2019
07/29
経済・マーケット

はじめに

2013年4月から始まった黒田日銀によるインフレ率2%を目指す量的・質的
金融緩和は2016年2月にマイナス金利を導入しました。

マイナス金利とは短期金利をマイナスにしてデフレによる企業側の資金の調達コストの高止まりを緩和させるもので、要するに市中にマネーを供給する政策です。

民間に大量のマネーが流れると当然インフレが起こり日銀のインフレターゲットを達成できるのです。

しかし、結論として7年たった今でも目標は不達で、さらにマイナス金利により長期金利が低下しマイナスに転じたことから、民間の銀行(特に地方銀行)は本来のビジネスモデルである利ザヤが縮小し、それを支えるために有価証券の運用を行ってきましたがとうとう大きな含み損が発生し、かなりの収益減に見舞われています。

今では、このような地方銀行の長期的な収益減が「日本経済が復活できない原因の1つになっている」とまで言われています。

本記事では、地方銀行の現状と課題について説明していきます。

地方銀行の現状

地方銀行の経営環境悪化は2019年3月期の決算で明らかになりました。
なんと上場地銀78行の約7割が最終減益となっていいたのです。

その理由は、マイナス金利だけではなく地方の若者離れや少子高齢化によって収益減が加速しているのです。

そんな中、地方銀行は有価証券運用益を伸ばそうと試みていますが、青森県・みちのく銀行の有価証券含み損は2019年3月期に21億円あり、福島銀行も15億円となっています。

つまり、地方銀行の現状は本来のビジネスモデルである利ザヤで収益を減らしているだけでなく、国債などの有価証券でも収益減になっているのです。

具体的な地銀の対応

次に具体的な地銀の収益減遺体する対応をご紹介していきます。

埼玉りそな銀行は、法人ソリューション、個人向け資産形成サポートと手数料収入および貸し出しを強化する方針です。

コンコルディアFGは、デジタル技術で業務を3割削減し、3分の1の店舗の統合や軽量化を進める方針です。

七十七銀行は、コンサル営業で手数料収入に結びつける方針です。

十六銀行は金利以外の収益源を増やしていく方針で、6月に証券子会社「十六TT証券」を開業する予定です。

広島銀行は本業の融資に関連したコンサルタント業務や人材あっせん業で手数料ビジネスを拡大する方針です。

このように相次ぐ地方銀行の収益悪化により、多くの地銀はデジタル化による業務の効率化や、店舗の統廃合によるコストの圧縮、手数料ビジネスなど従来の銀行業務とは一変したビジネスへの転換を試みています。

実際、「フィンクロス・パートナーシップ」と呼ばれる群馬銀行などの地銀7行による連携協定では、人工知能(AI)を使って行内のデジタル文書を検索できるシステムを共同出資で開発しています。

地方銀行の課題

利ざやの縮小

地方銀行の場合、利ザヤは業務利益に対して85%もあり、都市銀行では64%しかありません。

つまり、マイナス金利による収益減は都市銀行よりも地方銀行の方が問題になっていて、利ザヤ収入への対処が地銀の喫緊の課題になるでしょう。

資産運用の強化

地方銀行は利ザヤが縮小する一方で、メガバンクのような海外債券や株式といったようなリスク資産への投資が不得意な一面があります。

今や日本国債は量的金融緩和により流動性が大きく低下していて、地銀でさえも有価証券構成比率の1割超が株式となっている現状があります。

しかし、上述しましたが福島銀行やみちのく銀行のような多額の含み損を抱える企業もいて、これまで資産運用のスキルを持った人材を育成・採用してこなかったことによる影響が出始めています。

銀行株低迷

地銀は一連の利ザヤ縮小の中、何とか利益を確保しようと有価証券の利益を確定してそれを配当に回していた傾向が強かったです。
しかし、これにも限界があり2021年までに国内銀行の過半数が使い果たすだろうという日銀のシミュレーションも出ています。

銀行株は1973年以降初めて配当利回りが4%を上回り、配当額が高いというよりは株価がかなり低迷していることを示しています。

フィンテックの台頭

近年、金融とITが融合した“フィンテック”が台頭してきたことにより銀行業務が取って代わられているという現状があります。

その対応から三菱UFJ銀行やみずほ銀行ではより高速でコストのかからない国際決済のシステムを作ろうと2016年からブロックチェーンの開発をスタートさせました。

地方銀行はそう言ったことに対応できるかと言ったら、大きな疑問が残りますが地方創生を担っている地銀を必要としている人は必ずいるのでその期待に応えるべく対応を頑張ってほしいところです。

最後に

マイナス金利というビジネス環境の中、地方銀行は都市銀行よりも収益の低下を懸念しています。それに伴って地方の人口減少や少子高齢化、地方銀行の人材育成の遅れ、フィンテックの台頭による地方銀行の存在意義の揺らぎが起こりました。

メガバンクでは実現できない地方創生を担っている地方銀行ですが、早期の対応を実現してほしいところです。

本記事の著者

世古口俊介
世古口俊介 代表取締役
プロフィール
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者14万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
当社での役割
超富裕層顧客の資産配分と税務の最適化提案。
特に上場会社創業者の複雑な相続対策や優良未上場企業の組織再編に注力。
同社の代表として書籍の出版や日本経済新聞、週刊東洋経済、ZUUonlineなど各種メディアへの寄稿、投資教育普及のために子供向けの投資ワークショップなどを開催。

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