【富裕層の資産承継戦略大転換】不動産を保有する会社株式の贈与に要注意

皆さんこんにちは。株式会社ウェルス・パートナー代表の世古口です。

はじめに

多くの富裕層の方々が悩まれたり、いろいろな検討をしており、私は資産承継にも携わっているので、現場で感じたことや、税理士を含めた相続の専門家の方とコミュニケーションをとっているので、相続現場の最前線に関する情報をアップデートしたいと思います。

特に、法人で資産管理会社や国内の不動産を保有されている富裕層の皆様には、関係があることだと思いますので、参考にしてください。

不動産節税裁判の最高裁判決(納税者敗訴)

皆さんはご存知かもしれないですが、2022年4月に不動産節税に関する最高裁判決が出ました。

相続人である納税者の方が敗訴したという事案です。イラストを見ると分かりやすいのですが、被相続人の方は90代のご高齢の方で、お亡くなりになる数年前に、神奈川と東京に一棟マンションを2棟、13億円分購入しました。

相続税評価は、不動産を購入することで下がりますので、お亡くなりになった後に相続税を申告すると、ゼロになりました。

その後、税務調査が入ったのですが、著しく不動産の評価を下げすぎということで、時価に近い再評価をするため不動産鑑定を行なった結果、12億7,300万円の評価となり、3億円の追徴課税を受け、裁判で争い最高裁で2022年4月に判決が出たという事案です。

不動産は一定の条件を満たすと、相続税評価が6割7割下がるのが一般的です。

この最高裁判決が出たことによって、全ての不動産の評価が時価評価になるということではありません。しかし、評価が下がらず、ほぼ時価に等しい評価がされてしまい、税務調査で否認されてしまうというリスクが明るみになった判決ですので、不動産を保有されていたり、投資を検討されている方には、結構大きな判決となりました。

実際に、この最高裁の判決を踏まえて、どのようなことに注意する必要があるのかということをまとめておりますので、ご覧いただきたいと思います。

不動産節税の「3K」に要注意

不動産節税について、私は勝手に「3K」と言っているのですが、特にこの点に注意した方がいいと思います。

「3K」というのは「高齢者」、特に80代以上の方が「借り入れ」をする場合、そして「画策」、この3つを「3K」と呼んでいるのですが、1つずつもう少し簡単に説明していきます。

1つ目の高齢というのは、この事案の場合と同じように、特に80代以上の高齢の方は注意した方が良く、70代からでも注意した方が良いということです。

高齢者になってから、相続対策以外の意味で高額の不動産を購入するのだろうか、ということです。

2つ目のKが借入です。借入がなぜ駄目なのかというと、借入れをして不動産を保有すると相続税がゼロになってしまうからです。

やはり、ゼロというのは他の納税者の方々から見ても、大変不公平であると思いますので、相続税をゼロにするのはやりすぎだと思います。

借入れ過ぎて不動産を保有するとこのようになってしまうので、借入を伴う不動産投資の場合は気をつけた方が良いということです。

3つ目のKが画策です。相続対策を目論んで、つまり意図があって、不動産に投資をするというのは、やっていけないことだと考えます。

高齢・借入・画策。この3つが要注意の事柄で、どれかに該当する、または複数該当する経緯で不動産に投資をしている方は、特に注意した方が良いと考えています。

ここまでが、最高裁判決を得て私が個人的に思う相続節税の要注意事項です。

不動産を保有する会社株式の贈与に要注意

ここからは、新しい話になります。
この話に関係しているのは、資産管理会社、法人で不動産を所有している富裕層の皆様ということになります。

このよう富裕層の方々は、資産管理会社の株式の評価も、不動産を資産管理会社が保有することで、相続税対策効果を得ることができますが、実は現在、戦略変更を迫られています。

どのような戦略変更を迫られているかというと、次のイラストを見ていただければと思います。

こういうイメージになります。この資産管理会社は、ご本人様がそれなりの金額を出資して作った会社です。

このイラストの場合だと、4億円を出資して、4億円の資本の会社、株式をご本人様が保有している。そして銀行から6億円借入れして、左側のように国内不動産に7億円、先進国債券に3億円を投資しています。

法人の場合は、国内不動産取得してから3年経過すると、相続税の評価が下がります。

こちらのイラストのように、7億円くらいの都内の不動産であれば、5億円くらい評価が下がる可能性が高いと思います。

5億円評価が下がると、この会社の資本金は4億円なので、基本的にこの資産管理会社の株式の相続税評価は、ゼロに等しくなるというイメージです。

この場合、今まではどうしていたかというと、本人が持っている株式をお子様に贈与するということが多かったです。

資産管理会社の評価を下げた上で、ほとんど贈与の税金がかからないような評価にしておいて、お子様に株を贈与するということで生前贈与をしていました。

生前贈与をしなくても、相続税評価減の効果はあるのですが、生前贈与をすることで自分の資産ではなくなり、お子様の資産として資産承継ができるので、効果的な承継対策になるため、多くの富裕層の方が魅力を感じるプランになっています。

しかし、この贈与がダメなのではないかという流れになってきています。

なぜかといえば、先ほど説明した「3K」の画策、つまり相続の意図ですが、贈与はまさに画策そのものというわけです。

お亡くなりになって承継するのと、生前贈与というのでは、やはり画策のレベルが違います。

したがって、不動産を管理会社で保有して評価が下がるというところまでは良いのですが、それを贈与するのは問題があるのではないか、ということが最高裁判決を得た後の専門家の方々の意見となっています。

では、贈与をしないということであれば、管理会社や相続税対策をできないのか、不動産に投資をしても意味がないのかと言うと、そういうわけではありません。

贈与できないからと言って、何もしないわけではなく、副案というか次善の策も多くの方が考えて実行されますので、それについて紹介したいと思います。

主に取れる対策としては3つあると考えています。

対応①株式贈与をしない

1つ目は、シンプルに株を贈与しないということです。

これまで、資産管理会社の株を贈与するというのが一般的であったのですが、 贈与せずにご本人様が持ち続けるということで、この場合は生前贈与できませんが、万が一、お亡くなりになった場合の相続税評価を下げる効果が得られますので、それで良いのではないかということです。

したがって、贈与しないだけというパターンが対応の1つ目、1番シンプルかつ工数が少ない対策です。

対応②設立当初からお子様株主

2つ目は、これも最近多いのですが、資産管理会社の設立当初からお子様を株主にしておくというパターンです。

このイラストだと、お子様が資本金100万円を出資して株式を保有しています。ご本人様がお金を4億円分貸して、会社からすると役員借入になっています。

同じように、銀行借り入れを行い、投資している資産は同じです。債券に3億円、不動産に7億円投資するということで、先ほどのご本人様が株主になっているのと何が違うかといえば、資産管理会社はお子様が株主になっていると、相続税評価効果が得られていないわけです。

なぜかといえば、 国内不動産の評価は同じように5億円分下がるのですが、もともと資産管理会社の株の価値は資本金100万円しかありません。

資本がとても薄いわけです。したがって、評価が下がったとしても会社の株の評価はマイナスにならず、どれだけ下がっても0円なので、相続税対策効果にはなっていないということです。

ご本人様は、この資産管理会社にお金を4億円貸していますが、先ほどの対応①では4億円を株で出していたので評価が下がって相続税対策効果になっていたのですが、対応②の場合は貸付金なので、貸付金は時価評価されてしまいます。 したがって、ご本人様に万が一のことがあった場合は、相続税対策効果になっていないということになるわけです。

では、なぜこの形でやるのかといえば、これは相続税の効果よりも、お子様が株主の会社で、お子様名義で先進国債券や投資している不動産などの資産が成長するという、資産成長効果の方を取るという選択をしているということです。

この資産管理会社の資産が、債券と不動産を合わせて年率5%くらいで成長していくと仮定したとき、10億円あれば毎年5,000万円ずつ資産が増えていきます。

そうすることで、会社の純資産が毎年5,000万円増えていくわけなので、これが5年、10年、20年になると、非常に大きな資産になるわけです。
それがお子様の名義で増えていくということを考えると、相続税評価対策の効果を得られないのですが、長期的に考えれば、ご本人様が亡くならない前提とすれば、実はこちらの方が最終的な資産承継効果が高いわけです。

そういうわけで、このプランを選択される方も多いです。特に多いのは、若い富裕層の方です、年齢で言うと40代、50代以下の富裕層の方だと、やはり 60代以上の富裕層の方に比べ、亡くなる確率が低くなりますので、そういう場合はこのお子様が株主プランで当初から、資産管理会社を作った時からこの形で運用していくことが実は多いのだろうと考えています。

贈与ができなくなりましたので、割り切ってこちらを選ばれる方も最近多いようです。

対応③資産管理会社を2つ作る

3つ目の対応は、資産管理会社を2つ作るパターンです。
どういうことかというと、管理会社をA、Bと作ります。Aの方は不動産投資だけの会社です。Bの方は金融投資だけの会社にする。つまり分けるということです。

この資産管理会社もイラストを見ていくと、資産管理会社Aの方は不動産会社で、資本を出資していますが、最初の対応①のように、ご本人様が出資します。ご本人様が株主になって4億円出資して、3億円借入をしています。7億円の不動産へ投資して、評価が5億円、先ほどと同様に下がるので、資本金は4億円ですから、相続税評価はゼロになります、したがって、相続税評価が下がる効果は資産管理会社Aの方で得ることができます。

次に管理会社 Bの方は、どうかといえば、 金融投資会社ということなので 金融資産に投資するわけです。 資本金は100万円でお子様が出資者、株主なので対応②の形になっています。

借入はご本人様から4億円を借りています。資産の方は、債券や株式に分散して投資を行い、Bの方で対応②のような資産成長を図るということで、債券や株であれば年率5〜6%くらいで成長していくものもあるので、この効果を資産管理会社Bの方で得ます。

一方、管理会社Aの方は、相続税評価が下がる効果、つまり相続税対策に使うということで、対応①と②の合わせ技が対応③の資産管理会社を2つ作るというパターンとなります。

この方法のデメリットですが、資産規模がそれなりに大きくないと、資産管理会社を作るコストや効率が逆に下がります。

資産規模が数十億円以上とか、お子様が何人もいると、その分資産運用会社を多く作らなくてはいけなくなり、1人か2人、さすがに2人までだと思いますが、一定の条件が揃わないと有効ではなくなります。しかし、富裕層の方にとってはとても有効である場合もあるので、実行される方も多い方法です。

まとめ

今回は、資産承継戦略大転換【相続最前線】という内容なので、私見を含めて最後にまとめたいと思います。
ポイントは4つあります。

不動産節税には最善の注意が必要

1つ目、これは今回の最高裁の判決が出る前からですが、不動産節税は効果が劇的であるからこそ、細心の注意を払いつつ行っていく必要があると思います。
最高裁の判決があったので、特に注意を払わなければいけなくなったといえると思います。

不動産で相続評価を下げた株式贈与は特に要注意

2つ目、これは資産管理会社の株の評価です。
資産管理会社で不動産を保有することで評価を下げ、株式を贈与するというのは、特に注意が必要だと思います。
多くの税理士、専門家の方々も、ここは懸念してるところなので、特に細心の注意を払った方が良いと考えています。

資産管理会社の資本を厚くして、相続税評価減効果を得る

3つ目は、その対策ということです。どのように対応するかという点で、資産管理会社の資本を厚くしておいて、相続税評価減効果を得るというのは、贈与をせずに、ご本人様が資本の厚い会社を保有して、評価減効果を得るということです。つまり今回紹介した対応①なのですが、この方法は工数が少なく、評価減の効果もあるので、無難な方法であると思います。

資産成長を優先して優先してお子様を株主にする

まずお子様を株主にするということです。資産が成長すれば、その分資産承継になっているということで有効だと思いますが、ただし年齢によると思います。富裕層の方の年齢によるだろうと思っていまして、60代の男性の方の1年間の死亡率っておそらく大体1%くらいだと思います。したがって、10年あれば死亡率は10%くらいになります。

それくらいの確率なので、60代を超えてくると資産管理会社の資本を厚くするパターン、相続税評価を選ぶパターンにした方が良いのかと思いますが、50代以下などですが、50代の方の1年間の死亡率は0.4%で、40代の方だと0.1数%くらいにはなると思います。若い富裕層の方であれば、資産成長を優先してお子様を株主という選択をするのも一つだと考えています。

または、資産規模に余裕があるのであれば、10億円以上や数十億円以上ある場合は、今回紹介した対応③のように、資産管理会社Aの不動産会社、Bの金融会社という2つの資産管理会社を作って、相続税評価減の効果を取るのと、資産残成長を図る、2種類の資産管理会社を作って対応していくということも良いのだろうと考えております。

本日は、「富裕層の資産承継戦略大転換【相続最前線】」という内容でお届けさせていただきました。

今回の内容については「世古口俊介の資産運用アカデミー」でも視聴できます。

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[金融商品仲介業者]
商号等:株式会社ウエルス・パートナー  登録番号:関東財務局長(金仲)第810号
[所属金融商品取引業者]
商号等:株式会社SBI証券 金融商品取引業者 登録番号:関東財務局長(金商)第44号、商品先物取引業者 
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