コロナ増税の可能性はある?現在の状況と今後の見通しは?わかりやすく解説します!

はじめに

新型コロナウイルス対策への大幅な支出を受け、国の財政は悪化しています。今後、景気が悪化して法人税や所得税の減少が見込まれる中、東日本大震災の時の「復興特別税」のような増税はあるのでしょうか。現在の状況や今後の見通しについて解説します。

2019年度の税収は減少

財務省が発表した2019年度の国の一般会計税収は、前年度から1.9兆円減の58兆4,415億円となりました。新型コロナウイルス収束のメドが立たないので、経済の回復が見通せない中、今年度の税収はさらなる大幅な落ち込みが確実な状況です。

前年より税収が減るのは3年ぶり。2018年度は60兆3,564億円でバブル期を越え、28年ぶりの過去最高を更新していました。

政府は2019年度の税収について、当初消費税増税などの効果を見込み、過去最高の62.5兆円と見積もっていました。

しかし、昨年末に米中貿易摩擦による経済環境の悪化を織り込み60.2兆円に修正。

新型コロナウイルスの影響で、今年はさらに1.7兆円下振れした形になったのです。企業の資金繰りを支援するため、事業者の納税を1年間猶予する措置を取っている影響も出ました。

財政悪化でも国の危機感はない

新型コロナウイルス対策による大幅な支出を受け、国の財政も大幅に悪化しています。「100年に1度」ともいわれる経済危機への対応で積極的な財政出動は必要ですが、政府の財政危機への欠如も見られます。日本国債の格付け見通しを下げる動きも出てきており、新型コロナウイルス収束後の財政健全化へのハードルは一段と高くなっているのです。

2020年度の一般会計歳出は、1次補正で25.7兆円、2次補正で31.9兆円が加わったことで、160.3兆円まで積み上がりました。当初の予算102.7兆円から大きく跳ね上がったことで、これまで減少傾向だった国のPB(基礎的財政収支)の赤字額は、9.2兆円から66.1兆円まで急拡大しています。

政府は国と地方あわせ2025年度に基礎的財政収支を黒字化する見通しですが、現実的にはほぼ可能だと見られているのです。

2020年度の税収も大幅下方修正か

2019年度の税収(2019年4月~2020年3月)の場合、新型コロナウイルスの影響が出ているのは2月以降の2ヶ月程度に過ぎません。深刻になるのは2020年度以降の税収です。政府は2020年度の税収について、過去最高の63兆5,130億円を見込んでいますが、大幅な下方修正は避けられないでしょう。法人税や所得税が大幅に減る恐れがあるからです。

今年度の歳出総額は、巨額な補正予算を組んだことで、すでに過去最大の160兆円超に上っており、90.2兆円の国債を新たに発行して賄います。ただ、今後も新型コロナウイルスの影響で経済が停滞して税収への悪影響が強まれば、借金に依存した財政運営に拍車がかかることは間違いないでしょう。

コロナ増税の可能性

大幅な税収減が見込まれる中、今後は増税により国民が返済する必要も出てくるかもしれません。東日本大震災のときも「復興特別税」があったからです。

復興特別税は、震災後に所得税が2.1パーセント上乗せされ、その期間は25年間。住民税も1,000円上乗せで10年間。法人税は10%上乗せで2年間。これらの増税で総額10.5兆円の税収増になりました。

今回の新型コロナウイルスによる予算規模は60兆円ほどなので、さらに大規模な増税になる可能性があります。現在も東日本大震災の復興税の支払いが続いている中、「コロナ増税」が上積みされる可能性もあるのです。

震災復興税の時は低所得者に課税されなかったので、コロナ増税ができたとしても同じような措置が取られる可能性はあります。ただし世帯年収が700~1000万円ぐらいの中所得層には相当の負担になる可能性があります。

2020年から年収850万円超の会社員は所得税が増税になりました。給料に対して適用される給与所得控除が縮小されたからです。さらに2021年には、年収850万円超の会社員は住民税も増税になります。

このように中所得者層の税負担が増す中、コロナ復興税が加算されると、消費などに大きな影響がでてくることでしょう。

東日本大震災と新型コロナウイルスの違い

ただし、新型コロナウイルスは東日本大震災の時と状況が異なるともいえます。震災復興税は「東北地方応援する」という大義名分があったので、国民の支持を得られやすいという背景がありました。

しかし新型コロナウイルスは、日本全国に感染が拡大して全国民が被害を受ける中、増税といわれてもなかなか受け入れられないのではないでしょうか。新型コロナウイルス対策は自分たちの納める税金が原資ともいえ、それを返済する必要があるのかという疑問が出てくるからです。

根本的な見直しを迫られるアベノミクス

新型コロナウイルスの感染拡大を抑えながら経済を回復させ、財政を持続可能な状況に戻していくことが政府の大きな役割になります。ただ2019年度のGDP(国内総生産)に対する債務残高の割合は237.4パーセント。

米国の109%やドイツの59.8%などを大きく上回り、先進国の中では最悪の水準です。コロナ禍の前から財政悪化が続く日本にとって、財政出動の余地は限られているのです。日本の国債残高は2020年度末に964兆円になる見込みで、1,000兆円の大台が迫っています。

米国格付け大手のS&Pグローバル・レーティングは、6月9日に日本国債の格付け見通しを下方修正しました。現在は、日銀が買い入れしているので国債価格の急落を免れていますが、国債の信認低下を懸念する声が大きくなっています。

経済成長による税収増で財政再建を進めるという掛け声により、財政健全化を後回しにしたアベノミクスも根本的な見直しを迫られているのです。

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