2019
09/05
経済・マーケット

はじめに

2016年、アメリカ大統領選の真っ最中、トランプ大統領は「Make America Great Again」を公約に、アメリカファースト(アメリカ第一主義)を掲げ米中貿易不均衡に警鐘を鳴らし続けました。

これは先のオバマ政権による対中政策の見直しを図るもので、アメリカばかりが損をしている、また移民問題も含め、アメリカ国民の仕事が奪われている、アメリカの富が中国をはじめとした各国に喰い物にされているではないか!というものでした。

こうして、2期8年のオバマ政権によって改善されたとは言い難いアメリカ経済に不満をもっていたアメリカ国内の保守層の不満が爆発した形となって、政治経験の無い大統領の誕生というアメリカ史上類を見ないトランプ大統領が誕生しました。

トランプ政権の対中戦略

大統領選時から対中政策に強硬姿勢をもって臨むと宣言していたトランプ大統領は、当選後2017年から本格的な交渉に乗り出し、交渉の主たる中身として、中国国内に投資する外資の技術移転を強要し、その技術をもって中国製品を輸出して利益を得ているのは、不当だとして翌2018年から本格的な対中関税の実施を行い始めました。

2018〜2019年、トランプ政権が行った対中関税総額は、中国から輸入される品目のほぼ全てにわたり、総額約25兆円(2,500億ドル)に上ります。
当然ですが中国も対米輸入品に対抗措置として関税をかけていますが、その金額は総額でもアメリカの対中関税対象額の2割にも届きません。

また、今回のアメリカによる対中経済制裁の主因にあげられるのが、HUAWEIとZTEの通信機器に関する情報漏洩等の懸念から、アメリカでの両社製品の禁輸措置です。

両社は新しい5G技術の先頭を走る企業でもありますが、中央省庁や軍部での使用に際し、重大な情報漏洩の懸念があるとしていて、その点については日本政府も民間企業の取り扱いを除き、排除すると同調しました。

逆に、次世代5G技術に中国企業への依存度を高めるしかない欧米諸国では判断が分かれています。

2018年末には、アメリカ製品の輸入量を120兆円規模に増額すると中国政府が表明したりもしましたが、中国政府との信頼関係は損なわれているとしているアメリカ政府は聞き入れようとしていません。

ついに、アメリカによる対中関税は第4段階を迎え、対象品目の輸入総額は一気に30兆円(3,000億ドル)増え、55兆円(5,500億ドル)規模にまで膨れ上がります。中国に生産を依存している米ハイテク企業は猛反発しており、Appleをはじめとした企業が反対意思を表明しています。

日本への影響

20年以上にわたるデフレ不況に苦しむ日本は、最近のアメリカの好景気、インバウンド効果、日銀の金融緩和等により、求人倍率、失業率、高卒大卒の就職率共に好調に転じました。

内需も好調で、設備投資も進む中で、中国からの原材料輸入額も上昇傾向です。

また、日韓の緊張感が増したことによる韓国製の半導体製品の生産量の落ち込みと、中国国内での半導体製品の製品輸出の落ち込みを見越したアメリカの半導体メーカーは、基幹技術の高さと信頼性から、日本国内に製造拠点を移す動きが出ています。

さらに日本政府は、ほぼ世界一の埋蔵量(16,000トン以上)を誇る日本のZEE(排他的経済水域)内のレアアース生産の本格運用に向けて、2022年を目処に開発を進めていて、中国依存の状況を打破したいと考えています。

日本近海のレアアースの莫大な埋蔵量(世界全体の数百年分)開発について、世界的なレアアースの市場に影響を与えるものとの危機感を示す中国政府は、日本との共同開発を行いたい意向も見え隠れしていて、揺さぶりをかけたい思惑がありますが、それ自体がすなわち、米中貿易摩擦に足を引っ張られる形の中国国内の経済状況が低迷状況にあることを示しています。

また次世代5G通信回線の普及について、アメリカが行なっているZTEとHUAWEIへの制裁措置を受け、5G回線網の普及で遅れをとる日本企業は、米中交渉の行方を見据えながらの様相になっています。

本質的には、これら制裁対象になっている中国製品の取り扱いを行わなければ、アメリカからの制裁対象とはならないため、日中間の貿易に大きな影響は無いものとみられますが、仮に米中交渉が暗礁に乗り上げた場合、中国がWTOへの提訴等の強硬策に踏み切ると、アメリカは金融取引等に独自制裁を加える可能性があります。

これは最悪のシナリオと考えていいものですが、今のところアメリカは譲歩の気配を見せていません。中国系金融機関への制裁、人民元取引への制裁に踏み切った場合、中国との取引に制約が加えられ、日本の金融機関は米ドル決済自体が制裁対象となるため中国市場からの撤退も予想されます。

そうなれば、中国国内に投資している日本企業への打撃は計り知れないと言えるでしょう。

最後に

米中貿易摩擦を懸念した為替市場と米株式市場の動向はそのまま日本市場にも影響を与えており、アメリカによる対中制裁対象品目を発表した第4弾の発表を受け円高、株安に市場が振れています。これらも予断を許さないと見るべきでしょう。
現在、ボールは中国に投げられた状況にあるため、中国の出方を市場は注視しています。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者3万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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