでしょう。
不透明な市場環境下でも長期なら成果は期待できる
それでは、株式市場を例にして、実際に過去の市場動向と投資の効果を検証してみます。日本経済新聞の記事によれば、アメリカの株価は2018年10月に高値を付け、その後年末にかけて2割程下げました。
また、ほぼ同じ時期に、日経平均株価も同じく2割程下落に見舞われています。一方、サブプライム危機下の2009年2月末、新興国を含む世界全体のPBRは約1.25倍まで低下し、その5年後に株価は約160%上昇しています。この例は、統計上は全般にPBRが低くなる程、その後株価は大きく反発する傾向がみられることを意味しています。
なお、2018年末時点のPBRは2.05倍と比較的低い水準にあり、経験則上は、将来の反発余地が大きいと期待できると考えられます。もちろん、今後世界景気が減速すれば、株安も有り得ますが、長期で考えれば、過去の例からも慌てずに済むでしょう。短期の動向に一喜一憂するのではなく、継続することこそ重要と言えます。
次に、バブル絶頂期の1989年末から、毎月1万円ずつ、国内外の株価指数に連動する投資信託を購入し続けたとして、資産額の変化を試算してみます。日本株の場合、現在の配当込み株価はバブル期⾼値を大幅に下回りますが、このシミュレーションにおいて2018年末時点での累計投資額は349万円になる一方、資産額は528万円と試算され、5割強増えている計算になります。世界株なら伸びはさらに大きくなります。
もちろん、時期により成績は変わります。さらに、長期データを確認できる先進国株指数を対象に、5年、20年、30年の3パターンで毎月積み⽴てたと仮定して、その成果を試算してみます。
5年積⽴の場合、例えば1990年12⽉末までの5年間で試算すると、時期によっては元本を大きく割り込んでいることもありますが、最終的には資産額は1.1倍に増えたと試算されます。20年積⽴では、サブプライム危機下の2009年2月末までの20年間はわずかにマイナスですが、ほとんどの時期で平均2.3倍とプラスを確保できると試算され、その後も投資し続けていたとすると、2018年末に2.9倍になります。
30年積⽴では、平均3.5倍とどの時期でも元本を上回る試算になります。今度は、株価が回復するのにどれだけ期間を要したかを検証してみます。1929年に始まった世界恐慌では、アメリカの株価が⾼値を回復するのに約25年かかりました。
一方、同じ時期を起点として積⽴投資をしていたと仮定すると、その損益がプラスに回復するのは約13年後と、大凡半分の期間で済む結果になります。株価が⼤きく下げる過程で低い価格で買い続けることが、こうした回復の早さを⽣むと言えるでしょう。
まとめ
これまで記載したように、同じ定額積立でも、期間が長くなる程成果が期待できます。⼀般に株式相場は、周期的に大きな波があります。相場急落に直面した場合、短い期間では回復が難しくても、長く続けることにより、回復が大いに期待できるということです。
加えて投資対象を株だけではなく、複数の資産に分けて投資できれば、効果はさらに高まるでしょう。
それでも、これから資産運用を始めようと考えている人の中には、具体的にどうしたら良いのか分からない、という方も多いのではないでしょうか。殊に日本人は、資産運用に関する基礎教育を受けておらず、親の世代に聞こうにも、教えられる方は少ないと思います。
また、金融機関に相談しようにも、現在は大分方針を修正しつつあるとは言え、これまでの実態からは妄信することには不安を覚えざるを得ません。可能であれば、特定の組織や商品に偏ることなく、中立公正の立場から助言してくれる機関の意見も参考にしたいところです。
昨今、日本でもようやくIFAと呼ばれるこうした機関が誕生し、存在感を増しつつあります。金融機関から独立した公平な立場で、資産運用のアドバイスを行う組織です。金融機関からの提案を鵜呑みにするだけではなく、こうした専門家からアドバイスを受けたり、セカンドオピニオンとして活用することを検討してみるのも選択肢の一つかも知れません。