富裕層に詳しいIFAが教える「外国債券キホンのキ⑤税金編」

皆さん、こんにちは。株式会社ウェルスパートナー代表の世古口です。

本日のテーマは、「外国債券キホンのキ⑤税金編」をお届けします。外国債券投資の基本に立ち返りまして、改めて一から分かりやすく基本をお伝えしていく、「外国債券キホンのキ」というシリーズものの全6回の5回目です。今回は、外国債券投資にまつわる税金について分かりやすくご説明できればと思います。

外国債券の利益・税金計算例(個人)

具体的な例を持ってお伝えするのが一番分かりやすいと思いますので、今回は、個人の方がこういった債券に投資した場合にどういった税金が掛かるのかを一つの表にまとめましたので、こちらを基にお話していければと思います。


出典:株式会社ウェルス・パートナー作成

表の一番上が項目です。投資債券の概要が一番左の列、左から2つ目の列が掛かる税金の種類、税金を計算する前に利益を計算する必要がありますので、その右側が利益計算、一番最後が税金計算の列です。

一番左から見ていきます。投資する債券の概要はこのようになっています。債券のクーポン、毎年や6ヶ月に1回入ってくる利金がどれぐらい貰える債券なのかという年利率が5%の設定です。額面の金額は10万米ドルですから、10万米ドル分の債券を購入している前提になります。購入した時の米ドル円の為替レートが1ドル100円で、かなりドル安円高の時に投資しています。現在の為替レートは130円と考えます。債券は基本的に価格が100で発行され、100で満期を迎えます。購入した時の債券の価格も100ですが、現在の価格は少し下がって90になっている状況です。

この債券を途中で売却する前提で、売却益を考えていきたいと思います。

税金の種類

その右側に税金の種類が2つありまして、1つ目は利金(インカムゲイン)です。定期収入が目的で債券に投資される方が多いですが、毎年入ってくる5%の利金に掛かる税金が1つ目です。2つ目がその下にある譲渡益・償還益です。今回は売却を前提に考えますので、その場合は譲渡益になります。途中で譲渡した時に発生する利益です。満期まで持って利益が発生した場合は、償還益と言います。これを合わせてキャピタルゲイン(値上がり益)と言うわけです。それに掛かる計算が下の行にあります。

利金(インカムゲイン)

まずは、利金(インカムゲイン)の税金について考えていきたいと思います。まずは利益を計算しましょう。10万米ドルの債券を保有していて、この債券の年利率が5%ですので、単純に5%掛けます。さらに、受け取った時の為替が現在1ドル130円ですので、130円のレートを掛けて計算すると、この利金の金額は年間65万円になります。これが税金計算の基になる利金の利益です。その方が受け取られた利益そのものになります。

次に右側の税金計算をご説明します。65万円の利金×20.315%=13.2万円、これがこの債券の利金に掛かる税金です。これが1年間の税金で、毎年掛かります。

譲渡益・償還益(キャピタルゲイン)

次に、譲渡益・償還益です。キャピタルゲインに掛かる税金についてお話しします。下の列を見てください。譲渡益に関しては、利金よりも若干計算が複雑になっています。譲渡益を計算する時は、2つの要素に分解しなければなりません。先程お伝えした100や90という債券の価格でどれぐらい利益損失が出たか計算する必要があるのと、米ドル建てなどの為替が買った時よりも円安に進んでいたら為替の利益が出ていますので、それも考慮することになります。債券価格と為替をそれぞれ合算して利益を計算する必要があるわけです。

債券価格に関しては、90で売却します。90-100(購入した時の価格)を100で割り、それ掛ける10万米ドル×為替100円=▲100万円になります。ですから、債券の売却に関しては、債券価格はー100万円分の貢献になるわけです。為替は現在130円ですので、130円-100円(購入した時のドル円)を100円で割り、それ掛ける10万米ドル×為替100円=300万円になります。これが、この債券投資における譲渡益の中の為替の利益です。ですから、この-100万円と300万円を合算した200万円が、この債券の売却における譲渡益になります。

税金の計算方法

次に税金の計算をします。利益200万円×税率20.315%(利金と同じ)、譲渡した時の利金に関する税率も20.315%で同じです。40.6万円が売却した時に掛かる税金です。

今回は売却した時という前提でしたが、満期まで持ち切って利益が出た場合は償還益になります。計算の仕方は同じです。これは利金の税金と違って、売却した時だけこの税金が掛かることになります。これが個人の場合の債券の利益、税金の計算例になりますので、基本として押さえていただければと思います。

外国債券の税金ちょっと応用(個人×法人)

債券の税金はこれが全てですので、もう少し役に立つことをお伝えしましょう。「外国債券の税金のちょっと応用」ということです。個人で運用した方がいいのか、法人で運用した方がいいのかは結構重要なテーマではありますが、あまり語られることがない内容ですので、私の経験からお伝えしたいと思います。

この場合の法人は、会社を経営している方であれば事業会社の場合もありますが、資産管理会社が多いです。資産を管理する為だけの目的で作られた法人(資産管理会社)で運用した方がいいのか、個人で運用した方がいいのかを項目ごとに比較して、どちらが良い・悪い、どちらで運用した方がいいかを考えていただければと思います。皆様の状況や目的に合った方を選んでいただくのが良いと思います。


出典:株式会社ウェルス・パートナー作成

利金に関する税率

上の表をご覧ください。左側に比較項目があります。真ん中の列が個人、右側が法人(資産管理会社)です。一番上の行は、利金に関する税率です。

毎年入ってくる利息(インカムゲイン)に対する税金は、個人は20.315%です。個人の給料の総合課税と比べると低いと思います。法人は21%~33%ですので、単純な税率だけで考えると、実は法人よりも個人の方が低くなるわけです。ただ、この計算に行き着くまでに、法人の場合は、会社で発生した経費や債券の利金などを合算して、残った利益に対して税率が掛かることになりますので、単純な比較はできません。全く経費が発生していない法人を前提にすると、この比較でいいでしょう。この前提で税率だけ考えると、個人の方が低いと言えます。法人の税率は21%~33%で結構幅がありますが、法人の利益が800万円以上になる場合は、基本的に33%と考えていただければと思います。それ以下は20数%程度になるイメージです。

譲渡益(償還益)の税率

2つ目が、譲渡益(償還益)の税率です。これも利金と同じで、個人は20.315%、法人は21%~33%です。

損益通算の対象

3つ目の比較が損益通算の対象です。利金が入ったり譲渡益が出たりした場合に、何の損失と通算できるのかが個人と法人では違います。個人の場合、債券から利金が入り、債券を売却した時に利益が出ますが、当然、損失が出る場合もあるわけです。損失が出た場合は何と損益通算できるのかがこちらです。個人の場合は、株式等の譲渡損益・配当金です。この株式等というのは、株式以外に投資信託も含まれます。こういったものを譲渡した時の損益と配当金ということです。また、同じような金融商品である債券の譲渡損益・利金は全て合算できます。基本的に金融による利益や損失の中であれば損益通算ができます。ただし、それ以外の事業や給料の損益、不動産の損益とは一切合算できません。

法人の場合は、全て損益通算できます。利金の税率のところでもお話ししましたが、法人はどんぶり勘定です。あらゆる利益と費用を合算して、最後に残ったものを所得と認識し、これに対して税率が掛かっていきます。損益通算の対象の幅は、法人の場合は全てと認識していいと思います。個人よりも圧倒的に広いということです。

譲渡損(損失繰越)

4つ目が、譲渡損が出た場合の損失の繰越です。債券を売った時の損失を何年間繰り越せるのかです。個人の場合は、債券の損失が出て損益通算して、損失が残ったとすると、向こう3年間は繰り越して、その他の金融の利益などと通算できます。

法人の場合は10年間です。法人の場合も、損失が出てその年の利益と通算しても全部消化しきれなかった場合、損失が残りますので10年間繰り延べて、他の利益と10年の間に相殺できます。

損益通算と譲渡損に関しては、間違いなく法人の方が有利と言えます。損失繰越の期間は長いですし、損益通算対象は圧倒的に広いわけです。

発行体破綻時の税務

次に、発行体破綻時の税務です。倒産して債券が回収できない時に、個人の場合は、譲渡損にならない可能性が高いというのが一般的な見解になっています。他の金融所得と通算できないという考えです。

一方で法人の場合は、譲渡損扱いと考えますので、破綻したとしても他の法人の利益と損益通算させることができます。法人が有利というより「個人ができないのはなぜ?」と疑問に思うところですが、国内債券はできるそうですが外国債券はできないそうです。米ドル建ての債券などは発行体が破綻した時に通算できないということです。この点も法人の方が有利と言えます。

資産承継対策

最後に、資産承継対策になるかならないかです。個人に関しては、基本的には全くならないと考えていいと思います。法人の場合、やりようによるということで△にしています。法人様で株主をお子様にして、資産を持っているご本人様がその法人に資金を貸し付けて資産運用する場合は、その債券の利金などがお子様名義で増えていくことになります。そういった使い方をするのであれば、承継対策にも一応使えるということです。この形を個人でやるのは基本的に難しいと思いますので、法人は△、個人は×にしています。

個人と法人どちらが有利なのか

これを見てどう判断するかということですが、上の2つ、利金と譲渡益の税率を見て、単純に税率だけ考えると、個人の方が有利なのは一目瞭然かと思います。法人は21%~33%で、個人は20.315%なので、個人の方が有利な可能性が高いわけです。

ただ一方で、下の4つに関しては、完全に法人の方が有利ということになります。ここまで考えると、確かに税率は個人の方が低いですが、トータルで考えると法人の方が有利といえる方が実は多いです。

「個人の方が税率は低いのに、なぜ債券を資産管理会社や法人で運用するのですか?」というご質問をよくいただきます。それはメリットが大きいので、個人ではなく法人で運用する方が多いのだと思います。

もちろん、両方で運用している方もいらっしゃいます。メリット・デメリットがそれぞれあるので、それに合わせる形で、この債券は個人の方で運用して、この債券は法人で運用する、それぞれこういうバランスで運用するということも、もちろん有効ではないかと思います。

まとめ

「外国債券キホンのキ⑤税金編」のまとめをさせていただきます。ポイントは4つです。

1つ目が、債券の税率は利金と譲渡(償還)益の2つがあり、ともに税率は20.315%です。利益に対してこの税率が掛かるということになります。

2つ目が、その中の譲渡(償還)益は、債券価格と為替の2つの損益を合算して利益を計算します。利益が出たら税金が掛かりますし、損失が出たら他の利益と通算できるかどうかを考えるということです。

3つ目が、個人と法人で資産管理をどちらでした方がいいのかという話です。シンプルに税率の低さを重視するのであれば、個人運用でいいと思います。法人で経費を使い、あまり利益が出ないようにできるのであれば、法人(資産管理会社)で運用するのはいいと思います。しかし、それほど費用がないまたは使えないということであれば、税率も低いですから、シンプルに個人で運用するのはアリかと思います。

4つ目ですが、法人で運用する場合は通算できる損失が多いです。何かに投資して損失が出る可能性が高い場合や、リスクの高い債券で損失が出た場合、個人は3年しか繰り越せませんが、法人は10年繰り越せます。万が一発行体が破綻した場合は、個人は譲渡損にできません。法人は損失にできますので、他の利益と通算できるメリットがあります。特にリスクが高い債券に関しては、法人で運用することを選択肢に入れてもいいと思います。

本日は「外国債券キホンのキ⑤税金編」という内容でお届けさせていただきました。

※本ページで紹介している内容につきましては、各種の信頼できると思われる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を保障するものではありません。また税金制度の内容に関し、変更等が加えられる場合がありますので、最新情報等の詳細はお客さまの住所地を管轄する所轄税務署、または税理士等へお問合せください。

今回の内容については「世古口俊介の資産運用アカデミー」でも視聴できます。

債券に関するご注意事項
(1) 個人向け国債
個人向け国債を募集により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。
個人向け国債は、原則として、発行から1年経過すれば中途換金が可能です。なお中途換金する際、原則として「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」の中途換金調整額が、売却される額面金額に経過利子を加えた金額より差し引かれます。ただし、発行から一定期間の間に中途換金する場合には、中途換金調整額が異なることがあります。
(2) 円貨建債券
円貨建債券を募集・売出し等又は各金融商品取引業者との相対取引により売買する場合は、その対価(購入対価・売却対価)のみを受払いいただきます。
債券の価格は、市場の金利水準の変化に対応して変動しますので、償還前に換金する場合には、損失が生じるおそれがあります。
(3) 外貨建債券
外貨建債券を募集・売出し等又は各金融商品取引業者との相対取引により売買する場合は、その対価(購入対価・売却対価)のみを受払いいただきます。
外貨建債券を円貨で購入される場合、為替取引には為替スプレッドがかかります。
外貨建債券の利金・償還金の円貨での受取を指定した場合、為替スプレッドがかかります。
外貨建債券の途中売却は、外貨決済のみの受付となります。
外貨から円貨への為替取引には、各金融商品取引業者の定める為替スプレッドがかかります。為替スプレッドについては各金融商品取引業者のWEBサイト等をご確認ください。 。
債券の価格は、市場の金利水準の変化に対応して変動しますので、償還前に換金する場合には、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営、財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、投資元本を割り込むことがあります。詳しくは「外国証券の国内店頭取引について」及び「公社債の売買取引について」をご覧ください。
外貨建債券は、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
詳しくは、各金融商品取引業者のWEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。

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