目次
はじめに
皆さん、こんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回のテーマは、「富裕層の大半が『オルカン』に投資しない本当の理由」です。
皆さん、一度は「オルカン」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。正式には、「オール・カントリー・ワールド・インデックス」と言い、その頭文字からアルファベットで「ACWI」や、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社が算出し公表する指数であることから「MSCI」と呼ばれることもあります。
日本株の場合、日経平均株価という指数があります。アメリカ株の場合、S&P500があります。オルカンは、その世界株式版というイメージです。世界全体の株式が上昇すればオルカンも上昇しますし、下がれば下がるという、世界中のいろいろな国の株式を合わせた指数というイメージになっています。
オルカンは、各株式市場の時価総額に応じて割合が決められています。このインデックスに投資すれば、世界経済の成長とともに株価が上昇するため、世界株式の成長についていける投資対象として広く知れ渡っています。ですから、投資に詳しくない方でも一度は耳にしたことがあるほど、一般的な投資対象になっているわけです。
ただし、富裕層の資産運用の場合、オルカンに投資しない方が圧倒的に多いのではないかと私自身は感じています。今回は、実際に当社のお客様のご相談をもとに、富裕層の大半がこのオルカンに投資しない本当の理由についてご説明します。
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オール・カントリーの上位組入国・業種の比率
このメディアでは、オルカンを取り上げることが初めてなので、これがどのような指数なのかご説明します。オール・カントリー・ワールド・インデックスの上位組入国と業種の各比率を挙げています。
左側の国・地域をご覧ください。組入国が高い順に上から並べられています。組入国で一番大きいのはやはりアメリカです。世界の株式市場の中で圧倒的に時価総額が大きいのはアメリカなので、アメリカの割合が高く63.4%になっています。2位は日本で4.8%、イギリスが3.3%、カナダが2.8%、続いて5位から10位までが挙げられています。
エリア別にすると、日本が5%、日本を除くアメリカを含めた先進国が85%、東南アジアやアフリカなどの新興国の株式の割合が10%というイメージの株式の配分になっています。ですから、MSCI(オルカン)に投資することによって、85%の先進国株と5%の日本株、10%の新興国株に投資していることと同じ意味になるわけです。
次に右側の業種をご覧ください。今の世界の株式市場で割合が大きいのは、情報技術(IT企業)が25.3%、金融機関が17.5%、資本財・サービス系の会社が10.7%、一般消費財やヘルスケアがそれに続く割合になっています。
ですから、オルカンというインデックスファンドに投資することによって、このような国や会社が発行する株式や業種の株価の上昇についていくことができ、経済効果が得られるわけです。このインデックスに連動して資産が成長していくことになります。
日本の場合、オルカンはインデックスファンドを通して投資するのが一般的になっています。インデックスファンドとは、比較的低コストで運用することができる投資信託の種類です。
オルカンを対象にした日本の主要なインデックスファンドは、信託報酬が毎年0.1%から0.2%程度になっています。一つのファンドに投資するだけで、低コストで世界の株式に連動できるため、オルカンは手軽に世界株式全体にベットできる便利な投資対象として、日本でも広く普及しているわけです。
投資しない4つの理由
ここからは本題の「富裕層の大半が『オルカン』に投資しない本当の理由」についてご説明します。理由は4つです。
理由1)日本・先進国・新興国株式の内訳が把握しづらい
資産運用される富裕層の多くは、株式を、日本株式・アメリカなどの先進国株式・新興国株式の3つに大別しています。オルカンは、これらすべての国の株式に投資できますが、何に何%投資しているか、内訳が非常に把握しにくいという難点があります。
そのため、富裕層の方は、日本は日本株、先進国は先進国株、新興国であれば新興国株というような単位でまとまっているインデックスファンドに投資する方が圧倒的に多いのではないかと思います。この方が、自分がどの国の株式に投資しているかを把握しやすいので、資産配分の管理が行いやすいわけです。
理由2)日本株式・新興国株式の割合が小さい
先ほどお伝えしたように、オルカンの日本株式の割合は5%です。この5%は、日本株式の時価総額の割合がそれぐらいなので、海外の投資家にとっては適切な水準かもしれません。しかし、私たち日本人からすると日本株の割合が小さいと感じられます。
日本人の私たちが日本株を持つのであれば、やはり株式の中に占める割合は15%から20%程度あるのではないかと思います。したがって、オルカンに投資することによって日本株式への投資は完了しているかというと、割合が小さすぎると考えた方がよいでしょう。
また、先ほどの国別の比率で、オルカンの新興国の株の割合は1割くらいとお伝えしました。株式の時価総額に照らすとその程度かもしれませんが、世界のGDPの3割から4割は新興国といわれているので、その割合からすると、新興国株の割合も小さいといえるのではないでしょうか。日本株と同様に、新興国株も15%から20%くらいの比率があった方がよいと考えられます。
ですから、オルカンの場合、どうしても日本株や新興国の株の割合が小さい形になるので、そのような株の比率を補う必要が出てきます。わざわざそのようなことをするのは煩わしいと感じる方も多いため、オルカンに投資するのではなく、日本・先進国・新興国株式のカテゴリーの資産にそれぞれ投資した方がよいと考えるわけです。
理由3)富裕層は基本的に株式よりも債券を好む傾向
富裕層の方の多くは、株式よりも債券の割合を大きくして投資する傾向にあります。割合としては、株式1に対して債券9、株式2に対して債券8、株式が多い方でも株式3に対して債券7など、大半の金融資産は債券で運用される方が多いです。
オルカンに関しては、あくまで株式という資産のカテゴリーに連動する指数になっているので、富裕層の方がオルカンに投資しない大きな理由としては、そもそも株式よりも債券を好む傾向にあるからではないかと思います。
理由4)インデックスファンドだとインカムゲインがない
オルカンは日本の場合、インデックスファンドを通して投資することが最もポピュラーな方法になっています。ただし、インデックスファンドは個別の生の債券や株式とは異なり、配当や利息は出ません。基本的にインカムゲインがないのが一般的なインデックスファンドです。
富裕層の方とはいえ、投資によってインカムゲイン(定期収入)を得て、それを支出に使っている方が非常に多いです。富裕層の方でもインカムゲインが欲しい方は圧倒的に多いわけです。しかし、インデックスファンドにはインカムゲインがないので、そうであればオルカンに投資しなくてもよいということで、投資しない方が多い理由の一つになっているのではないかと思います。
本日は「富裕層の大半が『オルカン』に投資しない本当の理由」という内容でお届けさせていただきました。

株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中