皆さん、こんにちは。株式会社 ウェルス・パートナー代表の世古口です。
今回は、「相続対策はこの3つだけ押さえておけばOK」という内容でお届けしたいと思います。
目次
はじめに
私達は、相続の対策もお手伝いさせていただくのですが、相続対策というと、税金であったり、法律の深い知識を知ってないと考えられない、最適化できないというイメージがあるかと思うのですが、そのようなことはありません。
実は、ポイントになるのはとても限定的で、ここさえ押さえておけば大丈夫という点がありますので、今回はそのポイントを3つに絞って解説していきます。
今回の内容だけを見れば、相続対策のさわりの部分を理解できて、ある程度自分で何を考えればいいのかがわかる。そのような内容にしていきたいと思います。
3大相続対策
3つにポイントを絞らせていただくということでしたが、私は、次の3つを「3大相続対策」といっています。
1つ目は、相続税対策です。相続の税金をいかに安くするか、少なくするかという相続税対策が1つ目です。
2つ目は、相続争い対策です。相続で争いにならない、残された家族が喧嘩にならない、このような対策が相続争い対策です。
3つ目は、特殊資産対策です。「この資産を持っていることによって相続が大変になる」ということがあるのですが、それを回避するための対策です。
この特殊資産対策ですが、特殊資産を持っていない方には関係ありません。持っていない方は、最初の2つだけで、持ってる方に関しては特殊資産対策を含めて考える必要があるとご理解いただきたいと思います。
相続税対策
まず、1つ目の相続税対策から入っていきたいと思います。
ポイントは3つあります。相続税対策のポイントの1つ目は、国内不動産です。
国内不動産
相続の税金を安くするには、日本においては国内不動産がメインとなります。
例えば、1億円の現金は1億円で相続税の評価をされるのですが、これが都内にあるご自身の自宅になると5,000万円の評価になり、それを人に貸すとさらに評価が下がって、3,000万円になったりするというのが国内不動産です。
これを手持ちの資金で投資するのか、借入で投資するのか、どれぐらい投資するのか。
そういうことを考えていく必要があるのだろうと思います。
生前贈与
2つ目は、生前贈与です。自分が亡くなったときにかかる税金は相続税なのですが、生前贈与とは亡くなる前、つまり生前にお金を贈与していくということです。
非課税枠は毎年110万円です。あげる方1人に対して110万円設定されていますので、これが5人いたら、110万円×5人で550万です。これを10年続けると5,500万円なので、かなりの金額になります。
あげる方がいたとしたら、生前贈与で非課税にできるということなので、これを最大限活躍して活用していく必要あると思います。
資産管理会社
3つ目は、資産管理会社。法人を作るということです。
この資産管理会社を作るというのも相続税対策に寄与します。どういうことかというと、資産管理会社は不動産を贈与するのに役立つということです。
国内の不動産は、贈与するときに1つずつ細かく分けて贈与するわけにはいきません。
基本的に細かく分けることができないので、分けて贈与したい場合は、まず資産管理会社として不動産を持ちます。
資産管理会社は株式会社であることが多いので、株を1株単位で細かく分けられます。
したがって、資産管理会社に不動産を持たせて、先ほどの生前贈与で少しずつ株を贈与していくと、相続税をかなり抑えることができます。
このように、国内不動産、生前贈与、資産管理会社、全てをうまく活用して、自分に合った最適な形で相続税の対策をしていくというのが大事だと思います。これが1つ目の相続税対策でした。
相続争い対策
2つ目が相続争い対策です。
ポイントが3つあります。
流動性
1つ目のポイントが流動性です。流動性が高いというのが相続争いを避けるためには大事なのですが、相続争いになりやすいのは、やはり不動産です。
不動産を共有してる場合、例えばお兄様と弟様で一つの不動産を持っている場合、喧嘩してしまい、どちらかが「売る」「売らない」ということになると、不動産は動かなくなってしまいます。
しかし、「相続税の税金は払わなくてはならない。どうしたらよいか」ということがあるわけです。
ただし、これがきちんとお兄様の不動産、弟様の不動産と別かれていたら、誰も喧嘩しないわけです。
あとは分けられる資産であればいいわけです。
株式が1,000株あったとして、1000株を共有する必要はないので、500株ずつ、ということであれば喧嘩をせずに、売りたい方が売ればいいという話なので、流動性をどれぐらい考慮して、相続できるかというのは、かなり大事になってきます。
つまり、喧嘩をしないような流動性を保っていく必要があるということだと思います。
遺言
2つ目のポイントは遺言です。遺言は、相続争いの元になってしまう可能性はあるのですが、ご自身が達成したい資産承継の形を実現するためには、遺言が必要になることが多いです。
実家はご長男に継がせてあげたいとか、次男が事業を頑張ってるので、会社の株は次男に全部継がせてあげたりとか、このようなことを実現するために遺言が必要なわけです。
この方にこの資産を継がせますということです。
したがって遺言をしっかりとした形で残す必要があるのですが、自分で書いた自筆遺言は間違っていたり、紛失してしまうリスクなどもあるので、遺言でそれなりの金額を渡すのであれば、公正証書遺言という形で、きちんと役所で正式な手続きをとってやる必要あると思います。
遺留分
3つ目のポイントは遺留分です。遺言を書くと発生する問題が遺留分です。遺留分というのは、遺言で特定の相続人の方に資産をあげますという場合に、もらえない方が過度に不利になることを避けるような制度です。
実は、資産をもらえなかった方が、法定相続分の半分を遺留分として請求する権利があるのです。
相続発生後に、この遺留分を請求することで家族間で喧嘩となり、相続争いになってしまうというケースが非常に多くあります。
この遺留分の対策をしておくというのは、実は大事なのです。
相続争いを避けるため、特定の資産を譲り受ける方に、キャッシュで資産を生前贈与しておいて、遺留分を請求されたときにそのキャッシュで支払えるようにしておく、あとは生命保険をかけるというのも結構あります。
特定の資産をたくさん承継する方へ、生命保険でたくさんお金を渡るようにしておき、その保険金で遺留分を支払う。このような形で遺留分対策をする形であったり、いくつか方法があるのですが、このような遺留分対策もしていく必要があると思います。
したがって、流動性を考慮しつつ、遺言を書くのであれば書いて、遺言を書くときは遺留分の対策までしておくというのが相続争い対策になると思います。
特殊資産対策
3つ目は、特殊資産対策です。
これは、特殊資産をお持ちの方は考える必要があるとご理解いただければと思います。
自社株式
1つ目の特殊資産は自社株式です。主に会社経営してる、自社の未上場の株式ということです。
経営してる会社の株、事業性のある会社の株というのは、評価の仕方が特殊であったり、財務的な状況によって相続税評価が過度に高くなってしまうこともあるので、結構対策が必要なのですが、この問題に関してはかなり専門性や特殊性が高いので、この場では全部お伝えできません。
さまざまなやり方がありますので、これは別途私達のような会社や税理士にご相談いただくのが良いと思います。
特に純資産が高くなっている会社だと、経営してる会社、自社株の会社で、先ほどの不動産に投資した方がよかったり、持ち株会社体制にした方がよかったり、あるいは一部売却してしまった方がよかったりとか、あらゆる選択肢が考えられますので、よく考えて検討・検証する必要があると思います。
海外不動産
2つ目の特殊資産は海外不動産です。海外不動産を個人で持っている場合、相続が起こると非常に大変なときが結構多くあります。
海外の場合、保有している不動産の所有者が亡くなると、裁判所が資産を管理するプロベートというのが発生することがあり、このプロベートに入ってしまうと、なかなか相続人の方に資産が渡らなかったり、その間にも現地で相続税が発生してしまったりとか、非常に大変です。
私達のお客様でも、お子様に海外不動産が渡るまでに、亡くなってから3、4年かかったりとか、まだ渡ってなかったりとか、そのようなことが多々起こっていますので、海外資産をお持ちの場合は、そういったことを考える必要があると思います。
仮想通貨
最後に、3つ目の特殊資産は仮想通貨です。
これは、今どきなのかと思うのですが、相続における仮想通貨のリスクというのは、やはり値動きの激しさです。
亡くなった時点で1億円で相続税が確定します。その仮想通貨に対する相続税は5,000万なのですが、相続税の納税までに仮想通貨の価格が5分の1の2,000万円になってしまい、5,000万の納税ができない。これが現実に結構起こっています。
これは大変なことなので、仮想通貨を持ってる場合、亡くなったら早い段階で売却した方がよかったり、生前にいろいろ対策をした方がよかったりとか、さまざまな方法がありますので、早いうちに検討しておいた方がよいと思います。
あとは、亡くなった方が仮想通貨を持っていたのに気づかなかったり、パスワード忘れなど、海外の仮想通貨取引所だと、このようなことが起こりがちなので、気をつけた方がよいと思います。
したがって、相続税対策、相続争い対策、特殊資産対策、この3つを押さえつつ、総合的に考えて自分の相続を最適化するというのが大事だと思います。
今回は、「相続対策はこの3つだけ押さえておけばOK」という内容でお届けをさせていただきました。
株式会社ウェルス・パートナー
代表取締役 世古口 俊介
2005年4月に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に新卒で入社し、プライベート・バンキング本部にて富裕層向けの証券営業に従事。その後、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て2009年8月、クレディ・スイスのプライベートバンキング本部の立ち上げに参画し、同社の成長に貢献。同社同部門のプライベートバンカーとして、最年少でヴァイス・プレジデントに昇格、2016年5月に退職。
2016年10月に株式会社ウェルス・パートナーを設立し、代表に就任。超富裕層のコンサルティングを行い1人での最高預かり残高は400億円。書籍出版や各種メディアへの寄稿、登録者1万人超のYouTubeチャンネル「世古口俊介の資産運用アカデミー」での情報発信を通じて日本人の資産形成に貢献。医師向けサイトm3.comのDoctors LIFESTYLEマネー部門の連載ランキング人気1位。
メディア掲載情報:「m3.com」「ZUU online」「MONEY zine」「マネー現代」でコラムを連載中