はじめに
金利が下がると、どの国の財務省も超長期債を発行します。そして、それに影響を受けて民間企業も超長期債を発行します。
20年物長期の間、金利が固定されるため、今後金利が上昇するという見込みがあれば、今超長期債を購入するのは非常に不利なことだと言えます。
しかし、逆に考えて、今後金利が下がり続けるという予測であるならば、今こそが超長期債を買うのにベストタイミングだと言えます。
米国は、コロナの流行により大きなダメージを受けました。失業者の数が飛躍的に増加し、今後の先行きがどうなるかは誰にもわかりません。
日本のように長期にわたるデフレに落ち込む可能性も無きにしもあらずです。もし、米国にデフレが来るのであれば、今こそ債券購入のチャンスと言えます。
1.米財務省の動き
米財務省は5月20日、新型コロナウイルス対策の景気刺激策向けに資金を調達するために、1986年以来34年ぶりとなる20年債入札を実施しました。
需要の強さを示す応札倍率は、2.53倍と直近の30年債入札(2.30倍)を上回っており、金融市場では入札は「好調」と受け止められました。
財務省は、歳出拡大で今後年1兆ドル規模の財政赤字が見込まれる中、低金利環境を利用して資金調達手段を多様化する狙いがあります。今回20年物国債を200億ドル発行し、向こう3カ月で総額540億ドルを発行する予定としています。
2.超長期国債に影響を受けた社債市場の動き
こうした中、社債市場では20年物国債が発行再開されたことで、今後20年物社債の発行が増加すると予想されています。
社債の利回りは、国債などの基準となる利回り(ベンチマーク)に信用力や流動性に応じた上乗せ金利(スプレッド)を足して算出されます。
これまで20年物社債は主に残存期間が20年程度となった30年物国債をベンチマークとしていましたが、経年した30年物国債は流動性が低い銘柄も多く、価格評価が難しいという課題がありました。
そのため、企業は10年以上の長期社債の発行において、10年や30年など国債発行のある年限を優先していました。実際、過去10年間の社債発行において、20年物社債の発行額は長期社債のうち1割程度と低位に留まっているのです。
3.20年物社債は富裕層にも人気
一方、20年物社債の需要は、年金基金や海外投資家や富裕層を中心に高いとされています。
そのため、発行額が増加することで、これらの投資家を中心に20年物社債への投資が加速する可能性があります。
JPモルガンによると、年金基金は投資適格社債の発行額約11%(約7,500億ドル)を保有しており、主に10年・30年物社債へ投資していますが、負債の残存年数(約12.5年)が20年物社債のデュレーション(約13.3年)と同程度となってきているため、20年物社債への投資意欲が高まりつつあるのです。
これまで20年物社債の発行は、将来の財務状況を見据えて社債の償還負担を分散・平準化する目的で主に負債総額の極めて大きい企業に利用されてきました。
20年物国債が発行再開されたことで、従来に比べ20年物社債の発行が容易となり、発行を検討・活用する企業の裾野が広がることで、企業の財務戦略の高度化・多様化にもつながりうると考えられます。
また、20年物社債のスプレッドを決定するベンチマークが明確となり、発行社債の価格透明性や流動性が向上することで新たな投資家層を呼び込み、市場が大きく進展することも予想されます。
そこに新たな投資機会が生まれる可能性も十分考えられるため、引き続き社債市場の動向
を注視して行きたいと思います。