【経済アナリスト 森永康平氏が語る!】映画『ジョーカー』を心から楽しめない理由とは?近い将来、日本でもジョーカーのような人が生まれる可能性は十分にある!?

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はじめに

映画『ジョーカー』が世界的にヒットしています。ジョーカーは人気映画『バットマン』に出てくる悪役ですが、今回は彼が主役となった映画です。

これから観るという方もいると思うので、ここでは詳しく内容を説明することは避けますが、コメディアンを夢見ていたアーサーという男性が、最終的には悪のカリスマであるジョーカーに変貌するまでを描いた映画です。

アーサーが貧困・親の介護・持病持ちなどの環境下にいる社会的弱者だったという背景がこの映画のポイントなのでしょう。

正常性バイアスに陥っていないか?

筆者は『ジョーカー』を映画として楽しく観ることは出来ましたが、一方で心から楽しめていない自分もいました。なぜなら、近い将来、日本でもジョーカーのような人が生まれる可能性は十分にあるからです。

『年収300万円時代を生き抜く経済学』 という書籍が世に出てから16年が経ちました。当時は「そんなに年収が下がる訳ないだろう」という反応がほとんどだったそうですが、徐々に年収が下がっていくなかで、書籍も売れていったようです。

人間というのは実際にそうなっていく過程では、「自分だけはそうならない」と思いがちなものですが、ジョーカーを楽しく観れてしまった人はまさにその状況にあるのかもしれません。行動経済学ではこのような考えを「正常性バイアス」といいます。

日本でも既に格差は広がっている

国税庁が9月に発表した『平成30年分⺠間給与実態統計調査結果』によると、会社員やパートの方が平成30年の1年間に得た給与の平均は440万7千円となっています。「なんだ、まだ年収300万円まで下がってないじゃないか」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、このデータを「役員を除く正社員」と、「非正規社員」に分けてみると、印象は変わるでしょう。「役員を除く正社員」の平均給与は503万5千円、一方で「⾮正規社員」の平均給与は179万円となっています。

総務省統計局が発表した『労働力調査』によると、平成30年平均の「役員を除く雇用者」の数は5,569万人となっていますが、そのうち「非正規の職員・従業員」は2,120万人となっています。

つまり、約37.9%の雇用者は非正規社員になります。つまり、先程のデータと併せて考えれば、労働者の4割弱は年収300万円どころか、その半額に近いレベルまで落ちてしまっているのです。

また、収入の格差は当然貯蓄の差にも表れます。下図は総務省統計局が発表している家計調査のデータです。負債の多くは住宅ローンが最も大きいと考えられます。貯蓄がない世帯ほど家計に占める純負債(貯蓄から負債を差し引いた額)が大きいことが分かるかと思います。

下図は現在貯蓄高を低い方から高い世帯へと順に並べて五等分した際に各階級がどのようなかたちで資産を保有しているかを表したものです。

当然ですが、貯蓄の少ない世帯は半分以上を普通預金として持ち、有価証券での運用はほとんどしていません。貯蓄が増える程、資産を有価証券で運用していることが分かります。

先程の図と下図を併せて考えると、稼いでも稼いでも負債の返済だけで精いっぱいで、なかなか資産が積みあがっていかない世帯がある一方で、富める世帯は余剰資金を運用して更に資産を増やしていくという構図が見てとれます。

まとめ

もちろん例外はありますが、日本で働いているほとんどの人が会社員であることを考えると、一般的には一人の人間が1年のうちに稼げる金額には限界があります。

そして、誰しも1日は24時間しかありません。そうなると、資産を効率的に増やすにはお金にも働いてもらう必要があります。そこで重要になってくるのが投資です。

いま投資に充てるお金のない人は現職での収入を上げたり、複数の収入源を持つことで資産を積み上げていくことに集中すべきですが、既に一定の資産を持っている人はしっかりと計画的に投資をして、効率的に資産を積み上げていきましょう。この超低金利時代、お金は寝かしておくと何ももたらしてくれませんよ。

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