目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「相続した6億円をどう運用する? 富裕層の資産運用事例|金融資産中心の考え方」です。
当社に資産運用のご相談をいただく富裕層の方のうち、約半分は「金融資産と不動産などの実物資産をバランスよく保有したい」というご要望をお持ちで、一方、残り半分は「実物資産には投資せず、金融資産のみで運用したい」というニーズをお持ちの傾向があるように思います。どちらが良い・悪いということではなく、ご相談者によってニーズは大きく二分される傾向にあります。
実物不動産への投資には、借入の実施や物件管理の手間が生じます。そのため、金融資産と比較して管理の手間が増える点や、借入に伴うリスクの高さを負担に感じる方もいらっしゃいます。特に、相続によってまとまった資産を承継したものの、これまで本格的な運用経験がなかった方の場合、そうした手間やリスクを避け、金融資産への投資を選択する割合が高くなるようです。
そこで今回は、運用経験が少なく「金融資産のみで運用したい」という明確なご要望をお持ちの相続富裕層の方に向け、実際に6億円の資産運用をお手伝いした実例をご紹介します。
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。
【ご相談実例】
まずはご相談者の基本情報と当初の資産状況、ご要望を見ていきます。
資産配分(当初)

ご相談者の基本情報
40代前半の女性で、家族構成は配偶者と長男の3人家族です。お父様からの相続により、多額の資産を承継されたためご相談をいただきました。職業は会社員で年収は 500万円です。
当初の資産状況
金融資産は、相続した現預金6億円と保有していた現預金0.5億円、実物資産はありません。
全体のバランス
総資産/純資産が6.5億円で、金融資産比率が100%です。そのほか、外貨・株式・債券は保有していません。
ご要望
この方の主なご要望は以下の4つです。
- 相続した現預金6億円の有効活用
- 初心者なので守り中心の堅実な資産運用がしたい:投資経験がなく、NISAの利用経験もないため、できるだけ手堅く運用したいとのことです。
- 金融資産だけで資産運用したい:実物不動産は流動性が低く、物件選定の知識や管理の手間、借入リスクに対する不安があるため、金融資産のみで運用したいというご要望です。
- 円高が怖く、過度な外貨比率の高騰を抑制したい
【提案におけるポイント】
この方のご要望において重要となるのは、「金融資産のみで運用したい」「外貨比率を抑えたい」という双方の要望を両立させる点です。一般的に、金融資産を中心にポートフォリオを構築すると、外貨建て資産の割合が高くなりがちです。そのため、両者を同時に満たすためには、資産配分において独自の工夫が必要となります。
資産配分案(再配分後)
先程のご要望を反映した再配分後の資産配分案は以下のとおりです。

減少させる資産
現預金6億円を使い投資します。
増加させる資産
- 株式(計 7,000万円):守り重視のため投資割合を抑制
- 日本株式:2,000万円
- 先進国株式:4,000万円
- 新興国株式:1,000万円
- 債券(計 4.5億円):ポートフォリオの核として配置
- 日本債券(円建て):1.5億円
- 先進国債券(外貨建て):3億円
- REIT(計 3,000万円)
- 日本REIT:2,000万円
- 外国REIT:1,000万円
- オルタナティブ・コモディティ(計 5,000万円)
- ヘッジファンド:3,000万円
- コモディティ(金):2,000万円
【再配分における重要ポイント】
- 日本債券の組み入れ割合を拡大
通常、債券ポートフォリオを組む際はドル建て等の先進国債券を中心に構成することが多いのですが、今回は外貨比率を抑えるため、債券全体の3分の1にあたる1.5億円を円建ての日本債券に割り当てています。
- 為替ヘッジありファンドの活用
ヘッジファンドやコモディティ(金)への投資には通常米ドル建てが用いられますが、今回は「為替ヘッジあり」の投資信託に投資しています。元はドル建てや外貨建てですが、デリバティブの仕組みを使うことによって、為替変動の影響を一定程度抑え、過度な外貨比率の上昇を防いでいます。
【結果としての外貨比率】
これらの工夫により、ポートフォリオ全体における外貨比率は55%に抑えられました。一般的な金融資産中心のポートフォリオでは外貨比率が70%〜80%に達することが多いなか、ニュートラルな基準とされる「約50%」に近いバランスを達成しています。
円・米ドル債券ポートフォリオ設計
債券部分(4.5億円)の詳細設計について解説します。こちらのポートフォリオは18債券で構成されています。

業種・国
自動車、保険、IT、娯楽、小売りなど多様な業種に分散しています。国はアメリカを中心に日本国債や国内自動車メーカーを組み入れています。
債券種類
普通社債を中心に、国債および一部の期限付劣後債で構成されています。
通貨・投資金額
通貨は米ドルが中心で、円建て債券も一部組み入れています。投資金額は、米ドル建て債券は各2,000万円、円建て債券は各5,000万円となっています。
残存期間
基本的にはラダー型の運用となっており、短いものから長いものまでバランスよく残存期間を分散しています。平均残存期間は18.7年です。
債券格付け
投資適格債を中心に構成しており、一部に低格付け債(BB-)を組み入れました。残存期間が長い債券ほど格付けが高いもの(A台以上)を多くして信用力を確保しています。平均債券格付けはAです。
利回り
今回のケースでは4.5億円のうち1.5億円を利回りの低い日本国債(利回り2.4%〜3.6%)で構成しています。ポートフォリオの1/3を日本国債が占めるため、全体の利回りを押し下げることにはなっていますが、現在、債券全体の利回りは高水準にあり、米ドル建て債券は5%台前半〜中盤程度と高いため、平均利回りは4.5%にとどまっています。
外貨比率が高くなりすぎないよう日本国債を入れる対策をとったことで、平均利回りが通常(5%台前半)より低くなるというデメリットが生じますが、この方のご要望とリスク許容度に合わせた設計となっています。
まとめ
最後に、今回のテーマである「相続した6億円をどう運用する? 富裕層の資産運用事例|金融資産中心の考え方」のポイントをまとめます。
ポイント1)投資経験少ない相続富裕層は「守り中心」の運用を検討
資産運用経験が少ない相続富裕層の方は、ご自身の投資目的やリスク許容度を踏まえ、価格変動リスク等に配慮した守り重視の資産運用をベースに考えるとよいでしょう。
ポイント2)金融資産のみで運用する場合は外貨比率に注意
金融資産中心の設計は外貨建ての割合が高くなりやすいため、円高リスクに対する工夫が必要となります。
ポイント3)債券ポートフォリオに円建て債券を多めに組み込む
債券ポートフォリオの中に日本国債などの円建て債券を組み込むことで、ポートフォリオ全体の外貨比率を調整できます。
ポイント4)オルタナティブ・コモディティは「為替ヘッジあり」も選択肢
ヘッジファンドや金といった資産に投資する際は、為替ヘッジ機能が付いたファンドを選択肢に加えることで、為替変動の影響を抑え、実質的に円建てに近い投資をするというアプローチも有効です。
本日は「相続した6億円をどう運用する? 富裕層の資産運用事例|金融資産中心の考え方」という内容でお届けしました。
具体的にどのような資産配分が適しているかは、ご自身の目的やリスク許容度によって異なります。私たちウェルス・パートナーでは、お客様お一人おひとりのご要望に合わせて最適と思われる資産運用をご提案しております。個別相談をご希望の方は、ぜひお気軽にウェルス・パートナーまでお申し込みください。