はじめに
2019年5月15日アメリカ政府が中国の通信機器大手・華為技術(以下:ファーウェイ)に対し、事実上の製品供給の禁止措置を発動しました。
事の発端はファーウェイの持つ「5G技術」にあり、多くの基地局(図1参照)や技術を有しておりさらにその製品がアメリカに出回ることでアメリカの機密情報が漏洩するとの懸念を示したことにあります。
(引用元:SankeiBiz)
中国には「国家情報法」があり、つまり中国政府が国内の民間企業に情報を要請するとすべて手に入るのでファーウェイが得たアメリカの情報を、中国政府が手にいれるということになります。
これに対しアメリカ政府は「国家安全保障上の問題」と位置づけ、制裁に踏み切りました。
さて、ますます規制が厳しくなるアメリカ政府の対応ですがファーウェイにとってはむしろプラスになるのではないでしょうか。
その点を踏まえ、本記事ではファーウェイの未来についてお話していきます。
問題の「5G」とは?
(引用元:Newsweek日本版)
5Gは自動運転から家電まで、あらゆるものを無線かつ大容量・超高速・低遅延で繋ぐことができる機能を指します。
つまり従来の4Gよりも機能性に優れ超高速で、あらゆるものを伝達できる技術なのです。
世界経済に与える影響
5Gは今までの通信技術にイノベーションを与えるもので、それによりアメリカ政府が国家安全保障上の問題と位置づけ禁輸措置をとりましたが果たしてどれほどの経済的損害が生まれるのでしょうか。
まずファーウェイの売上高は約12兆円で、世界から7兆円ほどの部品を調達しそのうちアメリカからの輸入が約1.1兆円もあります。
この時点で制裁措置のマグニチュードは大きいでしょう。
さらにアメリカは中国からの輸入品に対する第4弾の制裁関税を準備しています。
これが発動されると中国の輸入品に関税が上乗せされることから、アメリカ企業はスマートフォンの価格を引き上げることになり、アメリカの消費が抑え込まれることになるでしょう。
ちなみにアメリカはGDPのうち約7割以上が個人消費なので、消費が減速すると景気減速する未来も近いのではないでしょうか。
さらにアメリカ企業であるAppleは世界中から部品を調達し、中国の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンの工場でiPhoneを組み立てて世界中に輸出しているので、制裁関税や禁輸措置によりGAFAの一角であるAppleにも悪影響が及ぶことになるでしょう。
ファーウェイは世界トップレベルの通信技術を持っており、研究開発費は世界5位の水準を誇っています。
ファーウェイのハイエンドスマホの場合、使われている部品の約6割が海外メーカー製品であるため禁輸措置の影響はかなり大きいでしょう。
日本への影響を考えると中国に対する輸出額はGDPの年間約4%に達するので、海外輸出に支えられた日本経済にもかなりの影響を与えるでしょう。
こういった米中貿易戦争を背景に、今年の4月末時点では米中貿易戦争の緩和を期待し日経平均株価は上昇を続けていましたが5月に入るとこれらの制裁措置により日経平均は続落し、20000円付近まで落ち込みました。
ファーウェイの未来
以上のようにアメリカ政府のファーウェイに対する制裁措置は世界経済の減速を招きやすいと考えられますが、禁輸措置によってむしろファーウェイの未来は明るいかもしれません。
例えばファーウェイはGoogleのAndroidが使えなくなった場合、最速で今秋にも自社OSを開発し使い始めるという方針を示しています。
これまでパソコンのOSはWindowsやiOS、Linuxの3つが主軸であり、携帯電話のOSはAndroidやiOSが主軸でした。
つまりパソコンがWindowsで携帯電話がiOSの場合、2つのデバイスがうまく連携せずシナジーを発揮することができませんでした。
しかしファーウェイの世界トップレベルの技術により、パソコンと携帯電話の単一OSが開発されるかもしれません。
そうなれば今までパソコンと携帯電話で単一のOSを使えていたのはiOSだけでしたが、ファーウェイも新たに単一OSを開発することでイノベーションが起こる可能性があります。
最後に
5Gを発端に始まった禁輸措置ですが最終的にはアメリカ経済を減速させ、さらには世界経済も危険にさらす事態になりそうです。
一方でファーウェイの世界トップレベルの技術は新しいOSの開発に繋がり、さらなるイノベーションを生み出すかもしれません。
長期化する米中貿易戦争の中、中国政府の習近平国家主席は共和党の保守派からの批判が出始め、アメリカ政府のドナルド・トランプ大統領は大統領選挙への準備もあるため両者とも引けない状況になってきました。
今後も長引く可能性の高い米中貿易戦争ですが、ファーウェイによりイノベーションが起こればそれを世界中に広げるために一刻も早く、解決するべきだと考えます。