はじめに
韓国側から日韓の軍事情報を共有するための取り決めであったGSOMIAについて存続するか、破棄するのかが11月22日に発表されました。
結果としては、GSOMIAをすぐに破棄できる状態にして、存続することを韓国側が決めました。
GSOMIAはもともと北朝鮮が繰り返しミサイルを発射していた2016年11月23日に締結されたもので、具体的には「秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定」のことです。
つまり簡単に説明すると、日韓で北朝鮮のミサイルをはじめとする秘匿性の高い軍事情報を共有するための取り決めのことです。
ちなみに、一般的には自国の情報に関して他国に漏らさないというサイドパーティールールがあるので国家間で情報共有のための取り決めをしないと、秘匿性の高い軍事情報などは共有できず、北朝鮮のミサイル発射のような有事の際に機動的に対処できないのです。
また、GSOMIAにはアメリカも関わってきます。
そこで、今回韓国側にアメリカが圧力をかけたことで、韓国がGSOMIAの破棄を止めたとも言われています。
では以下ではGSOMIA破棄をめぐる問題に発展した経緯と、GSOMIAそのものについて詳しく解説していきます。
GSOMIA破棄をめぐる問題の経緯
今回のGSOMIA破棄をめぐる問題の発端は、日本側の韓国に対する輸出規制にあります。
というのも日本政府は2019年7月1日、韓国への半導体材料の輸出規制を強化すると発表し、それに対して韓国政府は、日本の輸出規制強化は「報復措置」だとして、世界貿易機関(WTO)への提訴を決めていました。
そしてさらに、日本がそもそも輸出規制をした背景に1965年に解決したとみていた「徴用工問題」が長期化し、韓国側が日本企業70社以上に賠償請求していたことも発端として挙げられます。
このような経緯から日本は韓国を8月にホワイト国から除外しました。
つまり今回のGSOMIA破棄の問題は、韓国側の日本に対する輸出規制を撤回させるための政治的な駆け引きであると言われています。
そこで、以下ではGSOMIAの内容を詳しくご説明します。
GSOMIAとは?
GSOMIAは2016年11月23日に日韓で締結された秘匿性の高い軍事情報を共有するための取り決めのことです。
そもそも、国家間で秘匿性の高い情報を漏洩させないという国際的なルールがあるので、国家間で情報共有するには特別に取り決めが必要なのです。
そして、GSOMIAは日韓にとって喫緊の軍事課題となっている北朝鮮の軍事行動を把握することを目的に、北朝鮮が繰り返しミサイルを発射していた2016年に締結されました。
では、なぜ日韓で情報共有する必要があるのでしょうか?
それは、双方の協力がないと正確かつ迅速に北朝鮮の軍事情報を把握できないからです。
というのも、韓国は北朝鮮との国境である北緯38度線を中心に北朝鮮の監視・電波傍受をして、ミサイルの発射地点を正確に把握しています。
一方、日本は日本海沿岸で自衛隊の監視・電波傍受によりミサイル落下地点を正確に把握しています。
GSOMIAでは、このミサイル発射地点とミサイル落下地点の情報を共有することで、日韓両国が有事の際に迅速に対応できるのです。
ただ、ここまでをみると日韓だけの問題に見えますがなぜそこまで連日ニュースに取り上げられるのでしょうか。
GSOMIA破棄による世界的な影響
今回のGSOMIA破棄をめぐる問題で、破棄されると最も困るのがアメリカともいわれています。
というのもアメリカは近年中国と経済の覇権を争って関税導入を武器に政治・経済的な駆け引きをしています。
中国は急速に成長する国内経済が今では世界2位にまで上り詰めているので、世界経済の覇権を握ろうとするのは必然ですが、当然、アメリカも黙ってみているはずもないので中国の軍事勢力拡大についても対抗しようとします。
そのため、昨今の香港デモに関してもアメリカは香港に肩入れしており、中国を軍事・政治的に包囲する狙いがあります。
また、日米と米韓はGSOMIA以前から軍事情報を共有しているので米国は今まで北朝鮮ではなく主に中国の軍事情報を手に入れていたのです。
しかし、GSOMIAがなくなると日韓の情報共有ができなくなるので、韓国から得た情報を日本に流せなくなり、逆もまた同様になります。
そうなると、中国が軍事勢力を拡大する際の情報収集や対応が遅れ、米国にとっては経済的に不利益が生じます。そこで、米国にとってはなんとしてもGSOMIA破棄は食い止めたいという考えがあり、韓国側に圧力がかかったとの見方があります。
その結果かどうかはわかりませんが、韓国はGSOMIA破棄を見送り、さらに世界貿易機関(WTO)への日本の輸出規制に対する提訴も取り下げました。
まとめ
今回の、GSOMIA問題については日韓だけの問題ではなく、アメリカ・中国・北朝鮮など政治・経済的な駆け引きがあるようです。
まずは、一番最初の発端となった「徴用工問題」の解決に期待したいところです