アフターコロナのオフィス不要論についてわかりやすく解説します!

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務が急速に広まりつつあります。

今や米国では約半数のオフィスワーカーが在宅勤務をしている状況であり、Twitter社では従業員に永久に在宅勤務を認める方針を示したほか、FacebookやGoogleなどの大手テクノロジー企業も、年内までは希望する従業員に在宅勤務を認めるなど、在宅勤務長期化の動きが拡大しています。

こうした状況を踏まえ、今後オフィスニーズは急速に縮小するのではないかという「オフィス不要論」がメディアでもにわかに表出してきています。本稿では、今後のオフィス需要を決定するポイントを示し、今後の米国オフィスマーケット需要について考察してみたいと思います。

1.週5日・フルタイムの在宅勤務より、週1~2日程度の部分的な在宅勤務が浸透

メットライフ・インベストメントが発行したレポート内で紹介されている論文によると、在宅勤務をする従業員間の人間関係について、週1~2日で在宅勤務をするそれぞれの従業員間では等しく良好になった一方で、週2日超の在宅勤務では関係が希薄になりました。

また同レポート内の別の論文によれば、部分的な在宅勤務は従業員の仕事における満足度とパフォーマンスを向上させる一方で、週5日のフルタイムでの在宅勤務は生産性を低下させるという研究結果もあります。

加えて、今月に調査会社が実施した今後の働き方に関するアンケート結果では、週5日・フルタイムでの在宅勤務を希望する人が10%未満だったのに対し、部分的に在宅勤務をした上で、残りは出社する働き方を希望すると答えた人が50%程度となり、一部在宅勤務を希望する人の割合が多くみられました。

これらの研究結果や意見がすべてではありませんが、上記に鑑みれば、米国においては週1~2日在宅勤務を行い、残りはオフィスに出社するというのがアフターコロナにおける米国のオフィスワーカーにとっての心地良い水準になるのではないかと考えます。

2.ソーシャルディスタンスを確保するためオフィスレイアウトが採用され、必要面積は拡大

企業のBCP対策として、新型コロナウイルスの感染再拡大や、新たなパンデミックの発生可能性に警戒せざるを得ない昨今の状況では、従業員に安全な労働環境を確保するために企業は様々な準備をする必要があります。

そうした中、米不動産サービス会社がアフターコロナの安全な職場環境作りの指標となる「6フィート・オフィス」という概念を提唱し、従業員の職場復帰に向けた企業の支援を実施しています。

こうした動きは、従業員の安全を確保する環境整備という意味で、ESG取組の一環にもなり、また良好なオフィス環境整備によって採用競争力の向上にもつながると考えられるため、今後徐々に拡大していくと考えられます。

3.オフィステナントニーズの変化:郊外オフィスの人気が高まる可能性

新型コロナウイルス感染拡大前の状況と比較して、通勤方法が変化することが考えられます。電車・バスなどの公共交通機関の利用を避け、週に数回、車で出勤するのが好まれる環境になると、わざわざ高い賃料を払って都心部の高層ビルに入居し続けるよりは、相対的にコストが安く、広い面積が確保できることからソーシャルディスタンス確保の対応もしやすい郊外のオフィスに需要が一定シフトする可能性もあります。

ただしこの見方には、9・11の米同時多発テロ後にNYで郊外オフィスの需要が高まった後、数年後に再び都心部への需要回帰が起こったことを引き合いに、郊外オフィスの中長期的な需要シフトには懐疑的な意見もあります。

上記を踏まえると、第1パラグラフの需要減少に対し、第2パラグラフの需要増加効果で一定相殺されることから、今後の米国オフィス需要が急激になくなるということは考えづらいといえます。

一方で、深刻な経済状況も相まって直近でのオフィス需要の不確実性は非常に高く、短期的には賃料・空室率・取引価格を決めるキャップレートなどのファンドメンタルズは悪化すると考えられます。

ただし、中長期的には機能性の高いオフィスニーズの高まりやリアルなコミュニケーションの重要性の再認識、経済の回復等を通じて実需が戻ってくる可能性が高いと考えられます。

日本でも、米国と同じような動きが起きるでしょう。したがって、現在が底だと思われる不動産リートを購入することも、資産運用の一環として検討に値すると言えるでしょう。

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