【経営者インタビュー NO.2】日本の電子産業を支える基幹部品の低コスト化を実現したプラットフォーム〜株式会社ピーバンドットコム 代表取締役 田坂正樹氏〜

プリント基板のインターネット通信販売サイト「P板.com(ピーバンドットコム)」を運営し、国内シェアNo.1を誇る株式会社ピーバンドットコム。

電子機器の製造に欠かせない基幹部品であるプリント基板をネット販売するプラットフォームを事業化したパイオニアです。2万2,000社を超す取引実績をもち、2017年に東証マザーズ上場、2018年度売上高21億円超と成長を続けています。

同社を創業した田坂正樹氏に、ウェルス・パートナー代表・世古口俊介がお話を伺いました。

プリント基板の通販サイト・シェアNo.1「P板.com」を運営

世古口俊介(以下、世古口) 本日はお時間をいただき、ありがとうございます。早速ですが、御社の事業内容からお聞きできますか?

田坂正樹氏(以下、田坂) ハードウェア製造事業者に向けて、ものづくりのためのアイディアをはじめ開発に役立つ情報やノウハウの提供など部品設計周りのサービスを提供しています。

その中のメイン事業が、社名にもなっているネット通販サイト「P板.com(ピーバンドットコム)」の運営です。P板というのは「プリント基板」のこと。ネット通販では当社が一番のシェアを占めています。

プリント基板は、あらゆるハードウェアに基幹部品として組み込まれていて、電子機器の製造においては欠かせないものです。

当社が国内外30社以上の協力工場と提携し、サイト上で顧客が求める仕様や枚数などを入力すると価格・納期が最適となる工場の見積もりが自動で表示され、その場で発注できるようになっています。当社が運営するサイトをプラットフォームとして、インターネット上でプリント基板の受発注が完結できるという仕組みです。

ネット上で顧客から設計図を送ってもらい、最短で発注から実働1日で出荷できます。また、当社のサイトでは最小でプリント基板1枚から受注可能です。

世古口 製造のための自社工場をもたないファブレス型メーカーですね。顧客としては、どのような層が多いのでしょうか?

田坂 顧客の多くは、ソニー(敬称略。以下同様)やパナソニックのような大企業から小型人工衛星を開発しているアクセルスペースのような中小のメーカーまで、新製品を開発している企業です。

開発中の試作段階で、数十台、数百台という単位で試作のための小ロット生産を行う際にご利用いただいています。これが顧客の7割ほど。

このほかに多いのは、小ロットが適した製品の量産です。例えば、補聴器のような医療関連機器は1,000個程度の単位で製造されるものが多く、そういった製品の中に入っている部品が、小ロットの製品として当社サイトを介して生産されています。

最近では、車両の自動運転、電気自動車、ロボティクス、宇宙系、IoTといった分野での引き合いが増えてきていて、今後の伸びが期待できます。その他、理系大学のロボット工学研究室、理化学研究所、政府の研究機関なども顧客の一部です。

電子産業は今後もネットへの切り替えが期待できる

世古口 田坂さんの「人となり」も知ることができればと思うのですが、学生時代や起業前のお仕事についてお話いただけますか?

田坂 新設されたばかりの大学で、起業家の育成を目的としたようなカリキュラムの学科に進学したので、学生時代から「将来起業を考えている」とか「親の会社を継ぐ予定」といった志の高い人間に囲まれていました。

当時から自分も起業を視野に入れていましたが、新卒で入社した会社が高給で仕事もキツくないという優良企業だったため、出遅れました(笑)

もとは法人向けの通信販売の会社なのですが、当時さまざまな新規事業の立ち上げに取り組んでいて、起業家募集というかたちでの採用枠だったので、新規事業の立ち上げが自分の仕事でした。その中の1つが半導体部品の通販で、プリント基板のネット通販の構想はこの当時に考えたものです。

当時の通販は紙のカタログでしたが、新規にネット通販の事業を立ち上げることになり、その仕事を経験させてもらったあと、27歳のときに退社しました。

世古口 私は証券会社で働いていて、「このままここにいたら自分が成長しない」と思って会社を辞めたので、起業のきっかけは似ているところがあります。そのあとはどうされたのですか?

田坂 その頃はネットバブル後期で、2年間くらい、取締役の肩書きをもらって大学の友人たちの起業とかウェブサービスの新規立ち上げとかの手伝いをしていましたね。

そんな折、ちょうど古巣の会社が新規事業への取り組みから方向転換を図ることになり、プリント基板のネット通販事業も手つかずになっていると聞いて。そのときには執行役員になっていた元上司から、「自由にしていい」とのお墨付きをもらったので、この事業を基盤として起業しました。

その後、生産プロセスで小ロットのものをつくるときにコストを約5分の1にできるような製造工程を開発。それによって、初期費用をおさえて製造コストを飛躍的に軽減できる仕組みを提供しています。

新しい会社なので顧客開拓は一からのスタートでしたが、取引会社は15年間で累計1万7,000社を超えました。2017年に上場会社となってから、取引会社はさらに4,000社ほど増え、1社ごとの注文量も大幅に増加しつつあります。

世古口 上場されたことで企業としての信用力が上がったのですね。投資家の方に御社の魅力を端的に伝えるとしたら、どのようなことが挙げられますか?

田坂 そうですね。私がよくお話するのは、ハードウェア部品のイメージというか、日本の電気・電子機器産業って斜陽化しつつあるように感じられるのではないかと思うのですが、そうは言っても、現状で1兆円を超える市場規模があるんですね。

それでいて、インターネットが発達する以前のように対面販売の営業でモノが売れていた時代の名残があって、ネットへのリプレイスがあまり進んでいない業界なんです。

実際に、国内でプリント基板製造を行なっている他社メーカーのうち上場している会社は当社のようなビジネスモデルをとっていません。同様のビジネスモデルでプリント基板のネット販売をしている会社はありますが、その中で上場しているのは、現時点では当社一社だけです。

ネットを介して顧客を獲得している当社の売上がいま20億円として、それはマーケット全体でいえば1%にも満たない額。ネットへの切り替えがあっという間に進んだ他業界のことを考えれば、1%が10%になり、数百億円の売上げになることは十分に想定できます。

先行している当社なら、単純にネット化するだけでなく、AIをツールとして利用するなどネットだからこそできるイノベーションを付加価値として提供していくことが可能です。ひいては、それが今後の日本の電子産業の発展にもつながっていけば、と思っています。

ハードウェアの製造工程にイノベーションを起こしたい

世古口 当社ウェブサイトが資産運用に関するメディアということから、こうした対談やインタビューでは、お金に関する話も聞いていきたいと思っています。田坂さんご自身は、どういったものにお金や時間を使っていますか?

田坂 基本的には社交のための交際費ですね。経営者の仲間とか、そういう人たちとの交流のために使います。時間も、仕事が終わったあとは社交に費やすことが多いです。

経営者同士の交流って、会社の中で経営者にしかできない。自分にしかできないことなので、それこそ自分の仕事と思ってやっています。

お金や時間を投資して一番リターンが大きいのは、自分もしくは自分の事業に投資して成功することですよね。自分が働けなくなったら、他のものに投資したほうが効率的かもしれないけれど。

そう考えると、若い人はとりあえず起業してみてもいいんじゃないでしょうか。出だしは、“とりあえず”でもいいから、トライ&エラーをくり返してチューニングしながら自分のビジネスモデルを構築していけば。動けるうちは、自分に投資するのが一番だと思います。

世古口 最後に、今後の事業展開について、お考えを聞かせてください。インサイダーに当たらない範囲でお願いします!

田坂 当社は、プリント基板の発注から納品までをインターネットで完結するワンストップサービスを提供してきました。上場したことによって一段ブレイクスルーが訪れたように、今後もさらに同事業での顧客層の深掘りを続けていきます。

同時に、これまでサイト上で実現してきた製造工程に加えて、その前後のサービスを少しずつネットに落とし込んでいくことを考えています。

例えば、新たに置き換えた前後の工程の部分にAIを使って、これまで3時間かかっていた工程を数秒で完了できるような機能を実装することができれば、製造プロセスを劇的に変えるサービスとなるでしょう。

昨年、当社システムへの投資としてAI関連のスイス企業に出資したのですが、そういった新しいサービスの提供につながる業務提携および資本提供、必要ならM&Aもやっていく考えです。また、コンテストなどを通じて実用性や商品性の高いアイディアの具現化をサポートする、当社のものづくりプログラム「GUGEN」にも面白いアイディアが集積されています。

プリント基板とか電気機器といった産業にこだわらず、ハードウェアをつくるプロセスにどんどんイノベーションを起こしていきたいですね。

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