目次
はじめに
ETFの残高が拡大しています。世界のETFの運用残高は9兆2,100億ドル(約1,010兆円)となり、1,000兆円の大台を突破しました。この記事では、ETFの仕組みと運用残高が増えている理由について解説します。
ETF(上場投資信託)とは
ETFとは、日経平均株価やNYダウなど特定の指数に連動した運用成果をめざし、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託です。ETFは “Exchange Traded Funds”の略で、「上場投資信託」と呼ばれています。
ETFの対象となる指数は株式だけでなく、債券やコモディティ(商品)、通貨、REIT(不動産投資信託)などもあります。また、国内だけでなく海外の金融商品もあり、これまで個人では投資しにくかった国や地域に、気軽に投資できるようになりました。
ETFとインデックスファンドの違い
ETFと似ている投資信託に「インデックスファンド」があります。ETFもインデックスファンドも、特定の指数に連動する運用成果を目指す投資信託です。ただ、インデックスファンドは1日に1回算出される基準価額でしか取引できませんが、ETFは金融商品取引所に上場しているので、取引時間内なら株式と同じように値動きを見ながら売買できるというメリットがあるのです。
ETFの特徴
それでは、ETFの特徴について解説します。
少額で分散投資できる
たとえば、国内の代表的な株価指数であるTOPIX(東証株価指数)の全銘柄を購入しようとすると、数十億円のまとまった資金が必要になります。しかし、TOPIXに連動したETFを購入すれば、数万~数十万円と少額から購入可能です。
そして、TOPIXに連動したETFを購入すれば、TOPIX を構成している約2,000銘柄に分散投資しているのと同じ効果が期待できるので、リスクを抑えた運用が可能になります。
保有コストが安い
ETF には売買コストと、保有コストの2種類のコストがかかります。売買コストとは株式と同じ売買手数料のことです。ただ、最近はこの手数料が低下してきています。1日の約定代金が100万円までの手数料が無料のネット証券もあるので、少額で投資したい人の負担が軽くなり、手軽に投資できるようになりました。
そして保有コストとは、主に信託報酬です。信託報酬とは、投資信託を管理・運用してもらうための経費として、投資家が保有している間ずっと支払い続ける費用のことです。ただし、信託報酬を別途支払う必要はなく、信託財産の中から何パーセントといった形で毎日差し引かれます。ETFは通常の投資信託に比べ、信託報酬が安いというメリットもあります。
値動きがわかりやすい
ETFは日経平均株価などの指数に連動するように運用されているので、値動きがわかりやすいという特徴があります。個別銘柄のリスクを気にする必要はないので、投資初心者にも適した投資対象といえます。
いつでも取引できる
ETFは金融商品取引所に上場しているので、取引時間中ならいつでも売買できます。そして、株式と同じように成行注文や指値注文を使ってリアルタイムに取引できます。ただし、1日に何回も取引をすると、売買手数料がかかってしまう場合があるので注意が必要です。なるべく手数料の安いネット証券などを利用するようにしてください。
拡大が続くETF市場
ETF市場の拡大が続いています。イギリスの調査会社ETFGIによると、世界のETFの運用残高は5月末時点で9兆2,100億ドル(約1,010兆円)となり、初めて9兆ドルを超えました。とくに株式型ETFの人気がありますが、商品型や債券型ETF にも資金流入が続いています。
新型コロナウイルスの感染拡大によって行動規制がされていましたが、ワクチン接種が進んだことによる経済活動再開と、それに伴う物価上昇を見越して商品型ETFに物色対象が広がっているのです。また、株式型ETFには高値警戒感もあり、より安全資産とされる債券型 ETFに資金を移す動きもでています。
国内でもETFの存在感は高まっています。投資信託協会の推計によると、日本の公募株式投資信託の残高は5月末時点で約138兆円と過去最高を更新。そして、そのうち約4割にあたる約60兆円がETFになっているのです。
ETFに投資すれば、株式や債券・商品などあらゆる資産に投資でき、金融商品取引所に上場しているので、いつでも売買できるという利便性があります。また、ETFの市場が拡大してきたため、とくに世界の複数の資産を運用するグローバル投資家の支持が高いのです。
人気のあるETF
モーニングスター・ダイレクトの調べによると、2021年1~5月における世界のETFの資金流入額トップは、「バンガード・S&P500(VOO)」でした。同ETFは、米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数に連動する投資成果を目指します。
信託報酬が年率0.03%と圧倒的な低コストなことと、今年になってからS&P500種株価指数が過去最高値を更新するなど、パフォーマンスも好調なので資金流入が続いているのです。
また、同じバンガード社が運用する「バンガード・トータル・ストック・マーケット(VTI)」も人気があります。同ETF市場は、「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」に連動する投資成果を目指します。「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」は、米国株式市場に上場する約4,000銘柄を対象にした指数です。S&P500種株価指数は500銘柄が対象なので、より幅広い銘柄に分散投資できます。
これらのETFは、SBI 証券や楽天証券などで購入できます。ただし海外ETFなので、外国証券口座が必要になる点に注意が必要です。
まとめ
ETFは金融商品取引所に上場しているので取引しやすく、値動きがわかりやすいというメリットがあります。ただし、元本が保証された金融商品ではないので、必ず余裕資金で投資するようにしてください。