2019
01/30
最終更新日:2019/02/19
経済・マーケット

1.はじめに

新興国債券のリターンは、現地通貨建てベースでマイナスが続いています。主に地政学リスクの高まりを理由に多くの投資家が新興国債券への投資を手控えていますが、新興国全般の現状を把握すれば別の見方も出てきます。

2.新興国のファンダメンタルズは?

多くの新興国で、財政収支と国内債務には大きな懸念は残るものの概ね経済成長や財政収支・国内債務、対外収支・対外債務などの経済のファンダメンタルズは改善傾向にあります。

リーマンショック後の新興国全体における対外債務膨張を懸念する声がありますが、その膨張した債務のほとんどは中国かメキシコによるものです。大半の新興国の対外資産は対外債務を上回る規模を確保しており、現在有する外貨準備で対外債務を返済することは十分可能です。

3.共通したリスクは?

新興国の対外債務の多くが米ドル建てである中で、アメリカの金利上昇傾向とそれに伴う米ドル高は、米ドルの資金調達コストを引き上げる点で多くの新興国にとって完全にアゲインストです。

また、中国など一部の新興国では市場参加者が嫌う政府による介入主義政策が見られることと、メキシコやトルコ、アルゼンチンのように多くの国で政治リスクが高まっていることが市場参加者に強く不安視されています。

これに加えて最近勃発した米中貿易戦争が、中国の周辺国にどのような影響を及ぼすかについて見通しが立たないことも懸念材料です。

4.特に注意を要したい国は?

トルコとアルゼンチンについては、引き続き十分な警戒が必要と考えます。この二国に共通するのが対外債務の大きさに比して外貨準備が少なく、経常赤字が外貨準備不足に拍車を掛ける対外的不均衡が顕在化していることです。

特に外貨準備の深刻な不足は、国際通貨基金の早急な支援が必要との声も大きくなっています。さらに国内でも経常赤字に端を発する需給不均衡のためインフレ率が上昇傾向にあります。

5.今後の戦略は?

新興国債券への投資を検討するに当たっては、当然にアメリカの金利動向や米ドルレートを考慮する必要があります。特に新興国通貨に対する米ドルレートは新興国の成長と密接な関係にあることから、特に注意が必要です。

そのような中でアメリカのイールドカーブはスティープ化しており、米ドルのレートも多方面で安定しつつあります。つまり新興国の多くは米ドルの調達についてのハードルが低くなってきたということです。

さらに多くのエコノミストの間で、現在の新興国とアメリカとの金利スプレッドが新興国の地政学リスクやアメリカの金利および為替動向の見通しを踏まえると概ね妥当かやや過剰気味であるとの声が多数ということを前提とすれば、新興国債券への投資は妙味があるものと考えられます。

例えばインドなどのように昨今続いた米ドル高に対して大きく売り込まれたと考えられる債券は魅力的です。
もっとも、新興国であれば何でも良いというわけではなく、低格付けでも経済面で対外依存度が低く合理的な政策を採っている国々に限定されます。

この点で、先述したトルコとアルゼンチンは他の新興国と比べて際立った脆弱性と不安材料があることから、ポートフォリオに加えることはお勧めできません。しかし、この2国にファンダメンタルズの正常化に向けて何らかのポジティブな材料が認められた場合は、新興国債券へのウェイトは一層高めてよいものと考えられます。

なお、昨今の中国やメキシコへの対応にもある通り、トランプ大統領の極端な対外政策は新興市場のボラティリティを高めるものということは忘れないようにしてください。

6.まとめ

以上のように、投資先さえ選別すれば現在は新興国債券への投資に良いタイミングではないかと考えています。ファンドを選ぶ際は、カントリーアロケーションとアメリカの金利・為替に対するリスク感応度などに十分に注意してください。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

<ご注意事項>

  • 当社の所属金融商品取引業者等は株式会社SBI証券、東海東京証券株式会社、エアーズシー証券株式会社です。
  • 当社は所属金融商品取引業者等の代理権は有しません。
  • 当社はいかなる名目によるかを問わず、その行う金融商品仲介業に関して、お客様から金銭および有価証券のお預かりを行いません。
  • 各商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。

[金融商品仲介業者]

商号等:株式会社ウェルス・パートナー

登録番号:関東財務局長(金仲)第810号

[所属金融商品取引業者]

商号等:株式会社SBI証券

金融商品取引業者 登録番号:関東財務局長(金商)第44号、商品先物取引業者

加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本STO協会、日本商品先物取引協会

商号等:東海東京証券株式会社

金融商品取引業者 登録番号:東海財務局長(金商)第140号

加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人日本STO協会

商号等:エアーズシー証券株式会社

金融商品取引業者 登録番号:関東財務局長(金商)第33号

加入協会:日本証券業協会

ご相談はこちらから
お名前*
お名前カナ*
メールアドレス*
電話番号*
第一希望日*
ご希望のお時間*
第二希望日*
ご希望のお時間*
面談場所*
ご相談を希望するアドバイザー
当日は代表の世古口が同席する場合がございます。
大まかな保有資産額を教えてください。*
ご年収を教えてください
当社を知ったきっかけ*
ご相談内容
利用規約*
上記でご入力いただいた内容は、当社からの連絡や情報提供などに利用するためのもので、それ以外の目的では使用いたしません。
また、その情報は、当社以外の第三者が利用することはございません。(法令などにより開示を求められた場合を除きます)
詳しくは、個人情報規約をご覧ください。
https://wealth-partner-re.com/policy/