目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「2026年夏以降の米ドル債券最新投資戦略【前編】」です。
当メディアでは、定期的に米ドル債券の投資環境、利回り、為替動向、そして投資戦略についてお伝えしています。今回は、2026年夏以降の最新情報をもとに解説します。なお、このテーマについては前編・後編の2本立てとし、前編では「米ドル債券利回りの現状と見通し」および「米ドル円の現状と見通し」を、次回の後編では「2026年夏以降の米ドル債券投資戦略」と「米ドル債券ポートフォリオ最新設計例」を取り上げます。
本記事の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資成果を保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、ご自身の資産状況やリスク許容度を踏まえた慎重な検討が必要です。
米ドル債券利回りの現状と見通し
すべての米ドル債券における利回りの根幹となるのが、米国10年国債利回りです。10年国債利回りが上昇すれば債券全体の利回りも上がり、利回りが低下すれば債券全体の利回りも下がるため、米ドル債券投資の経済効果を測るうえで重要な指標となります。まずは米10年国債利回りの過去5年の推移を見ていきましょう。

2026年に入ってからの推移を振り返ると、年初は利回りが一旦落ち着きを見せ、3月2日には3.95%と4%を割り込む水準まで低下する場面が見られました。しかし、そこから利回りは右肩上がりの上昇に転じました。アメリカ・イラン紛争の表面化に伴い原油価格が高騰し、インフレ率を大きく押し上げたことが背景にあります。物価上昇によるインフレ懸念が強まった結果、10年国債利回りも大きく上昇し、7月30日時点の利回りベースでは4.74%という水準に達しています。
3月時点と比較すると、わずか数ヶ月で利回りは約0.8%上昇しており、非常に急激な伸びを示したといえます。今年前半における大方の見通しとしては、10年国債利回りの低下が予想されていましたが、紛争によってその見通しは大きく覆される結果となりました。
過去5年間のチャートにおいて、4.74%という水準に達した局面は2023年後半および2025年1月頃の2回しか存在しません。しかも過去のケースでは、4.7%を超えていた期間はわずか1週間から2週間、長くて1ヶ月〜2ヶ月程度にとどまり、いずれも短期間で元の水準へ低下しています。このデータと比較しても、現在の4.74%という利回り水準がいかに珍しく、高い状態であるかが確認できます。
アメリカ政策金利の予想(2026年7月30日時点)
次に、10年国債利回りの大元となるアメリカの政策金利の見通しについて確認します。
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今年に入ってからの政策金利は3.5%~3.75%の範囲で維持されていました。しかし、紛争勃発による原油高の影響でインフレ率が前年比+3%〜4%と高止まりしており、中央銀行(FRB)の目標値である2%を大きく上回っています。
インフレ抑制を最優先とするFRBのスタンスから、市場では今年9月以降のいずれかの会合で政策金利が1段階引き上げられ、さらに2027年3月以降にもう1段階引き上げられて4.0%~4.25%(現状より0.5%程度高い)に達するとの見方が主流となっています。
年初の予想では、インフレが落ち着いて政策金利が下がり、それに伴い10年国債利回りも下がるだろうという見通しでしたが、一転して政策金利と10年国債利回りは、ともに利上げ予想へとシフトしたことが今年の債券市場における最大の環境変化といえるでしょう。
代表的な債券種類・格付けの利回り(最新・予想)
次に、代表的な債券の種類・格付けごとの最新利回りと今後の予想について見ていきます。なお、「予想利回り」は私の個人的な見解ですので、あくまでご参考程度にとどめていただければ幸いです。
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残存期間10年の格付けAA+「米国債」の最新利回りは4.6%、格付けA-(日本のメガバンク相当)の「普通社債」は4.8%、格付けBBBの「期限付劣後債」は5.0%となっています。格付けが下がっているにもかかわらず利回り差があまり広がっていない背景には、好景気や株高によって企業の倒産確率が極めて低いと見なされている状況があります。
2026年12月末時点の予想利回りとしては、紛争の不透明感が続くことから、この先、原油相場に変動がないと想定すると、現状とほぼ同水準(米国債4.6%、普通社債4.8%、期限付劣後債5.0%)で推移する可能性が高いと考えられます。
さらに1年後となる2027年12月末時点の予想としては、新たな紛争が起こらない限り、物価上昇率の落ち着きとともに政策金利の引き上げが打ち止めとなり、現在より-0.3%ほど低下して米国債が4.3%、普通社債が4.5%、期限付劣後債が4.7%程度に落ち着くと予想します。
米ドル債券利回りの現状と見通しまとめ
ここまでお伝えした「米ドル債券利回りの現状と見通し」のポイントを4つにまとめます。
ポイント1)米10年国債利回りは当面4.5%超を維持か
原油や各種権益が絡むアメリカ・イラン紛争は簡単には終結せず、インフレ圧力が継続するため、少なくとも2027年前半頃までは4.5%超の高利回り環境が続くと見られます。
ポイント2)インフレ抑制の利上げ>米大統領求める利下げ
2点目は、アメリカの政策金利および利上げの動向についてです。政治的な背景として、アメリカ大統領は早期に金利を下げることで株価を浮揚させ、自らの政権評価を高めたいという意向を持っています。しかし、中央銀行であるFRBはインフレの抑制を第一に考えています。
足元の物価上昇率は+3%~4%に達しており、目標とされる2%を大きく上回る水準です。FRBは政府から独立した機関であるため、政権側の利下げ要求にかかわらず利上げを最優先し、市場では今年中のどこかの段階で追加利上げが実行される可能性が高いと見られており、これが10年債利回りを押し上げる一つの要因となっています。
ポイント3)アメリカ・イラン紛争は長期化の可能性
3点目は、アメリカ・イラン紛争長期化による影響です。原油の権益などが複雑に絡む紛争は各方面の利害関係が多岐にわたるため、表面上で停戦合意がなされたとしても、新たな要求や小さなすれ違いによって再び緊張が高まりやすい特徴を持っています。そのため、簡単に解決へ向かう可能性は低く、原油価格の高止まりと強いインフレ圧力が継続することになると見ています。
ポイント4)高利回りを背景とする富裕層の米ドル債券投資の動向
こうした高利回り環境を背景に、富裕層による米ドル債券投資への関心が大きく高まっています。過去5年間の利回りチャートが示している通り、現在の4.7%前後という利回り水準は、近年の推移と比較しても相対的に高い水準にあるといえます。富裕層の方々にとっても、このタイミングを投資の好機と捉えられる局面と考えます。当社においてもご相談件数や実際の投資実績が堅調に推移しています。
米ドル円の現状と見通し
続いて「米ドル円の現状と見通し」について解説します。

こちらは米ドル円の過去5年間の推移です。チャートを見ると、2025年4月に1ドル140円近辺をつけたタイミングを底として、右肩上がりでドル高・円安が進行しています。途中で日本政府・日本銀行による円買い介入が実施され一時的に円高へ振れる局面もありましたが、すぐに押し戻され、7月30日時点では1ドル163円台と過去5年間で最も円安の水準にあります。
米ドル債券投資においては、為替レートと米10年国債利回りとの連動性が重要となります。

米ドル債券利回りと米ドル円は強く相関しており、債券利回りが上がるとドル高・円安に進み、利回りが下がるとドル安・円高に進む傾向があります。2025年中盤頃には乖離が見られた時期もありましたが、2025年10月以降はこの連動性がほぼ復活しています。
利回りと為替が連動している状況下では、投資タイミングを過度に推し量る必要性が低いというメリットが生じます。ドル高・円安の局面は、為替タイミングで見れば不利に思えますが、債券利回りが高いため総合的な投資条件としては悪くないと考えます。逆に利回りが低下した局面ではドル安・円高方向となり為替面で有利になるため、連動性が保たれている限りは米ドル債券投資のタイミングをあまり悩む必要はないと考えています。
米ドル円の現状と見通しまとめ
ここまでの「米ドル円の現状と見通し」のポイントを4つにまとめました。
ポイント1)アメリカ利回り上昇で米ドル高・円安進行
アメリカとイランの紛争発生をきっかけに原油価格が高騰し、米国の債券利回りが上昇したことで、ドルが買われて円が売られるという為替の構図がより強固なものとなっています。
ポイント2)日本の円買い介入の効果弱く、円高要因少ない
日本側の唯一ともいえる円高要因は円買い介入ですが、今年実施された際も一瞬円高に振れただけで、すぐにドル高・円安へと押し戻されてしまいました。これは、「円を売ってドルを買いたい」という投資家が多くいるためと考えられます。
日本人は円資産を中心に保有していますが、少しでも介入で円高になった局面を絶好の買い時と捉え、押し目買いでドルへ乗り換える動きが生じます。そのため、介入があってもすぐに円安へ戻る現象が繰り返されているのです。
また、ここ5年で頻繁に介入が行われたことで、市場への為替介入サプライズ効果が大幅に低下している点も挙げられます。さらには、日本の金利が上昇しているため金利差は縮小しているものの、国債の利払い費用が増加して財政悪化が懸念されるなど、かえって円売り材料とされる側面もあり、金利引き上げや為替介入を行っても円高に振れにくい環境となっています。
ポイント3)米ドルと米金利の連動性は完全に復活か
昨年の10月以降、金利が上がればドルが高くなり、金利が下がればドルも下がるという、金利と為替が相関して動く状態に戻りました。金利と為替が連動している以上、どちらか一方のベストなタイミングを狙って買い時を推し量る合理性は低いため、タイミングを過度に気にせず米ドル債券投資を実行できる環境が整っているといえるでしょう。
ポイント4)さらなる円安進行を見据えた富裕層の米債投資
為替介入による一時的な円高局面を超えて、市場では中長期的な円安トレンドの継続を懸念する声が少なくありません。単一通貨(日本円)のみで全資産を保有し続けることへのリスク管理として、資産の一部を米ドルへ分散させる意識が高まっています。こうした背景から、日本円から米ドルへと資産を振り分け、米ドル債券を活用して堅実な保全運用を図る動きが富裕層の間で定着しつつあります。
本日は「2026年夏以降の米ドル債券最新投資戦略【前編】」という内容でお届けしました。次回の【後編】では、具体的に「今どのような米ドル債券を選ぶべきか」という実践的な投資戦略やポートフォリオの組み方について詳しくお伝えします。
なお、ご自身の資産状況に合わせた米ドル債券の具体的な活用方法や、個別の運用のご相談につきましては、私たちウェルス・パートナーまでお気軽にお問い合わせください。