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はじめに
ヘッジファンドは、1949年に米国で誕生し、1990年代のアジア通貨危機や欧州通貨危機などで名を挙げました。ヘッジファンドは投資家から資金を集め、世界中のさまざまな投資対象を調査した上で、ベストと思われるポートフォリオ(資産の組み合わせ)を組んでいます。
今回は、ヘッジファンドの7つの手法について解説します 。
ヘッジファンドの戦略別運用残高
日興リサーチセンターの調べによると、2019年11月末時点のヘッジファンドにおける運用残高の戦略別構成比は、以下の通りです。
株式ロング・ショート 34.6%
マルチ・ストラテジー 14.6%
イベント・ドリブン 9.9%
マネージド・フューチャーズ 9.9%
債券アービトラージ 7.6%
グローバルマクロ 6.8%
リラティブバリュー 3.1%
それぞれの戦略の詳細を見ていきましょう。
株式ロング・ショート
割安な銘柄を買い(ロング)、割高な銘柄を売り(ショート)ます。一般的な投資信託は「買い」しかしませんが、ロング・ショートは「買い」と「売り」を組み合わせることで、マーケット動向に関わらず利益を狙う手法です。
マーケット全体が大きく動いても、片方のポジションがヘッジの役割を果たすので、損失を最小限にできる利点があります。ヘッジファンドの伝統的な手法で、運用残高の3分の1を占めています。
マルチ・ストラテジー
イベント・ドリブンやグローバルマクロなど複数の戦略を採用するファンド。広くリスク分散ができるので機関投資家の利用が多くなっています。
イベント・ドリブン
イベント・ドリブンとは、企業の経営に大きな影響を与えるM&A(合併・買収)や業務提携など、イベントの際に起こる株価のミスプライスを収益機会にする戦略。
主なイベント・ドリブン戦略として、「M&Aアービトラージ戦略」や「ディストレスト戦略」があります。M&A案件が発表されて両者の株価が大きく動いた場合、M&Aが成立したら合併比率の理論値に収斂すると見て、割高な方を売り割安な方を買います。
またディストレスト戦略は、経営不振や経営破綻などで割安になっている企業の株式や債券を安く買い、価格が回復した時に売却して利益を得る手法です。
マネージド・フューチャーズ
マネージド・フューチャーズは、先物取引で利益を追求する手法。商品投資顧問業者の頭文字を取ってCTA(Commodity Trading Advisor)とも呼ばれます。
日本では為替相場と株式先物でCTAの存在が目立ちますが、実際は株式や債券の先物や穀物・原油などの商品先物も含め、世界中のあらゆる金融商品の相関関係をコンピューターで割り出して売買しています。
上下どちらに動いても収益を狙うトレンドフォロー型のマネージド・フューチャーズが一般的です。
債券アービトラージ(フィックスト・インカム)
フィックスト・インカムはアービトラージの一種で、金利系の資産に特化。債券や金利先物で割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買います。
ただ債券や金利先物では、アービトラージを行う投資家が多いので、利幅は限られます。
グローバルマクロ
マクロ経済を分析し、世界中の株式や債券・コモディティなど多様なポジションを取ります。世界中の資産に分散することでリスクヘッジしていますが、見通しが狂うと大きな損失が生じる場合があります。ジョージ・ソロス氏のクオンタム・ファンドが有名です。
リラティブバリュー
リラティブバリューは、株式と転換社債など似通った金融商品で割高・割安なものを売買します。アービトラージ戦略に似ていますが、アービトラージがミスプライスに注目するのに対し、リラティブバリューは価格がいずれ収束するとの考え方に基づいて取引します。
ヘッジファンドがマーケットに与える影響
ヘッジファンドは、機関投資家や富裕層から資金を集め、巨額の資金を運用しています。ファンド数も1万本を超え、マーケットにも大きな影響を持つようになりました。たとえば、株式や通貨などの「カラ売り」を仕掛けると、相場が大きく崩れることがあります。
ヘッジファンドは、買いだけでなく、売りのポジションを持っている場合があるので、マーケットが上下どちらに動きても収益を狙えるのです。ただ、ヘッジファンドにはプラスの面もあります。
投資家に多様な戦略を提供していることや、流動性を供給していること、市場の歪みを「裁定取引」などで解消している点などです。
まとめ
今回は、ヘッジファンドの投資手法について解説しました。どんな環境でも収益を目指すヘッジファンドは、マーケットでの影響力が強くなっています。
最近は、HFT(高頻度取引)を取り入れているCTAもあり、フラッシュ・クラッシュなど短期間で大きな下落が起こることも増えています。
ヘッジファンドがマーケットに与える影響について、きちんと理解しておくようにしましょう。