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はじめに
相続によってまとまった資産を受け取ったとき、「増やしたほうがいいのだろうか」と考える前に、多くの方は「何をしてよいかわからない」と立ち止まります。特に、ご自身で長く投資をしてきたわけではなく、ある日突然、預金、株式、債券を受け継いだ場合、金額の大きさに対して判断経験が追いつかないのは自然なことです。
実際、相続で資産を承継した方には、資産を大きく増やすよりも、まずは減らさず守りたいという意識が強く、投資経験が少ないケースが多いとされています。また、資産が預貯金や不動産など特定の資産に偏っていることも珍しくありません。
だからこそ、相続後に必要なのは、いきなり運用商品を選ぶことではなく、受け継いだ資産を整理し、自分にとっての“使うお金”と“持ち続けるお金”を分けることです。ここを飛ばしてしまうと、不要な売却や不適切な投資につながりやすくなります。
本記事でご紹介している内容は、あくまでも一例であり、すべての方に当てはまるものではありません。
資産状況や投資目的、リスク許容度によって最適な運用方法は異なります。
相続後は「運用」より先に「整理」が必要
相続で受け取るのは、預貯金や不動産のようなプラスの財産だけではありません。借入金や未払金などの負債を含む場合もあります。
まずは遺言書の有無を確認し、相続人や財産の全体像を把握し、必要があれば遺産分割を進める必要があります。相続にはこうした基本手続きがあり、それを踏まえずに資産を動かすのは得策ではありません。参考:政府広報オンライン
さらに、相続税が基礎控除額を超える場合、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税が必要です。不動産を相続した場合には相続登記も必要で、不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が求められます。つまり、相続後は「どう運用するか」以前に、「期限までに何を済ませるか」という実務判断が欠かせません。参考: 国税庁 参考: 法務省
では、実際に相続後の資産整理や運用は、どのように考えればよいのでしょうか。ここからは、相続後によくある3つのケースで見ていきます。
実例1|預金6億円を相続
夫の相続後に多額の預金を受け継いだ60代女性の事例になります。
この方は投資経験がなく、相続手続きそのものにも大きな負担を感じており、「相続した預金を活用したいが、運用に手間やストレスをかけたくない」「将来の相続対策も考えたい」という意向を持っていました。
このケースで重要なのは、いきなり大きく投資することではありません。まず考えるべきなのは、受け取った資金をいくつかの役割に分けることです。たとえば、今後の生活費、相続税や諸費用、急な医療・介護への備え、そして当面使う予定のない余裕資金です。
相続後に現金が多い方ほど、「預金のままではもったいない」と感じやすい一方で、使い道がまだ固まっていないお金まで投資に回してしまうと、後で取り崩しが必要になり、心理的な負担が大きくなります。現金の多い相続では、まず安心して持てる資金の土台をつくり、そのうえで長く使わない部分だけを運用対象として切り分ける考え方が現実的です。
このようなケースでは、運用商品を先に決めるのではなく、「どのお金を守るか」「どのお金なら時間をかけて育てられるか」 を分けることが出発点になります。
実例2|不動産を相続した人は、「持つ前提」ではなく採算と手間で考える
相続では、現金よりも不動産の比率が高いケースが少なくありません。親がアパートや賃貸マンション、土地、自宅を所有しており、そのまま子どもや配偶者が引き継ぐという流れです。
ここでよくあるのが、「親が持っていたから、そのまま持ち続ける」という判断です。故人の運用方針や資産配分をそのまま引き継いでしまうことは、相続で資産を受け継いだ方に多いパターンの一つです。
しかし、不動産は持っているだけでよい資産ではありません。賃貸物件であれば、空室率、修繕費、管理負担、立地の将来性、相続人自身がその管理に関われるかどうかを見なければなりません。たとえば、親世代は不動産管理に慣れていても、相続人が会社勤めで遠方に住んでいる場合、同じ資産でも負担感はまったく違います。
不動産を相続した後に考えるべきなのは、「この資産は自分にとって持ち続けやすいか」という視点です。収益性だけでなく、手間、時間、意思決定のしやすさまで含めて考える必要があります。自宅以外の不動産であれば、保有継続、組み換え、売却のどれが合理的かを改めて見直すことが大切です。
相続登記が義務化されている以上、不動産を相続した場合は、まず権利関係を明確にし、そのうえで「守る資産」なのか「整理する資産」なのかを判断していく流れが自然です。
実例3| 株式を相続したが、売るべきか迷う人
相続財産に株式や投資信託が含まれている場合、「値動きが怖いので、いったん売って現金化したい」と考える方は少なくありません。ただし、ここで注意したいのが税務です。相続で取得した株式等の取得費は、原則として被相続人の取得費を引き継ぎます。相続時の価格がそのまま取得費になるわけではないため、古くから保有していた株式では、思った以上に売却益が大きくなることがあります。
参考記事: 国税庁
さらに、相続税が課税された財産を一定期間内に譲渡した場合には、相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります。つまり、株式を売るか保有するかは、相場観だけで決める話ではなく、税金や資産全体のバランスまで含めて考える必要があるということです。
参考記事: 国税庁
まとめ
今回ご紹介した3つの実例に共通するのは、相続した直後の資産は、そのままでは相続人本人にとって最適な形になっていないことです。現金が多ければ、使うお金と育てるお金に分ける必要があります。不動産が多ければ、保有する意味と管理負担を見直す必要があります。株式が多ければ、売却前に税務と資産配分を確認する必要があります。つまり、相続後に求められるのは、すぐに増やすことではなく、自分の生活、年齢、家族構成に合う形へと整え直すことです。
相続後の資産運用は、スピードより順番が大切です。焦って商品を選ぶのではなく、まず整理する。そのうえで、理解できる資産だけを持ち、必要なら専門家の助言を受けながら、自分に合う形へ組み替えていく。この姿勢こそが、相続で受け継いだ大切な資産を守り、次の時間につないでいくための基本になるはずです。
ウェルス・パートナーでは、相続後の資産整理から、今後の資産運用・不動産活用・二次相続を見据えたご相談まで、状況に応じて個別に承っています。何から考えればよいかわからないという段階でも構いません。相続した資産を、これからのご自身やご家族にとって無理のない形で整えていきたい方は、ぜひ一度ご相談ください。