2020
02/07
経済・マーケット

はじめに

総務省のデータによると現在の日本の人口は約1億2600万人(2019年12月1日現在)ですが、総人口は2048年までに1億人を割ると推計されており、また2060年までに8474万人まで減少すると言われています。

そこでもし、AI(人工知能)が人間の労働を代替することができればどうでしょうか?

日本における人口減少、とりわけ生産年齢人口減少に伴う国民所得の減少を補うことができるかもしれません。

また、総務省の報告では「日本ではAIや機械が代替することができる技術的な可能性が高い職業が49%である」と指摘されています。

つまり、テクノロジーの進展は日本経済の衰退を補うことができかもしれないのです。

しかし、世界では人口が増加しており今後30年で20億人の増加が見込まれています。

総務省の報告では、「米国では就労者の47%がAIや機械が代替できる可能性の高い職業に従事している」と指摘されました。

つまり、日本でも米国でも現在ある仕事の約50%がAIに代替される可能性があるということになり、EU議会や世界中の大学などで「雇用の喪失」と「所得格差拡大」が懸念されています。

最近では、「AIに課税すべきだ」とする「ロボット税」の導入が議論されており賛否両論に分かれています。

そこで今回は「ロボット税とは何か」や「賛成意見」、「反対意見」をご説明していきます。

ロボット税とは何か

現在議論されているロボット税は大きく2つあります。

1つ目は、所得税の概念としてのロボット税です。

従来、企業は従業員を雇用してきました。しかし、ロボットの導入で約50%の労働者が失業し、今まで彼らが支払ってきた所得税が徴収できなくなるとすると、税制(所得格差是正)が機能しません。

そこで、本来雇用された労働者が支払うはずであった所得税をロボットにも同様に課税し、企業が支払うと、これまで通り所得税が徴収できます。

これがロボット税です。

失業した多くの人は所得がなくなり生活できません。そこで、ベーシックインカム(生活保護のような制度)によりAIの進展で失業した人に税金で所得移転し支えようという考え方も出てきています。

「ロボットにより失業した人を、ロボットが支える」という税制の基本的な考え方に一致した非常に有用な制度と考えられます・

ちなみに、このロボット税についてはMicrosoft創業者ビル・ゲイツ氏も「ロボットにも所得税を課すべき」とコメントしています。

2つ目は、ロボットへの設備投資の税制優遇措置引き締めです。

現在、主要国の多くは企業に生産性を高めてもらうために、社内の設備投資について税制上の優遇措置を設けています。

そこで、ロボットの導入にあたって上のように直接的に所得税のような税金の徴収ではなく、ロボット導入により控除された企業側の税金を徴収するという考え方になっています。

上のロボット税と結果的には変わらず、「設備投資における節税枠の縮小」といった形を変えた課税法になっています。

ちなみに、韓国では2017年8月に世界初のロボット税導入が発表されました。

この韓国の取り組みは「設備投資の税制優遇措置引き締め」という課税方法で対処されています。

ロボット税における賛否両論

ロボット税は賛否両論で意見が大きく分かれます。
賛成派は「所得格差是正」、反対派は「テクノロジー発展の抑制」という意見が主な主張になっています。

以下では、賛成意見と反対意見の例を見ていきます。

・賛成意見
EU議会の法務議員が2016年5月に「所得税という意味でのロボット税を導入すべき」という案をEU議会に提出しました。

また、上記で上げたようにビル・ゲイツ氏もロボット税に賛成しており、「シラーPER」を考案した著名な経済学者であるロバート・シラー教授もロボット税に賛成しています。

英サリー大学のライアン・アボット教授も、もし、ロボットに税金を課さないのなら、従来の雇用や法人税の圧縮など、企業に対して過度な優遇をしていることになると指摘しています。

また、MITテクノロジーレビューは、ロボット税は決して過激なものではなく、今までの所得税が「人から機械へ」と徴収先が変わっただけであるとしています。

・反対意見
一方で、ハーバード大学のローレンス・サマーズ元学長はロボット税の導入は「全くの見当違い」だと反論しています。

またEU議会もロボット税に関する草案には否定的な対応をしています。

やはり、反対意見としてはテクノロジーの進展が遅れるというものが多く、賛成意見とは論点が違うため議論が進んでいないという現状があります。

まとめ

いかがだったでしょうか?

日本は世界トップレベルの高齢社会となりつつあります。生産年齢人口だけでなく総人口も減少し、それらの根本的な原因に実質賃金の減少が挙げられるでしょう。

そこで日本では、ロボットがより多く導入されることで国民所得の改善が期待され、人口の改善も同時に期待されるでしょう。

しかし、世界的には「雇用の喪失」と「所得格差拡大」が懸念され、後者の改善策としてロボット税の導入が検討されています。

ロボットの進展は私たちの労働環境に密接に関係してきます。

今後も、ロボット税に関する議論は注目です。

参考
総務省 ロボットの代替 P247
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/n4300000.pdf

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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