国内外を問わず多様な投資家ニーズに対応した取引が可能なフレックス・オプションとは何だろう?

1.はじめに

2018年6月25日、日本取引所グループの大阪取引所は上場オプション取引の新たな仕組みとして、有価証券オプション取引と指数オプション取引を対象とした、フレックス・オプションを開始しました。

現時点でフレックス・オプションを活用できる投資家は機関投資家つまりプロに限定されていますが、機関投資家の動きを知るうえで有益なこと、そして今後フレックス・オプションは個人にも門扉が広がる可能性もあるため、本コンテンツでその概要をご説明します。

2.従来の上場オプション取引とフレックス・オプションの違い

フレックス・オプションでは、従来は日経225・JPX日経400・TOPIXに限定されていた対象指数に、東証銀行業株価指数と東証REIT指数が追加されました。なお、有価証券オプションの対象原資産は株式・ETF・リートのまま変わりません。

また、満期日を日単位で設定可能として月末や期末を満期とするヘッジ取引等での利用可能性を広げたこと、権利行使価格を小数点以下2桁まで自由に設定可能とすることで低位株銘柄のオプション取引を事実上可能としたこと、さらに最終決済方法について従来のSQ値差金決済と受渡決済に加え後場終値ベースで決済することを可能とする「終値差金決済」が追加されています。

このように、フレックス・オプションでは従来の上場オプション取引にはなかった満期日や権利行使価格の柔軟な設定が可能となっています。これにより、国内外を問わず多様な投資家ニーズに対応した取引となっているのです。

3.従来の店頭オプション取引とフレックス・オプションの違い

オプション取引おいて取引所を通さない柔軟な条件での取引は、これまで店頭オプション取引でのみ対応可能でした。しかし店頭オプション取引は、当事者間での相対取引であるためにカウンターパーティーリスク(取引相手の一方がデフォルトなどに陥ることにより、契約上定められた取引そのものや支払いが履行されないリスク)がありました。

また、相対取引であるため清算価格が開示されないことから、価格の透明性については問題点が指摘されていました。このリスクが顕在化した2008の年リーマンショック以降、オプションなどデリバティブの店頭取引に対する国際的な規制導入の動きや、カウンターパーティーリスクへの意識は高まる一方だったのです。

これに対してフレックス・オプションでは、投資家に対して取引の安全性と利便性の向上、さらには透明性の確保のために以下の改善がなされています。

フレックス・オプションでは取引の清算について日本証券クリアリング機構を通じて行うことになり、さらに証拠金の計算方法は他の上場商品でも用いられているSPANの対象となったため、取引履行の安全性が高まりカウンターパーティーリスクはほぼ無くなったといってもよい取引に改善されています。

清算価格の開示については大阪取引所や日本証券クリアリング機構が日々公表することになったため、取引価格の透明性が格段に向上しています。

さらに取引契約について、旧来の店頭オプション取引ではISDA契約(デリバティブ取引の国際的業界団体のISDAが定める標準契約、全て英文)の対象でしたが、フレックス・オプションでは上場物の取引契約となったためISDA契約と比較して格段に負荷が軽減されるようになりました。

4.まとめ

上場銘柄のフレックス・オプションが機関投資家の間で普及すれば、もしかしたら店頭オプション取引は廃れてしまうかもしれません。

しかし、これは上場オプション取引市場の一層の活性化および流動性向上につながり、さらには金融規制を背景としたデリバティブ市場の透明化が一段と進展することが期待されます。そして、個人も取引可能となることも十分に考えられるわけですから、今後の機関投資家がフレックス・オプションをどのように活用するか注目したいものです。

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