目次
はじめに
相続トラブルを防止する目的や、被相続人の望む遺産分割を実現するための方法としてよく使われるのが「遺言書」です。
遺産となる自分の財産の処分や分割をあらかじめ遺言書にしたためておくことは、確かに相続トラブル対策として有効な方法になります。
しかし、遺言書を作成するときに4つのポイントに注意しておかないと、遺言書が新たな相続トラブルの火種になってしまう可能性があるのです。
遺言書をトラブルの火種にしないために知っておきたい「富裕層が遺言書を作成するときの注意点」をご紹介します。
遺言書による相続対策とは
相続対策には、生命保険金を一時所得として受け取る方法や不動産処分、生前贈与などいろいろな方法があります。
遺言書も相続対策のひとつです。
遺言書でできるのは、「遺産の分割について指定すること」など。
遺言書を上手く活用することで、相続人間の揉め事を防ぐことができるのです。
遺言書を作成するときに注意すべきポイント
遺言書さえ作成すれば、相続トラブルをゼロにできるわけではありません。
相続で揉める可能性を低くするためにも、制作する側もポイントを理解して注意する必要があるのです。
富裕層が遺言書を作成するときに注意したいポイントは4つあります。
ポイント①遺言書の種類を慎重に選ぶ
遺言書には「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などの種類があります。
自筆証書遺言は自分で作成できるため費用をおさえることができる点がメリットです。
ですが、相続のときに「本当に本人が作成したのか」「偽造や変造があるのでは」などのトラブルに発展する可能性が高いというデメリットがあります。
公正証書遺言や秘密証書遺言は公証役場で作成するため、自筆証書遺言より偽造や変造を疑われるリスクの低い遺言書です。
遺言書を作成するときは、それぞれの遺言書の特性を理解して、適切な種類の遺言書を選ぶことが重要になります。
ポイント②遺言書は法律で要件が定められている
遺言書は本人の死後に意味を持つため、法律で厳格に作成時の要件が定められています。
亡くなった本人に「本当に意思に沿って作成したのか」「この記載の意図は何か」など、確認することができないからです。
たとえば自筆証書遺言の場合は、自書や日付の記載、押印などが要件になります。
公正証書遺言や秘密証書遺言などは、証人が必要です。
このように、遺言書の種類ごとにルールがあるため、遺言書の種類ごとのルールに則って作成する必要があります。
要件を満たしていない自筆証書遺言書などは無効です。
せっかくの相続対策が無意味になります。
ポイント③記載しても法的効力のない内容もある
遺言書に記載した事柄はすべて法的な効力を帯びると思うかもしれません。
それは違います。
中には、遺言書に書いても法的効力のない内容もあるのです。
法的効力のない代表的な内容は「葬儀」などになります。
葬儀について自分の希望を書いておくと法的効力で「希望通りの葬儀ができる」と思うかもしれません。
葬儀は遺言書の法定遺言事項ではないため、遺言書の法的効力で相続人に強制できません。
法的効力のない内容ばかり書いてしまうと、遺言書自体の作成が無意味になってしまう可能性があります。
ポイント④伝えたいことは「付言事項」でまとめる
法的効力がないからといって遺言書に書いてはいけないわけではありません。
遺言書に記載して法的効力のない内容は、「付言事項」としてまとめる方法があります。
付言事項とは、法定遺言事項以外の記載(法的効果のない記載)のことです。
葬儀のことやお墓のこと、家族へのメッセージ、どうしても伝えておきたいことなどを記載します。
相続対策として遺産分割などは、遺言書内でしっかり行う。
加えて、法的な効果のない記載も付言事項としてまとめておくといいでしょう。
「伝えたいことを伝えること」と「相続対策」を遺言書内で両立できます。
まとめ
富裕層が相続対策としてよく使う方法が「遺言書」です。
遺言書は遺産の分割を指定するなど、上手く活用することで相続トラブルの防止が可能になります。
しかし、遺言書は作成さえすれば相続トラブル対策になるわけではありません。
場合によっては、遺言書が新たなトラブルの火種になる可能性があるのです。
有効な相続対策をするためにも、ポイントに注意して遺言書を作成しましょう。